表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第三章
44/90

故郷

読んでください、お願いします!

 

 悲劇の続いた地を離れるのに当って、その場所を相談していた俺達は、ラミカが子供の頃を過ごした村を、その行き先に決めた。一度首都へと足を運び、ブラッディと両親に別れを言った後、再び草原からズグロの背に乗って飛び立った。


 俺達が龍に背に乗るのは二度目だが、ラミカは初めての体験となった。彼女自身にも自分の翼が在る為、空を飛ぶ経験は何度も有ったのだが。


 「凄い……、こんな高度まで、しかも速っ!」

 他の翼で空を移動する事は無かったようで、随分と気に入っていた。

 

 「でも、ラミカも飛べるじゃない?」

 「飛べますが……夜だけですよ、こんなに高く早く飛べません……」

 

 ラミカ達ハーフは、純血種に比べ人間に近いが存在だけど、その特殊な人外の能力は夜限定の純血種と同じだった。つまり昼でも動け血を吸う必要も無いハーフも、やっぱり昼間が弱点だと暴露した様なもので、今でも彼女達の存在も許せない者に知れると、ハーフ達は非常に危険な状況に陥る。

 

 「いいじゃない、飛べるだけマシよぉ」

 ロゼは自分は飛べない為、夜限定とはいえ自由に飛べる彼女が羨ましく、少し僻んだ様だ。


 「ロゼだって魔法で飛べるだろ……、同じじゃないのか?」

 「違う! 、魔法で飛ぶのと自分の翼で飛ぶのとは、全く違う!」

 同じ様に思うがロゼの力説する、その違いが良く分からない……。


 「つまり、魔法は運ばれてる感じだけど、翼だと自分で風を切って飛んでると、ロゼ様は言いたいのではありませんか?」

 「そう! 、それ! 、やっぱ自分で飛びたいじゃない?」

 「あ━━っ 、それ私も分かります」

 ハルがロゼの心境を語ると、即ロゼが肯定しマリネも賛同した。

 更に、アネスとイリスも参入してきた。


 「確かに……、空を自由に飛べると、色々と便利になる……か、いいなそれ」

 いや……空中から飛び蹴りで起こされるのは、アネスには飛んで欲しくない。


 「自由に飛べたら……、きっと素敵でしょうね、普通行けない場所にも……」

 イリスには、何やら行きたい場所が具体的に在るみたいな言い方をしてる。


 「本当に夜だけ……、あ、でも満月を見ながらの浮遊は、好きかなぁ」

 ラミカがその状況を思い出してうっとりしていると……。


 「いいなぁ……、何か腹立ってきたわ、ちょっと、その羽をよこしなさい!」

 ロゼがいきなりラミカに襲い掛かり、押し倒して馬乗りに成った。

 下に組み敷かれたラミカが抵抗を試みる姿は、どうにも……。

 

 「ちょっ……やめ、皇女様変なとこさわら……、いや………………あっ」

 「ロゼ様……、それ、とってもイヤラシイ動きに成ってます」

 主の艶姿を魅せられて、マリネが顔を紅く染めている。

 

 俺のほうでも、ラミカの無い羽を捥ぎ取ろうと、ロゼが抑え付けている格好を眼にしてしまい、妙な気分が身体をむず痒くさせ、あの時の事を思い出して、又、身体が熱くなって来た。


 〝主殿、皇女を止めてくれぬか、背中が……、落としてしまいそうに〟


 ロゼとラミカの動きが、ズクロに変な刺激を与えて、落下し兼ねない。

 ズグロが止めて欲しいと、俺の頭に語りかけてきた。


 「ロゼ! 、ズグロが落としそうだ、止めてくれと言って来たぞ」

 「ふぅ……、仕方ないわね!勘弁してあげるわ」

 「良かった……もう……」

 起き上がったラミカの顔は、恥ずかしさで紅葉していた。そんな調子ではしゃぐから、この俺を移動途中に落すような真似をするんだろ、と、腹の中でロゼに文句を言う。


 〝主殿、じきに着くがそろそろ降りた方が〟


 いきなり巨大な龍が村の傍に降りると、要らぬ警戒をされかねない、早めに地上へとズグロは舞い降り、此処からは村まで歩きで進む事になる。ラミカの案内で山道を迷わず進んでいける、最後に居たのは随分と昔のはずなのに、その記憶はしっかりとしていた。


 村が近付いてくるとラミカは、急に歩く速度を速め、とうとう走り始めた。

 山道の途中から丘陵へと延びる道が現れたら、彼女が指を指し示した。


 「あそこです、あの丘の辺りに村が在るんです」

 懐かしい故郷の村が、その眼に映るとラミカは少女の様にはしゃいだ。

 俺達は彼女の後に続き、村へと足を踏み入れた。


 「あー懐かしい……、皆どうしているかな」

 

 村の中をキョロキョロ見回しながら、懐かしがっているラミネを眺めているのも良いが、村の中を観察してみる。なだらかな丘に、平屋の建物が並び建てられている。よそ者が村に入ってくるのを、何処の世界でも、閉鎖的な村では歓迎される事は無い。此処もその例に違わず、道を進む俺達はチラチラと横目で見られている。


 予想通りな展開で、一番大きな屋敷から五人程が、此方へと向かって歩いて来る。こっちが歩いている道へと入り、俺達の前を塞ぐように立ちはだかる。


 「旅の人、此処を通過するだけなら……良いが?」

 「あ……、村長さん?、私……

 「む…………、おおお、ラミカか?、よう来たなぁ、そっちは友人かね?」

 ラミカの事を、この村の責任者が覚えていたみたいで助かった。

 

 「えっと友人というより……恩人かな」

 「そうか、彼女の恩人なら歓迎しよう、どうぞ私の家へ」

 村長に着いてきた他の四人も、彼女が昔の住人と分かり、連れて来たのは恩人だと言われ警戒を解いてくれた。険しい顔が一変して、歓迎の様相へと変わり、村長より先に屋敷へ走っていった。


 屋敷の前に行くと中から、大勢が出迎えてくれている。どうやらラミカの御陰らしい、兎角半分が吸血鬼と言う事で、歴史の中で忌み嫌われ差別や討伐の対象にされた。頑な態度と反感しか持たれないかと、心配していたが取り越し苦労となった。


 「父上は御健在かな?、どんなに礼を言っても足りない、もし……

 ラミカには父親の話は辛いだろうが、しっかりとした声で顛末を伝えた。

 但し、真実を伝えるのは控えた様だ。


 「父は……、昨年亡くなりました……此処と同じ村が強い魔物に襲われ、相打ちに……、その時、この方達が、殺されそうになった私を救ってくれたんです」


 殺されそうなのを助けた以外は、彼女の創作だが、まぁ嘘も方便で誰かを騙して何かをするでなし、これで上手く村に馴染めるなら、嘘も有りかと思った。

 

 「もう亡くなったか……、それでラミカは此処へ何をしに?」


 ラミカは此処へ来た理由を村長達に語り始めた。

 此処に来ている他に仲間が居たけど、暴漢から助けようとして殺され、その他にも辛い出来事が重なり、それを忘れる為の旅行を計画し、その際にこの村を思い出して来たと、詳細は伏せていたが大まかには、その通りの説明をしていた。


 「そういう理由でなくても、ラミカなら歓迎だ、好きなだけ居てくれ」

 村長は快く俺達を受容れる事を認めてくれた。此れまではラミカに任せた方が、話が通りやすいと黙っていたロゼが、ラミカの横へ立ち村長へ挨拶と礼を述べた。


 「滞在を快く受容れて下さり、感謝します」

 「いえ、ただ……、この村もちょっと問題が起きてまして、それに巻き込まれない様に注意をして貰えれば、折角来られたのに妙な事に、巻き込まれては申し訳ない」


 問題と言うのが又、耳に痛いが……まあ、こんな場所で問題なら大した事では無いと思うし、皆が休めるなら良しとしようか。


 「そうそう……、昔ラミカ達が住んでいた家を、又、使うと良い」

 「有難う村長さん」


 村長やこの村の雰囲気が、何処にでも在る村と大差が無い。遂、この村の住人達が人では無かった事を、忘れ村に溶け込もうとしていた。それ自体は悪い事でも無かったが、ちょっとした問題と言われた物を、その言葉通り受け取っていた。人外が棲む場所で起きる問題が、ちょっとした事で済んでいる筈が無い。


 そんな事に気が付かない程、この村は穏やかな雰囲気で、俺達はそれに良い意味で飲み込まれていた。夜に成るまで、村中を歩き散策して、無邪気な子供達を眼にしては、心癒されていた。

 

 「これで……どうよっ!」

 「おお、金髪のねぇちゃん! 、かっけぇー!」

 「花火みたあーい」

 

 ロゼは掌から連続で火球を天空へ飛ばし、子供連中に喝采を浴び悦に浸っている。成る程、宮廷内での重鎮達からは、睨まれているが庶民に人気有るのは頷ける。 

 

 「はぁ……、魔法を玩具代わり使用するなんて……ロゼ様らしいですけど」

 「いんじゃない?火球を玩具に、長閑が一番だよ」

 

 子供と戯れているロゼを眺めていた時、ハルが横に来た。

 ロゼに嘆いたあと、何か戸惑っていたが話し始めた。


 

 「ユキヒトさん、皇女様と進展があったんじゃない?」

 如何して、女ってこう感が鋭いのか……?

 しかも、正直に言えるわけ無いのに。


 「俺達って、ハルからはそんな感じに、見られてるの?」

 ハルが俺達を詮索している気がして、横目でチラ見しながら会話をしながら、その態度を確認している、姑息な自分が、若干情けない。

 

 「あの翌日から、やけに艶が増してる感じがするんだけど……」

 「そうかな、変わらない気がするけど?」

 

 悪い事をやった心算は無い、が、後ろめたい気持ちが、俺を恍けさせる。

 そして、ハルは最後に俺を惑わす言葉で〆た。


 「私じゃ、物足りないのかな?」

 

 女にそんな台詞言われて、はいそうてすっと言える程に、はっきりと態度を決めきらない。っと以前の俺ならそう思うのだが、最近俺の性格というか人間性が変わってきている。普通の恋愛で満足出来ない自分を、はっきりと自覚している。


 「そんな事無いよ……、ハルは凄く可愛くて、魅力的だけど?」


 好意を持って寄って来る女性を、選ばず愛で様としている。

 日本では許されない行為が、この世界ではお咎め無しときている。


 「嘘なんて言わない……、本当にそう感じてるよ」


 これだ、嘘を付いてはいない、本気でそう言っている。

 頬を染めるハルが、その身体を寄せてくる。


 「皆━━━! 、部屋の掃除終ったから来てねっ!」


 子供の時に、ラミカ親子が住んでいた家屋、それを皆で使えるよう掃除していた三人が、終って部屋に入れる事を伝えに来た。ロゼは最後にでかい花火を打ち上げ、手を振る子供達から離れて戻って来た。


 「あーぁ、残念……」

 ハルは皆の前で抱き着き、喜ぶ様を平気で見せる、厚顔さは持っていない。

 俺から離れ、皆に続いて家屋へ向かって行った。


家の中に入ると、掃除中に村人が運んでくれたベッドが七台。


 「あれ?……俺の寝る場所は?」

 皆、上を指差す。


 綱を引いて屋根裏へ上る階段が表れた。まさか、床で寝ろは無いと思っていたが、屋根裏へ行けと成った。階段を上って寝床を見に行くと、大きな窓の横にベッドが在り、これなら寝る時に月夜を楽しめる。思いの外に良い感じな寝床が、いたく気に入ってしまった。


 食事に関しては、女性が七名も居るから、安心したのは甘かった。

 ハル以外は、殆ど料理が作れない……とは。


 「え?……皆、料理作ったことが無いんですか?」

 

 「いや……な、森の中なら得意なんだが」

 アネスは料理と言うか、焼く?、焼けば食えるという理屈の物で、家の中で食べる食事には遠い。

 

 「あはは、料理なんて……道具も触ったことがないっ」

 「すみません……、私も、手伝いはしてましたが……」

 ロゼとイリスは全くの問題外、だが、仕方ない面も有る、皇女と皇帝の妹だ。料理を作る必要がある筈も無く、二人に作れと言う方が無理だ。


 「済まぬ主殿、料理を作るのが分からない……」

 ズグロに至っては料理を作るという、行為が分からない。


 「私も母が死んでからは、父と二人で……」

 ラミカは、母親と死に別れた後は父親と二人、その食性を問うのは……。

 

 一番以外だったのはマリネだっ、料理しそうな雰囲気有るのに、手伝い程度にしか分かっていなかった。

 「御免なさい……ユキヒト様、私も作れません」


 六名が、ハルから指示され悪戦苦闘の末、夕食にと相成った。

 作る時の時間の数倍の速さで、料理は消え失せ、片付けを始めた。


 食事の後は、女性七名が女子会よろしくやっていた。

 俺はというと、早々に二階へと上がり一人月夜を見ながらベッドに居た。


 何を盛り上がっているのか?、楽しそうな声が聞こえているが、聞き耳立てるほど野暮でもない。今日も昼からの強行軍で、何時の間にやらウトウトし始めた。彼女達が傍に来ていたが、寝そうな姿を確認したら、笑いながら下へ戻って行った。


 女性陣は、結構浮かれている様子だ、此れなら本来の目的も果たせよう。

 此処なら、安穏な時間が過ごせそうだ。

 

 そう思えたのは、着いた初日の夜だけだった。


 翌朝、村人の死体が見付かる。

 俺達は又、面倒な一件に、巻き込まれていく。


 



有難うございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ