森林の街で(一)
ちょっと短く二本書きました、宜しくお願いします!
ラケニスの塔でロゼとマリネの二人と合流した俺達は、ゾーイへと移動した。
この街に居る筈の、アネスとハルに逢う為に……。
この街は俺がこの世界に来て初めて訪れた場所、付近の森でも随分と怖い眼にも遭っている、今日も街に到着するまでに、何回かオークを見かけた。だが初日に覚えた恐怖は今は無い、それ以上の存在を眼にして、死線を潜り抜けてきた御陰なのは、言うまでも無い事。
あの時は、たった一人で不安しか無かったけど、今は違う。
進んで傍に居ようとしてくれる、女達が居る。
半年も連絡すら取らなかった俺に、遠くから知らせを持ってラケニスの塔まで来た。それだけでも十分に喜ぶべき事なのに、在ろう事か黄泉の世界まで連れ戻しにやって来てくる、そんな無茶を平気でやる様な女性達だ。
今回、ラケニスの塔へ来たのは今俺の前を歩いている二人だが、もしラミカが先にこの街へを訪れ、アネスとハルに知らせていたなら、黄泉の世界まで来たのは彼女達だったかもしれない。
街の中央部付近に来た時に、ロゼは足を止めて提案を出してきた。
「ねえ、二手に分かれましょ、私とマリネはアネスを捜すわ、ユキヒトはハルを捜してくれる?」
二手に分かれた方が確かに早い、素直に従う事にした。
「分かった、俺は一人でハルを捜してくるよ」
マリネは、俺が一人でハルに逢いに行く事に、戸惑いを示していた。
「あ、私も……」
「ほらっ、マリネくずぐずしない! 、行くわよっ」
「あ、はい、でも……」
尚も、躊躇いがちな彼女の腕を、ロゼは引き摺り連れ去っていった。
露骨に彼女は嫉妬してくる、嬉しいのだが非常に照れくさい……。
ロゼ達はアネスを捜しに守備隊の指揮所へ、アネスは警備隊ではないがソロで仕事を引き受けている、指揮所で彼女の所在は分かる。ハルの方は、賢者の弟子だし爺さんの塒で分かるだろう。
街外れに在る爺さんの家の傍に着いて、俺がドアをノックしようと拳を挙げると、ハルが瓶を小脇に抱え、扉を開けて飛び出しくる処に出会わせた。
「えええ! 、ユキヒトさん?、如何して?」
ハルの元気な声は実に気持ちが良い!。
「うん、ハルを捜しに来たっ」
「え?、私を……」
俺が自分を捜しに来たという言葉に、恥かしいそうに顔を伏せた。
純粋な可愛さなら、ハルが一番だと思う、決して口には出来ないけどね。
「大事な要件で、爺さんにも話聞きたいんだけど、居る?」
仮にも、賢者の看板をしょってるくらいだし、ニクスを攫った謎の一団について、何か知ってないか聞く為だった。居なかったら今度は、爺さんを捜す事になる、出来るだけ手間は省けるに越した事は無い。
「はい、いらっしゃいますよ、中へどうぞっ」
「あ……、ハルは何か用事が有った?」
飛び出して来たからには、何か急ぎの用が有ったのでは?。
「賢者様が酒を買って来いと……」
「弟子って、そんな事迄やらされるのかよ……」
「えへへへ、偶にですけどねっ、先に入って待っててくださいね」
彼女は、全力疾走で酒を買いに走っていく。
帰りに酒瓶を落して割ってしまいそうな予感はあるが、なあに爺さんが我慢すれば済む話だ。その時は、俺が彼女の援護に廻れば良い。
「賢者の爺さん……、居るかい?」
扉を開きながら、声を掛けると家の中で彼は本を読んでいた。
俺の姿を確認したら、読んでいた本をパタリと閉じ、返事をした。
「おお、お主か話はハルから聞いたぞ、まあそこへ座るが良い」
椅子へ座るように促され、俺は椅子を引き言われたとおり座った。
「わざわざハルに逢いに来た……、訳でも無さそうじゃなぁ」
「ハルに逢いたかったのは本当、他に聞きたい事も有るけどね」
「ふむ……わしに……か?、だが……その顔は、良い話ではないな」
嘘はついてない、彼女に逢いたい気持ちはちゃんと有るのだ。
だが、今日は聞きたい事の方が優先度が高い。
「ニクスを攫った連中が居る、何か心当たり有れば聞きたくてね」
「破壊の女神が攫われた?、そりゃ又、厄介な事になったなぁ」
爺さんもハルから、俺と同行していた間の一連の話は聞いている、この地を離れてからの事は大幅に省け、当然ニクスの思念体が、世に放たれた事までは知っている。俺が今日爺さんに伝えるのは、ロゼから聞いた話だ。必要な事を一頻り話し終えると、何か心当たりが有るのか黙り込んでしまった。
「ロゼ皇女殿下も来て居るのか?」
「うん、彼女達はアネスを呼びに行ってるよ、多分こっちへくると思う」
「皆が、揃ってから話そう、同じ事を二度は手間だしな」
程なくしてハルが息を切らせ戻って来た。
「はあ、はあ、はあ、戻りましたぁ!」
「は、早かったなハル……」
「そ、そうですか?、はぁ、はぁ……ふうぅ」
ハルは息を整えながら、酒瓶を台に置きコップを探しに行こうとしたら、ロゼがアネスを連れて部屋に入ってきた。爺さんには悪いけど、酒を飲むには今少し先にして貰う事が、必要に成った。
「ユキヒト、半年も何も音沙汰無しで、良く私の前に来れたな」
「はははは、アネス 変わらねぇ……」
「半年程度で、誰が変わるかっ、馬鹿者が!」
そして、やはり馬鹿者と言われるのか……。
「では、話すとしようか……」
賢者の元へ五人が集まった事で、爺さんが知ってる事を語り始めた。
有難う御座いました。




