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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第三章
37/90

叔母

続編です。よろしくおねがいします。

 

  帝国領から戻って二週間━━━。


 宮殿は息が詰まって嫌だ! 、と、言ってみたらロゼが郊外に家をくれた。

 平屋だけど傍には海岸がある。


 元々が公害なんか縁のない世界で、只でも空気が凄く気持ちがいい。

 反対の側の風景は、遠くに林が見えて、それを抜けると首都の街へと入る。


 木造建築で所謂、ログハウスという奴だ。天然素材に必要以上な金属も仕様していない、ロゼは気を利かせて新築を建ててくれた。宮殿内でもそれくらい気配りしたら、皇女殿下らしく見えると想うのだが。


 住居に隣接して厩舎があり、二頭の地竜がそこに居る。

 今、俺はマリネと一緒に住んでいる……。


 完全にもとの世界へと帰る気持ちは消えた、此処で彼女と暮らす、何れは子供も出来て、親にもなるだろう、普通の父ではない異世界から来た英雄様だ。話して聞かせる事は、星の数程に豊富に持っている、子供が大きくなるのが今から待ち遠しい。


 たが、その前に……。

 子供を作る必要があるのを、忘れない様にしなくては……。


 夜が訪れるとベッドの隣には、マリネが居る。一瞬だけ船内で見た彼女の肢体が、今は、柔らかな確かな感触と一緒に、腕の中に在る。俺は、毎日が夢の様な生活を手に入れている。

 

 朝になったら、彼女は優しい声で起こしてくれる………。

 そう……こんな感じに……

  

   起きろぉ! 、馬鹿者━━━!


 「がぁはあ、……此れじゃないのに!」

 毎度、お馴染みのアネスの蹴り飛ばしの起床……、これは要らない!。


 「じゃない……?、貴様、さてはマリネとベッドで寝てる、夢でも観てたな!」 

 此処にも、女の感を武器に出来る奴が居る。


 「偶には……私と居る、……夢はないのか?」

 「え?」

 「ほらっ、急げ皆がもう、外で待ってるんだぞ」

 

 外で?……、何か忘れている…………。


 「あ━━━━!」

 「貴様あ、やはり忘れてたな! 、全く……もう世話の焼ける」

 何か、凄い怖い姉に怒られている、気分だ……。


 帝国領から戻ってから皇王に、帝国との和平を伝え親書を手渡した。

 

 数百年以上に亘って、帝国との睨みあいが続いていたのが一変して、和平が成り皇王と皇后の喜びようといったら無かった。(もっと)も、正式な調印ではないので式典などは無い。


 ぶっちゃげ、勝手に撤回しても公式には何も無い。しかしだ、皇帝直筆のお墨付きが在る以上、そんな事をしたら他国に恥を曝すだけだ。恥を恥と感じない奴も居るから、安心は出来ないが……。


 お礼がてら全員を、皇后の実家であるアデル領へ、招待してくれた。

 「私の姉、貴方の伯母が、久々に逢いたいそうよ、行ってみなさい」


 皇后が、現皇王と初めて出逢った森のある土地だ。ロゼが子供時には、年に数回は訪れていたらしいが、皇王に即位してからは、二人とも公務等で時間が取れず、ほぼ五年ぶりと機嫌が良い。


 「森の奥は、悪い魔女が棲んでる。とか、よく脅されたわ」

 子供を脅かして寝かせるネタ、その類は何処の世界でも共通している。


 「その森って魔物がいなのよ、凄い珍しいんだけどね」

 通常の動物しか棲んでいない、その為に貴族達が集り狩を楽しむ事が多いらしい、皇后は狩を嫌がっていた。親の頼みで已む無く、嫌いな狩の場へと出向き、皇太子と出逢ったと言う。


 そんな馴れ初め話の森だと、ロゼが話してくれた。 


 「ユキヒト遅すぎ! 、マリネが浮気の心配してるじゃない」

 「きゃあああ……ロゼ様ぁ! 、そんな事してませ━ん」

 

 実際の処、マリネと正式に交際をしているわけじゃないけど、帝国領でのあの一件以来、公然と恋人扱いを受けている。彼女の事は、大事に想っているが、アネスのたまに見せる拗ねた態度や、露骨な行為、ロゼは意識して隠しているが、好意を抱いてくれているのは実感できる。


 他の四人も同じで、普通ならこんな態度とっていたら、皆避けていくはずが、どうにも逆に寄って来てる感がする、日本で離れて行った女に本当見せてやりたい。


 こんなにも来るもの拒まずの、性格をしていたなんて……。

 こっちの世界に来てから、初めて気が付いた。


 道理に反せず、好意を寄せてくれる女性を、全て受容れていいのなら。

 男の甲斐性の見せ所かも?。


 但し、言葉通りの、命懸けの世界なのは間違いない。


 アデル領への移動、今回はグリューネ大公の願いも有り、ズグロに乗って行く事になっている。何でも、本物の龍が飛んで来るのを、是が非でも観たいそうで、清楚な皇后と比べその性格は、ロゼに近いと想われる。

 

 流石に街中から、龍が飛び立つ訳に行かず。

 草原まで皆で移動した後に、龍に戻って貰い飛び立った。


 実は、飛行機に乗った事が無い、だから比較が出来ないが、その眺めは壮観と言うしかない。巨大な籠に皆が入り、それを運んでもらうという意見が出たが、それにはロゼが猛反対を繰り広げた。


 「ズグロの背から眺めるから、空を飛んでると実感出来るんじゃない!」


 頑固に主張し、他の意見を退けた。


 空を飛んで来る龍を観たい大公と、飛んで行くというロゼ。此の二人が競演したら、さぞや愉快な結果に成るんじゃないかと、期待感と面倒な事も起きる不安感の二つが入り混じった、複雑な心境になる。 

 

 肝心なズグロの方は、皆を背に乗せ運ぶ行為に、不快感起きなければと心配していたけど、途中で通過した湖では高度を下げ、水面スレスレを飛んで又、上昇。これ以上無い、と言う気分を味併せてくれた。


 ハルとイリスだけは、鱗にしがみ付いていたけど……。


 イリス……オスマニア皇帝の妹で、吸血鬼に命を奪われ掛けたのを救い、俺達と同行している。彼女は短い七日間を、一緒に戦ってきたサラトと同化した。常にもの静かで優しかったサラトには、もう逢う事は出来ない、もっと彼女と話をしていたら良かった。

 〝顔だけなら婆さんと同じだが……〟


 サラトが居なくなってから、ラケニスも何も接触してこなくなった。顔が同じだから、想い出せない様にしているのか?、いや……何か又、戯れを計画していそうで怖い……。


 そう言えば、命を助けたあのハーフの吸血鬼の女は、何処へ行ったのか?、純血種は父親だけと言って筈だが、混血は居るのか?。行く場所が在るなら良いけど、無かったらハーフの吸血鬼に居場所は無いんだろうな。


 「見えてきたわ、あそこが大公……伯母様の館よ」

 ロゼが指差す方向に一際高い塔と、小さめの城が見えてきた。


 「お……きたきた、アレねロゼの乗ってる龍って!」

 塔の展望に、紫のドレスを着た女性が、飛んで来た龍を見て歓喜していた。

 塔の真上を一度通過して、大きく旋回した。


 「はぁ……、今の紫の……、あれ伯母様だわ」

 着地しに問題が無さそうな場所を旋回中に見つけた。


 「ズグロ、あの池の横に降りてくれる」

 云われたとおりの場所へ降下していく、湖面が激しく風で煽られている。

 ズグロは両足で大地を一度踏みしめたあと、ゆっくりと身を屈め、全員が降りたのを確認したら、人の姿へと変わった。 


 塔から大公が降りてきて足早に俺達の方へとやってきた。

 「皆様、よくいらしたわね、大公のグリューネよ」

 「伯母様、此度はお招き頂き有難うございます、それで……

 「ねね、さっきの龍は、この中の何方が?」

 ロゼの話しをすっ飛ばして、ズグロは誰か聞いてきた。


 「くっ……、伯母様……相変わらずだわ、彼女が今の龍のズグロよ」

 一番後ろのを指差した。直後、駆け出し近寄る大公グリューネ。


 「貴女が今の白い龍?、私のお願い叶えてくれてありがとう!」

 感謝の言葉を言うが早いか、ズグロを抱き締めた。


 「私って伯母様と似てるらしいけど、そんな似てるかな?」

 いや顔じゃないと想うぞ、性格の方だろ……。

 マリネがこっそり寄って来た。


 「ロゼ様……自覚無いみたいですね」

 「似てるのは顔じゃないと言ってやれ」

 アネスまで寄って来て、ロゼの自覚の無さをしてきしてきた。

 更にハルが、大公の武勇伝を語る。


 「二十歳前に、自分と仲の良い侍女を弄んだ騎士を、首都まで追い駆けて、ボコッコボコにした事も有るんですよ」

 「何か、それお母様から昔聞いた記憶あるなぁ」

 同じ様な事をやらせない為にじゃないのか?。


 「皆さん何してるの?、疲れているでしょ、屋敷の中へどうぞ」

 

 使用人とか、大勢いそうなのに、わざわざ党首自らが案内をしてくれた。

 怒らすと怖そうだが、普通にしてたら優しい小母さんにしか見えない。


 「そうそう、龍に会いたかったのと、貴方にも興味がね」

 屋敷の中を案内しながら、俺を見て呟いた。


 「ちょっ……、伯母様、ユキヒトに興味って、まさか……」

 

 バシ━━!

 「やだっ! 、何を言ってるの、そんなんじゃないわよ」

 「伯母様ぁ、痛ぁあ」

 「もっとも……あと十歳若かったら……私も…ね」


 最期の自分を指しながらのセリフは……。

 アネスもびっくりの、妖艶な顔付を魅せられ思わず凍りつく。


 「勘弁してぇ、伯母様!」


   〝此れ以上、増えて堪るもんですか……〟 


 「あははははは、冗談よ、さあここが貴方達、殿方はその隣の部屋ね」

 客室の傍には、流石に使用人が待機していて、荷物を運んでくれた。


 「じゃあ、昼食までゆっくりしててね」

 紫のドレスを翻し、立去っていった。


 女性の部屋に荷物を置くと、軽く一例してメイド達も退出していった。

 それを眼で追って確認した後にロゼがマリネに擦り寄った。


 「でさ……貴方達て、何処まで進んでいるの?言いなさい」

 「えええ……、その、投獄中のも入れて、三度……唇を」

 「何よ……それだけなの?、つまらないわね」

 エルフは耳が普通の人間より耳が良いらしい。


 「ふん……やはりお子様だなマリネもロゼも」

 二人の会話を聞いていたアネスは、腕組みをして見下ろした。


 「な、何よ……、アネスは違うというの?」

 

 片手を伸ばし手を開いて見せた。

 「ふふ……五回だ!」

 「ご、いつの間に……、恐るべしエルフ」

 「そ、それが何ですか……私なんかもっと、こう引っ付いて……」

 回数で負けた悔しさで、その時の状況を身振りでアピールするマリネ。


 「ほおぉ、こんな風にか?」

 窓際のカーテンを脚と胴体、頭に見立てると。

 脚を絡ませ、首を反らせ長い黒髪をダラリと垂らし、腕で抱き寄せる。 

 「いやああああ」

 「ひやあ」  

 「ふふふふ」

 

 見かねたハルが……。


 「止めて下さい! 、全部聞こえてますよ、恥ずかしいなぁもう……」

 真っ赤になって 縮こまる三人。

 

 ハルが止めなかったら、三人の可愛らしい内容の女子会は、まだ続いていたかも知れない。が、それをもし現代のJKが聞いていたら、あんたら全員お子様と、きっと言われそうだ。


 「ハルさんは……如何なのですか?」

 「え……、私も……好きですよ当然」

 ハルの笑顔で好き、の言葉は凄く自然な物だった。

 イリスの頭の中で声が聞こえてきた、それはこう流れた。


 『貴女もきっと、そうなりますよ』

 「そうですね……、でもそうなると、私もあそこに入るのかな?」

 「なに?、イリスさん何か言いました?」

 「はい……サラトさんから、頑張れと」

 ハルの中で、笑いに成らない笑いが生まれた。


 〝私……かなり出遅れてるのかな?〟


 和やかな女子会の雰囲気と代わって、隣の部屋では。


 「貴女に少しお話があるのよ、いいかしら?」

 立去ったに見えていた大公グリューネは俺の部屋へ現れた。

 

 「いや、お断りします」、何て言葉は決して言わせない眼で見詰られてる。

 「はい! 、何でありますか?」


 「あははは、そんな硬く成らないで頂戴、取って食べたりしないから」

 いや……、取って喰いそうな雰囲気が、バリバリ見えるんですが……。


 「貴方……異世界人よね、力を貸してくれない?」

 「なっ! 、はぁ、皇族だしバレて不思議じゃないか」


 「ええ、それは構いませんが、詳しい説明は……、すいません出来ないんですが、彼女達と一緒でないと、上手く言えませんが、同行してないと駄目なんです。だから……」


 「ええ勿論、後で昼食の時にでもお話するわ、先に貴方に話したかった」

 まあ、何も起きないのは、もう諦めてるけど、今度はどんな面倒事だ?。


 「それじゃ、又、後でねぇ」

 用件を伝えて、ドアから出ようと手を掛け開ける、退出する間際に。


 「そう……言い忘れてたけど、ロゼを泣かせたら、殺すわ」

 

 さらりと恐ろしいセリフを吐き、笑顔に戻ると、じゃね、と、出て行った。ロゼに確かに性格は似てるが、まだその格が違う、大公に比べたらロゼなんて、子供いやお子ちゃま……程度だ。


 ロゼも将来はああなるのか?、是非とも母親の方へと考えてみたが、如何考えても似合わない。やはり大公、姉方の血統を継いでいる。


 俺の部屋とロゼ達の部屋へ、メイドが昼食の案内をしにきた。

 庭に、場が設けられていた。


 全員が椅子に座り終わると、大公が話を始めた。

 「さて、食事の前にちょっといいかしら、彼を私に貸して頂戴」


 「嫌よ伯母様!」

 「却下だ」

 「お断りします、大公様」

 「お断り致します」

 「残念ですが、ご遠慮下さいませ大公様」

 「ご自重下さい大公」

 「我が主は物では無い」

 

 「ちょっと、貴女達……何を勘違いしてるの?」

 さっきの女子会の雰囲気が、頭の中ではまだ続いていたようだ。


 「私は、彼の異世界人の力を、貸してと言ってるのよ!」

 「伯母様……、知ってらしたの……」


 「当然よ、……、彼を借りるわよ」


 〝さて……、今度は何をやらされる?〟

 

 


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