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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
悲しき破壊の女神 一
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森林の街で(二)

つづきです、よろしくお願いします

 

 「異世界人が現れし時に、その者も動く」


 賢者アシモフが、最初に口にしたのは、短い物だった。


 「連中はその時にだけ姿を見せ、異界の民を付け狙うと言われて居る」

 「そいつらの……、正体は?」

 「正体については分かって居らん。只、この世界を憎み続け破壊を企て居る、

  女神ニクスの思念体を攫った理由は、それだろうな……奴等はこう呼ばれて

  いる、闇の復讐者達と」


 「闇の……復讐者達ねえ、肝心な正体が分からないのでは……


   主らは、そ奴等と因縁がある筈じゃぞ!


 「ラケニス……」

 「因縁て……、まさかっ!……」


   うむ、黒衣の者がニクスを攫った者の正体じゃな

   少し、調べたら思い出したわい


 「じゃぁ、伯母様を(そそのか)した奴って、やはり……」


   奴ら……、だが主らが戦った黒衣とは、結託しとらんかった様じゃのぉ

   もしそうだったら、もっと手強かったじゃろうて……。


 「でも……如何して復習者なのですか?」

 「半年の期間を空けての動きも、意味が有るのか?」


   それは……、わしにも分からんのぉ

   半年空いた理由は、探っていた事が判明したからじゃろ……


 ニクスを攫ったのが、黒衣の者達なら復讐の理由は、はっきりしている。

 アネスの質問には、明らかにしたが、呼び名の由来をラケニスが知らないと答えたのは……、嘘だ。


 彼女は黒衣の恨みの理由を知っている。

 俺も……、それは彼女達には教える事は出来ない。


 「探っていた事って何でしょうね……?」

 

 ニクスの器に成り得る者を捜して、半年後に見付かったからじゃ……


 「え?、ラミカじゃないのか?」


   戯けが、彼女が本当の器だったら、あの場で一緒に攫われとるわ

   別に、本当の器足る者が存在しとるから、彼女は見逃された。


 「ラケニス教えて、本当の器って誰なの?」


 本当の器が存在しているのなら、次はその人物が狙われる。その人物を黒衣の者達から守らなければ、奴等の目論見が成就してしまう、必ず阻止しなければ成らない。


   本当の器……、皆が良く知っている者じゃ……


 「俺達が良く知っている者?、誰だ?」


   主らの傍に居る……、ハルが本物の器じゃ

   絶対に渡してはならんぞ、小僧!


 「えええ! 、私?……、が本物の器?」

 「ちょっと待ってくれ……何故ハルが?、彼女は普通の……女性だぞ?」


   アジモフよ、語っては居らんのだな……


 アジモフが、ハルの何かを知っている?、皆が彼の様子を固唾を呑んで見守っていた。


 「ハルは……、破壊の女神ニクスの血を継いでいる、代々その系譜の者達は監

  視の対象にされてきた。中でもその資質を強く継いだ者は、わしの様な者

  達がその身を預かり見守ってきたのじゃ」


 賢者から明かされたハルの秘密……、次に狙われるのはハルだと言う事だ。

 だが、分からない事も増えた。女神の子孫が何故、人として存在して居るのか?。


 「待ってよ、神の子孫が如何して人が継いでるの?」

 「その事は、わしも知らん……、只その事実のみが、長くわしらの様な者に伝

  わってきた。ニクスが倒された時の詳細や、その血を告いでいる者が何故

  居るのか?、それは長い歴史に埋もれた秘密として明かされて来なかった」


 「そんな事実……、私も初耳よ全く知らなかった……」


 この話は、一国の皇女であるロゼも知らない事実だった。この秘密を知る事が、今回のニクスに絡んだ事件を解決する事に繋がるのか、それは……分からない。だがハッキリした事は、攫われたニクスの所在を突き止め開放する事と、その器であるハルを奴等から守り通す事。


 「最優先は、ニクスを探し出す事ね、何処に連れ去られたのかしら?」

 

 初耳であるロゼには、皇女であってもその場所に心当たりは無かった。 


 「普通に考えたら、器に戻す祭壇の様な場所……か?」

 「でも、そんな場所は見当も付きませんけど……」


 当然、アネスにしても器本人で有るハルにしても、見当が付くはずも無く、攫われたニクスを探し出す事は至難と成った。


 俺達の心境は今、暗礁に乗り上げた感じと成っている。

 賢者に話を振った後、沈黙を保っているラケニスは何も知らないのか?。


 「ラケニス……、あんたも心当たり無いのか?」


   ニクスが此の世界から消えたのは、わしよりもっと古い話なのじゃ


 「五千年よりもっと古い話……、ラケニスにも当が無いなら……、私達は御手上

  げ状態から抜けないわね」


   わしは知らぬがの、第一の魔女なら……、知って居るかもしれぬ

   あの女に会う必要が有るのぉ……


 「第一の魔女って何者だ?」

 「此の世界に居る、最も古い三人の魔女の事よ、その所在は知らないけどね」


   一万年の昔から此の世界を観ている、あの女なら

   破壊の女神の話も知っていよう

   その血を、人が継いでいる理由も分かる筈じゃ


 「その第一の魔女は、何処に居るの?」


   帝国領の外れ、永久凍土の果てに在る城に居る


 「帝国領……、丁度いいわ、イリスを先に捉まえましょ」


   ズクロも其処へ向かわせよう、合流するが良い

   但し、彼女の城には強力な魔物が放たれて居り、侵入者を襲う

   十分に心して行く事じゃ……


 それを最後にラケニスは交信を絶った。

 八方塞の状況に進展が現れ、俺達の動きは決った。


 ロゼの話ではラミカは首都で待っているらしい、首都で彼女と合流した後に帝国領へと向かい、イリスとズクロとも合流を果たす。永久凍土については帝国領で有るが故、此方の誰も知らない、帝国領で情報を入手しなければ、その場所へ向かうのは危険すぎる。


 「ラミカと先ずは合流しないとね、取り合えず首都に戻りましょうか」

 

 皆が動きを始める前に、賢者アジモフはハルに歩み寄って言葉を掛けている。

 

 「ハルよ、わしはもうお前を守る義務からは外れた様じゃ、此れからは仲間

  がその義務を負ってくれる。弟子は今日で卒業じゃ、気を付けて行け」

 「賢者様……、今迄、有難う御座いましたぁ……」


 ハルは、此れまで弟子として賢者の教えを得ていただけでなく、その身を守られていた。彼女は賢者に薄っすら涙を浮かべ抱きついて、別れを告げた。


 


 その後、俺達は首都へと戻り、呑気に見物していたラミカと合流した。


 「ああ……ユキヒト様っ! 、やっと再会出来ましたっ嬉しい!」


 ラミカは俺を見付けるなり飛び付いて来た。

 当然それは、四本の死線から背中を刺される結果と成る。


 「はは……良かったわね……再会出来てっ!」

 「ラミカに抱きつかれて嬉しそうじゃないかっ……、なぁユキヒト!」

 「本当です……、羨ましいですわっ!」

 「あはは、ユキヒトさん良かったですねぇ!」


 在り難い言葉を頂戴した後、俺達は地竜へ搭乗した。


 次の目的地は帝国領。

 イリスとズグロとの合流を目指し、平原を地竜で駆け抜けて行く。



有難う御座いました。

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