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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第三章
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敵

よろしくお願いします!

 集まった村人から話が聞けた、死んだのは行方不明の女性だった。

 家族が遺体に縋り付いて泣いている、俺達の縁者でなくてもその光景を見るのは痛ましい、忘れる事を許さぬとばかりに、ブラッディの両親の姿と被って見えてくる。


 「何度見ても、気が滅入る光景だな……」

 アネスが小さく息を吐きながら呟いている、この村に着いた昨日と相反して表情が暗くなって行く、村長の言った問題とは、此れの事だと理解した。


 「此処に居ても仕方ないわ……、村長に話を聞きましょ!」

 肩を落し泣きながら遺体から離れない女を後ろに、俺達は村長に話を聞いてみる事にした。遺族の傍に来ている村長に歩み寄り声を掛けた。


 「村長さん……、これは何が起きてるんです?」

 声を掛けたロゼを振り向いたが、首を横に振りながら答えた。


 「貴女方は関わらん方が良い、命を失う事に成る……」

 「村長さん……

 ラミカは彼の耳に顔を寄せて小声で、真実を告げた。一瞬身体をビク付かせたが、異を決した様に俺達を屋敷へと誘った。


 「中で話しましょか、屋敷の方へ」

 「皆、村長さんの家に行くわよー」

 皮肉な事に、妙な事になった御陰で、ロゼの中の悲劇が記憶の底へ隠れ、気丈なロゼに戻っている、俺達はロゼが歩き始めた後を、追い駆けるように続いて、村長の家へと入って行く。


 「実は五日前から、夜中に女性が失踪する事件が起こってまして」

 「え、女性ばかりが失踪?」

 「ええ……誰も気が付かない内に、居なくなる……」


 五日前なら、最近起こり始めた事になる、女性ばかりと言っても、彼女達も半分は吸血鬼の血が流れているし、夜中にハーフを誘拐出来るものだろうか?、誘拐は考え難いが……。


 「村長さん、行方不明者に、何か共通点が在るなら教えて欲しい」

 誘拐なら何か、共通点が在りそうで聞いてみたのだが。


 「若い女性という位しか……、何も掴めていない……」

 共通点には違いないが絞りようが無い、村中の全女性を集め保護する?。


 「夜中に限定されてるなら、一箇所に集め保護するとかは、どうです?」

 「三人目以降は……、集めて保護している場所から消えとるんです……」

 集団の中から、警護と彼女達の眼を盗み一人だけを誘拐?、或いは失踪、一人の眼を盗むのなら可能かもしれないが、まさに神隠しと言える所業をやってのけるなんて、人に可能なのか?。

 

 「私達も、狙われるのかも……知れないってことか」

 

 アネスが自分達も狙われる可能性を、示唆したが……此処は、人里から遠く離れた場所にある人外の村、わざわざ人外を狙って命を危険に曝す様な、誘拐者は普通に考えて居ない筈。

 

 「この村に限ってとなると、人以外が対象なのかも?」

 

 っと、マリネが口にした。彼女の言った事が正しく思えるが、半分は吸血鬼であるハーフを、能力が開放出来る夜中に狙った上に、誰にも気付かせずに攫って行った。

 

 「そんな神業、どうやってやれるのよ?」

 「皆の死角をを衝いて、攫って姿を消せる?」

 

 皆の考えが疑問符で終る。理屈では可能だが、それが実際にやれるのか?、となると現実味が無い。そう考えたら、相手は特殊な人外であるのでは?。ふと、思い当たる事が浮かんだが確証が無い、仮にそれだとしても狙われる女性が分からない以上は、彼女達を防ぐことは無理だ。何とか狙われる理由を見つけないと解決しない。


 「此処まで考えたら、思い当たるの一個しか無いな」

 「そうね……、私もアレしか考え付かないよもう」


 他の六人の表情を眺めても、同じ事を言っている。


 黒衣の者が絡んでいる。


 「じゃあ……私達は又、誘導されたんでしょうか……?」

 ハルの不快な発言だが今回は、違う気がする。


 「うーん、今回は、それは無い気がするよ、ハル」

 「何故です?、今迄も待ち構えてた事が、多くなかったですか?」

 「何故だ?ユキヒト、私も罠に見えるが……」


 「それは……、大公の一件に絡んでたのは間違いないと思うけど、俺達が気分を変える為に、ラミカの故郷へと移動するのまで読める?。この場所選んだのは、本当に突発的に決まった物で、思考を読める類の物じゃない。そこまで可能なら奴は、神と等しき存在と言える、それは在り得ない」


 「今回、奴は俺達の存在を認識していない可能性が高い」


 存在が知れて無いなら、手が在りそうだ。

 何としても、共通点を見付けなければ成らない……。


 此処で村長が、根本的な疑問を尋ねてきた。

 「我々の村の女性は、如何して狙われ攫われてるのでしょう?」

 「吸血鬼、或いはハーフでなければ出来ない事が在るのでしょうか?」


 イリスが挙げた疑問で全員が思考を始めた。


 ロゼが最初に挙げた。 

 「普通に吸血行為……がひとつ」

 

 マリネが二番手で出す。

 「此れも、翼で夜に成ったら飛べる……」


 ズグロも挙げてきた。

 「皇女のと付随してますが、仲間を増やせる」


 アネスは少し戸惑い気味に答えた。

 「うーむ……、出来る事では無いが、日光に弱い」


 純血種ではその通りだけど、ハーフは日光の下でも生活している。

 特徴では有るけど、今回の件には関係なさそう。


 「あと何だろ?、怪我しても治る、鏡に映らない?」

 「あははは、鏡に映らない?、そんな特徴は在りませんよ?」

 「あ! 、ごめん……それあっちの世界の架空の設定なのか」

 

 普通に映らないと言ってしまったが、ラミカに笑われてしまい、架空の設定と判明した。ニンニクと十字架も架空と分かっている、心臓に杭を……、彼らに限らず生物全部が該当する、関係無い。


 ハルがボソボソッと、口を開いた。

 「どれも……、ハーフの皆さんに出来る事ですね、他に何が在るんだろ?」

 

 此のハルの語った内様を、村長は否定した。

 「それは違います! 、皆が全部の特徴を、兼ね備えて要る訳では有りませんよ……、寧ろ持っていない者の方が普通です」


 「ええ、全員が持ってる訳じゃないの?」

 「私……、知らなかった、普通に出来ると想ってたけど……」


 ロゼも当のラミカも此れを知らなかった、俺は当然、勿論他の五人も知っている道理が無い。ハーフの能力継承の詳細なんて、その専門家が居るかは……定かでないが、普通は知らない。


 「村長さん、犠牲者の能力の特徴て判りますか?」

 「調べてみましょう、おい……被害者女性、五人を調べてくれるか」


 村長の命令で若い男が、棚から書を取り出し調べ始めた。

 暫らくページを捲っていたその男が、調べた結果を伝えた。

 

 「全員が、全ての能力を持っていた様ですね」

 「目的は不明だけど狙われる理由は、それだな……、ハルお手柄だね!」

 

 ハルが何の気無しに、口にした言葉から、答えが出てきた。

 得意気なハルの顔がヤケに眩しいぞ……。


 「盲点でした……、他の事ばかり調べていました」

 

 村長が、恥ずかしそうな顔をしているが、当人達にとっては余りに普通の事で、考えの及ぶ範囲に入って来なかったのかもれしれない、だがこれで、狙われる女性が特定される。すぐさま、村の女性全員について調べて貰うと、五人がその能力があり、内二人が若い女性と調べがついた。


 「二人を厳重に警護すれば……」

 「いや、防ぐだけでは解決に成らないな、奴の企みを潰さないと」

 「奴が、何処で何をしているか分かれば、何か手が無いかしら?」


 一つ手は在るのだが、それを俺達……、いや俺からは言いたくは無い。

 だが、本人はそれに気が付いている、自ら手を挙げるのは……。


 「私が……囮になるわ!」

 

 やはり……、時間の問題だった、ラミカが囮を買ってでた。

 奴を、取り押さえ企みを打破するには、これが一番良い方法ではある。


 「ラミカ……もし、俺達が見失うと……、分かるよね?」

 「ええ、他の女性と同じ目に」

 

 此れまで攫われた女性の死因が、特定されていない、攫われ後、俺達が彼女の追跡を失敗した場合、命の保障は無い。他の女性と同じく、彼女が遺体と成って戻って来る確立は極めて高い。


 だから……。 


 「うん……、絶対、後で救い出す! 必ず……ね」

 「心配していませんよ……貴方を信じています」


 危険を顧みず、囮を決意しているが内心は怖い筈、それを表情に出さず忍ばせている。絶対に奴に、ラミカの命を奪わせはしない、必ず救い出す。その思いが自然とラミカを抱き寄せた。


 「ふーん随分と、仲良くなったのねっ!」

 「ユキヒト様は! 、凄く、優しいですものねっ!」

 「ユキヒトさん……、誰にでも優しいんですよ!」

 「女の扱いが巧くなったものだな、ユキヒト!」

 「私も……言われてみたい!」

 「主殿……」


 ロゼは露骨に目を細め憤慨、マリネは遠い目をして睨んでいる、ハルの満面の笑顔が実に恐ろしい。アネスとイリスはストレートにぶつけて来た。何も語らないズグロの顔も……。


 こんな状況下でも、嫉妬する事を忘れない女性達に、脱帽した。


 兎に角、これで閉ざされた扉を開く事が出来そうだ。


 村の女性二名は村長の家で匿い、保護する。囮役のラミカは、夜に成ったら一度飛翔して貰い、この村の女性該当者の家に戻る。三名が何時、連れ去られても追跡出来る様に、イリスには待機して貰う。


 どれだけ早く連れ攫われた場所を特定出来るか、イリスにかかっている。

 「私が……責任重大ですね」

 「うん、イリス頼むね!」


 今夜の事を知っている者達は夕方からは、緊張の糸が途切れる事は無い。


 夜が訪れ、変装したラミカの芝居が終ると、緊張は増していく。

 何処で見ているか不明な為、俺達は借りた家内で待機している。


 此方ではなく、村の女性を襲う可能性も十分在り得る。

 村長の家で待機している者達も緊張から開放される事は無い。


 

 もうすぐ真夜中がやってくる。

 張り詰めた緊迫感は、その最大値となった。


 ラミカの目の前の空間が揺らぎを見せた━━。


 〝なによ……此れ〟


 揺らめいた空間に裂け目が顕れ、真紅の目がラミカを捕らえた。

 彼女は、身動き一つせず、伸びてきた腕に抱かれ歪へ消えた。


 「来ましたっ!」

 「頼む! 、イリス!」

 「はい!」


 眼を閉じ、ラミカの行方を追うイリス。

 彼女を捉える時間との勝負となった。



  

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