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本編-0079 関所街への道~道中

【盟約暦519年・鳴き鹿の月(2月)・第8の日】

【~転移116日目】


"異界の裂け目"を改めてくぐった時、最初のときのような、例の妙なシステム音はもうしなかった。料理屋の暖簾をくぐる……なんて言うと気軽過ぎるかもしれないが、本当にそれぐらい気楽であった。


("特例"ってのが続いてるわけか)


『裂け目』を通る、という発想自体は迷宮領主(ダンジョンマスター)であれば、おそらく誰もが考えつくものだろう。そして、中には実際に試そうとしたものもいて――【懲罰原理】とやらでどうにかなってしまったものもいるのかもしれない。

――将来的な敵であるテルミト伯にも、まさか聞くなんてこともできまいよ。下手に情報をやっても詰まらないからな。だが、発言からすると「裂け目くぐり」が"蒼き涙"型……おそらく『融合型』の迷宮領主(ダンジョンマスター)に可能であることを理解している、とも思えるが、どうだろうか?

【人界】では『末子国』が「いずれ来たる"再侵攻"」に備えることを国是としているらしいが、案外、【黒き神】の意思だかでそもそもそれが【魔界】側からは封じられているかもしれない可能性があるのだ。


(いや、今は"人界"に集中すべきだな)


どのみち『最果て島』に押し込められ、独自外交もできていない現状、この件は棚上げにするしかあるまいか。今後【魔界】側で勢力を拡大していく時に、検証方法を検証していく、ぐらいの気持ちで望むべきだろうよ。


――さて。

斯くして、俺は愉快な野郎配下三名と、『長女国』と『次兄国』への国境の一つである【関所街ナーレフ】へ向かっていた。

服装以外の持ち物は、以下の通りだ。


根喰い熊(ルートイーター)の胃袋を加工して作った水筒

・各種容れ物用の小袋・大袋の類

・ナイフなどの雑事に必要そうな小道具

・干し肉中心の携行食をいくばくか

・数袋分の魔石(最小~小サイズ)


出発前の最終確認を終えて、2月7日の早朝に出発し、魔人と竜人の体力で以って森を踏破した結果、早々には"街道"へ辿り着いていた。誰かに見られているでもなし、一般的な旅人と比べてもかなりの速歩。このペースならば街までは、後1日もかからないといったところか、明日の昼頃にはたどり着けるだろう。


ルク? 魔石はたんまり(・・・・)持ってきたから、【肉体】魔法と【活性】魔法で気合い入れて強行軍に付き合ってもらいましたとも。


……だが、肉体的な疲労は感じつつも、その表情には"解放感"が漂っているのは、なんでだろうねぇ?

ちなみに、妊娠が発覚したミシェールは【揺籃臓】に突っ込み、グウィースとウーヌス&名付きエイリアン達と共に留守居を任せているが、それが原因かどうかは――おいこら、なに睨んでんだ没落貴族。


「はぁ……オーマ様の考えていることが、よくわかるようになってきましたよ、最近。行動原理が一貫してますからね」


なんとも、妙な特技を身につけおってからに。

まぁ、いい。


「おう、そろそろ"仮面"つけとけよ?」


「はいはい」


今、俺達が歩いているのは、禁域の森を抜けた関所街への道中――ではない。

その反対側、関所街から『長女国』内各都市へ通じるルートへ、一晩の間に森を抜けて移動してきていたのである。故に、ここから先は人目が多くなることも見越して、ルクには仮面装着の指示を出したわけだ。


禁域の森ルートは、石が並べられただけの簡素な舗装であったが、それは征服される前の【ワルセィレ森泉国】時代のもので、新たな統治者となったロンドール家はその整備を棚上げしていた様子。

まぁ、それもそうだな――そちら(・・・)に用がある一般人なんて、ほとんどいないはずだからなぁ。


それだ。

それが、問題であったのだ。

だからこそ、わざわざ強行軍で森の中を迂回し、正規(・・)ルートの街道まで出てきたというもの。


俺は改めて、モーズテスが持っていた"禁域の森"への『地図』を取り出した。

そして【魔素操作】と【命素操作】を発動して――地図に妙な"力"が宿っていることを確認してから、独り言つ。


「"忘却"の神威破り(・・)の神威――訳がわからんなぁ」


俺の迷宮が存在し、リュグルソゥムの兄妹が飛ばされた場所は"禁域(アジール)"である。

それは『末子国』の「査察」を通して指定される、迷宮とその周辺一帯のことを指すもので、公式な地図上からの存在の抹消や、管理する領主達に侵入者の阻止が義務として課される他――"神威"による魔法じみた「封鎖」も行われる。

別に入ったら神罰で雷に打たれるとかいうわけでもないが、魔法とは異なる原理によって働く"神威"が生み出す効果により、"禁域"の正確な場所を知らない者達はまるで迷路に迷わされたかのように、決してそこへたどり着けなくなる「忘却」に囚われる。

それは、よほど強くその場所を意識している者でも、油断すると「持っていかれる」ほどに強い"神威"であるという。

大抵の迷宮は地域の領主が管理しており、一般的にその位置が知られていることは稀であるため、「地図抹消」と「領主の検問」とこの「忘却の"神威"」という三重の守りによって、通常は"禁域"に何者かが入り込むことはできない。


ただし、例外が二つ。

一つは、この"忘却の神威"を破るための"神威"が存在しており――モーズテスの持っていた「地図」にはそれが宿っている。元は『末子国』が、一度封鎖した"神威"に何らかの理由でもう一度入る時に、また入るためのものである。

……まぁ、こんなものがある時点で『末子国』がリュグルソゥム家殲滅の陰謀に、かなりの役割を果たしていたことがうかがえるわけだが。

もう一つは、"忘却"の神威は、あくまで「外から」訪れる者にしか効果がない。

隠すべき、忘却せるべき領域の「内」からは容易に破られるのである。そしてこの場合、まるで最初から何もなかったかのように、霧が晴れるようにして「忘却」の効果は消え失せるという。

それから"例外"とは異なるが、後は『末子国』が自ら「封鎖」を解除するような場合だろうか。


つまり、俺達がのこのこと"禁域"側から出てくるのは、万が一誰かに見られでもしたらいろいろまずいというわけであった。


――まぁ、当初は『工作員の振りして"リュグルソゥム兄妹の死体"として適当な髑髏を届ける』なんて刺激的な案も考え、あえて"禁域"側ルートから行くことも検討したんだが、さすがにルクとル・ベリに二人がかりで止められた。


なので"正攻法"で正面から、旅人とか商人とかそんな感じでナーレフ入りすることにしたのである……工作員を騙るルートの勝算もそれなりにあったんだが、さすがに超ハイリスク超ハイリターン過ぎたかな。

まぁ、いいや。


それはそれとして、どうも、モーズテスはハイドリィと敵対していたため、リュグルソゥム兄妹の転移先の正確な場所を、わざと伝えていない様子。そもそも『仮面の男』との繋がりも、ロンドール家というよりは、直接【紋章】家から下された指令であり……。

俺にとっては幸運なことに、ハイドリィはまだ『そこ』が、まさか自身の統治する街のお膝元にある禁域である、などという情報を得ていない可能性がある。

まぁ、馬鹿じゃないだろうから、いずれは察知するだろうが――ならばこそ早めに手を打って【騙し絵】家と万が一にも連携を取られないようにする必要もある。


――ルクの"復讐のための調査"と俺の"迷宮都市構想"を共に満たせるシナリオの第一歩として、俺は『関所街ナーレフ』を半独立勢力(・・・・・)に仕立て上げるつもりでいるのだ。この時、担ぎ上げる神輿として、例えばコンプレックス持ちの"野心ある"若い代官なんてのはどうだろうかね?


……まぁ、いろいろと条件が整えば、だが。

ハイドリィにせよ『森の兄弟団』関係者にせよ、その他の街の諸勢力にせよ、【情報閲覧(直接話を)】してみないと、どんな手合いかわからないだろう? それに応じて、打つ手はいくらでも変化はしていくだろう。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に行くわけだが――『きゅ? それってつまり出たとこ勝負……』黙らっしゃい。

少なくとも、道中の今ぐらいは「全てが上手くいった理想パターン」を夢想して愉しむことぐらい、許されて良いだろう?


それも『短期計画』あるいは『積極策』が究極的には意味しているところである。

案ずるより産むが易し、まずは飛び込んでみようかね。


   ***


「……ところでオーマ様、本当にその"魔石"を売る気ですか?」


「何か、問題があるのか? リュグルソゥム」


「ふん、トカゲめ、考えてもみろ。出処を疑われれば、御方様を含め我らに注目が集まりすぎる……御方様が"その時"と見込むまでは、注目を浴びていない方が活動しやすいということもあるだろうよ」


「ル・ベリの言うことが正解――ではあるが、(実弾)は早急に欲しい、というのもある。ほれ、ルク君の"お買い物リスト"のためにも……なんて目してんだお前、冗談だよ冗談」


ごほん、と咳払いを一つ。

何、簡単なことだ。

情報と信頼を買う上で、手っ取り早く相手の心に入り込むのに"気前の良さ"を見せつけてやるのは、古典的ではあるが有効な手段であろうよ。酒場でゴロツキどもの飲み代を一晩分でも奢ってやれば、良くも悪くも"注目"を集めるだろう……『魔石』を売り払うだけではより悪い(・・・・)注目しか集めないのと違ってな。


「さすがは御方様――おい、どうなのだ? 人間、ルクよ」


「ル・ベリさんも相変わらず忠誠心の塊なご様子で――まぁ、"悪い"効果も承知の上でならば、私は従うのみです。任せてください……得意分野ですから」


ルク曰く。

どこの街にも大抵は存在している"闇"ルートを、何重にも経由するという。

それも【精神】魔法【霞がかる容貌】の効果により、買い取った闇商人に『誰と取引したかを混乱』させることで、記憶させないようにすることができるという。

ちなみに本人が「得意分野」とか嘯いているように、この手口(・・)によって、王都の貧民窟(スラム)を根城にする犯罪組織とかならず者団を相互に抗争させるという、ちょっと危険な"遊び"に長く興じていたらしい――リュグルソゥム家の虐殺時にミシェールを拾ったのも、それの帰りの時にたまたまだったというから、筋金入りだコイツ、グレすぎだろこの不良ガキめ……。


「わかっていると思いますが、魔石が出回ったという情報の拡散自体は防げません。"どこ"の迷宮からそんな大量の魔石が出回ったのか、ロンドール家だけでなく【紋章】家の興味を引く可能性は高いですからね?」


「おや、おや? 何か不都合かな? ルク青年――むしろ【紋章】家が、こんなことで自ら乗り出してくるなら、逆にお前にとっちゃ願ったりだろうに」


一口に『迷宮開放』の布告と言っても、『長女国』全土にある数十もの迷宮全てが一度に、ということは有り得ないだろうというのがルクとミシェールの予測(・・)である。管理上の問題もあるし、『末子国』と今後予想される激烈な外交戦や暗闘、強権的な"査察"への対応に障りかねない。

したがって、迷宮の開放自体は"段階的"なものになるだろうとのことだが――その「第一陣」に、関所街ナーレフ近郊のどれだけの迷宮が含まれているかまでは、さすがにわからない。それに、さしものリュグルソゥム家の「止まり木の知識」においても、他の魔導侯家が管理し潜在的な資源として秘匿する「迷宮」まで含めた"全て"を把握できているわけではないらしい。

まぁ、それも"謀略の獣"同士の激しき【情報戦】といったところか。


――ただし、モーズテスの『知識』から、少なくともナーレフの周辺については、そうした"秘匿迷宮"が一つ明らかになった。

どうにも、モーズテス自身ハイドリィを監視し始めてから、つい最近その存在を知ったらしいが……。


「考えてること、当ててみましょうか。"開放"されてなくても関係ないさ、他の迷宮から出回ったものだってことにしてしまえ――とか考えてます? ……確かに、この程度の餌(・・・・・・)で【紋章】家が乗り出してくるなら楽なんですが、ね」


おいおい、【人界】で『エイリアンネットワーク』に頼れない俺に対して「止まり木」使うのはズルだろう……え? 【高速思考】? 知らない子ですねぇ。


おほん。

ルクが、ご丁寧に俺の口調まで真似て解説してくれたように、関所街ナーレフの近郊にはいくつかの迷宮(ダンジョン)が存在しているのだが――そのうちの一つが【紋章】家にとって大きな利益をもたらす"金の鶏"なのである。世間では表向きには"交易利権"のために【ワルセィレ森泉国】が征服されたと思われているようだが、実際は"その迷宮"を押さえるのが真の目的だった、と俺は考えている。


これ以上の詳細は、モーズテスも調べきれていなかったようだが……ナーレフ統治に"懐刀"のロンドール家がわざわざ派遣されたのは、そうした事情もあるらしい。


「そんな大事な迷宮があえて"開放第一陣"になっている、てのは考えにくいが――例えば、その迷宮から『魔石』が出回った、なんて噂が蔓延したら、野心溢れる若代官はどんな行動を取るかなぁ? 【紋章】家への忠誠を優先して、火消しに躍起になるかな? それとも? 楽しみじゃあないか」


なにせ『迷宮開放』の布告の直後だ。

もし、噂される"野心"が本物なら、俺の予想通りなら、ちょいと刺激的な選択肢を若代官様は取る可能性だって否定できない――そして可能性がゼロでないならば、それを涵養することだってできるだろう?


「悪い顔浮かべますね、オーマ様」


「お前もな、リュグルソゥム」


「……おっと、『心眼』ですか。ずるいですね、"魔法"だったら対抗魔法で打ち消して差し上げるんですが」


「ふん、簡単だ、こうすれば良いぞ、ルク」


言うなりル・ベリが『エイリアン鞭』をひゅっと伸ばしてソルファイドの耳元で空を炸裂させた。


「むッ!?」


あぁ、なるほどね。

炸裂音で妨害(・・)したってわけか。

どうもソルファイドの『心眼』は視えすぎる(・・・・・)

そしてその正体は――どうも五感以外の感覚によって理解した周囲の環境を視覚情報に置き換えている、一種の強力な共感覚である。無論、そこに魔素とか命素という要素もあるから、必ずしも物理的科学的ってわけじゃあないが。


つまり"音"にも頼っているわけで、大まかな"形"や位置関係を把握する分には、別に今のル・ベリの行動はさしたる妨害効果は無いのだが、例えば壁の向こう側だとか、"仮面の向こう側"の顔だとかをも"透視"しようとすると、集中のレベルを一つ上げなければならないらしい。

すると、ル・ベリが今やったような"炸裂音"のようなものは空気振動を激しくかき散らすため、今のソルファイドにはルクの仮面の下の顔が霧散してしまっている……というわけである。


まぁ、ル・ベリもそれ以上ちょっかい出さなかったため、この場でいきなり『模擬戦』が始まる、ということは無かったが。


挑発には特に興味も示さず、ソルファイドがしみじみと語る。


「利権、か。大国に滅ぼされる小国は悲運なものだな」


どうも自身の経験に重ねたようだな。


――ふむ。

ソルファイドの故郷は"楔"という組織に追いつめられたわけだが、それらと協同した『長兄国』の思惑がどうかは分からないが……大国の都合や論理によって振り回された、という意味でならば、【ワルセィレ森泉国】も同じようなものであるとは、確かに言えるだろう。


おそらく根っこの部分では【紋章】家が"その迷宮"を欲したのは事実だろう。

だが、そもそもの『長女国』の統治体制自体が"侵略的"であると、俺は考えているのである。

【継戦派】がいるから戦争が続いている、いつまでも終わらない……というのではない。逆なのである。むしろ『長女国』自体が"そう"であり、【継戦派】という存在はその落とし子に過ぎない面があるように思われる。


んで、その鍵は『晶脈』ネットワークだろうな、やはり。


こいつは言わば、地域間の魔法属性的不均衡を"(なら)す"壮大な装置であるが――元々、自然が壊れて不均衡状態に陥ってた地域「だけ」で均すのには限界がある。

別に『属性量保存の法則』みたいなものがあるわけでもなし、均していって均していって、必ずどこかで"足りない"属性エネルギーが出てきてしまうのである。


では、どうすれば良いか。

簡単である。

"よその"地域を、この【晶脈ネットワーク】に組み込んでしまえば良い。


そうすることで、元々の国土の荒廃した属性バランスを、新たに征服した地域もろとも"均す"――つまり一部の不均衡を押し付けてしまえる。これにより、元の"荒廃"した地域は、征服された地域から属性エネルギーを奪い取ることで「均衡」に近づくが――組み込まれた側からしたら、これはたまったものではないだろう。

そもそも組み込まれなければ、属性バランスの乱れによる"天災"なんて起きなかったはずなのに、頻度は少ないといえども、それが「起きる」ようになってしまうのだから。そしてそれを防ぐためには……【魔導侯】を頂点とした【晶脈】による"調律"に依存しなければならなくなる、と。


故に【継戦派】的な考え方は、構造上、無くすことができない。

ヤマタノオロチへの生贄の娘を、自分達の村でまかなわず、他の無関係な村から攫ってくるぐらい利己的な悪辣さだ。

――これを"侵略"と言わずして何と言えばいいかね?


だから、様々な種族と文化が乱立する【西方諸国】は、相争いつつも、『長女国』の【懲罰戦争】に対してだけは大同団結して徹底抗戦するというわけだ。

きっと【ワルセィレ森泉国】以外にも、多くの中小国がそうした"侵略"によって飲み込まれてきたのを、数百年に渡って見てきたが故に。


――だが、そうだとすると、ルクが語った『豊穣の大地を狙って"西方諸国"が侵略してきたのを追い返したのが【懲罰戦争】の始まりだ』という『長女国』側の認識が、途端にきな臭いものに見えてくるわけだが、さて。


「ちょっと待て、あれはなんだ?」


「む? おいトカゲ、御方様のためにさっさと"視"てみるのだ」


ふと視線の先に異物を発見して俺は足を止めた。

つられて足を止める配下三人組。


「行き倒れだな」


「行き倒れですね」


「なるほど、行き倒れか……だそうです、御方様」


うん。そうだね、行き倒れだね。

見事な五体投地と言わんばかりに両手両足を大胆に広げ、大地とキスをしているのは――少女か。


だが、カタギでは無いだろうなぁ……少なくとも、身長ほどものサイズのクソでかい片刃のバトルアックスを背負っている少女を、道に迷った迷子の村の女の子、なんて考えるほど俺はメルヘンな頭脳はしていない。


さて、さて。

何があったことやらと思案していると、50メートルほど先で地面に突っ伏しているにもかかわらず、俺達の気配に気づいたように、少女がぴくりと動いた。


「……何か言っているな」


「聞こえるのか、ソルファイド?」


【心眼】が視覚も聴覚も兼ねる共感覚的レーダー+ソナーであることから、読唇術の超上位互換とでも言うべき能力が備わりつつあるわけだが――ソルファイドが耳を澄ませていると、ルクが気を利かせて【風】魔法で何かしたようで、俺の耳元にも微かに少女の声が聞こえてきた。


「肉……お腹……空いた…………ご、飯……めし…………肉の、におい……」


おう。

訳は分からんが、分かりやすい性格だな。

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