本編-0078 関所街への道~出立準備
【盟約暦519年・鳴き鹿の月(2月)・第7の日】
【~転移115日目】
『関所街ナーレフ』行きを決定してから、一週間の間に色々と準備をした。
中でも、一番大きいのは――"裂け目"周辺の拠点化での方針転換だろう。
当初は【魔界】に準じる『エイリアン地下洞窟化』の線も考えたが、今回のナーレフ行きでその考えは一時凍結している。というのも、この国の政府から「迷宮開放の布告」なんてものが出されている以上、その影響を見定める必要があるのだ。
少なくとも、俺の迷宮が位置する禁域の存在はナーレフ代官のハイドリィも当然のこととして知っているだろうから、彼がどのようなスタンスを取るのかを見定める必要がある――というのも、実は『短期計画』を推していた理由の一つである。
よって、ナーレフ周囲の"迷宮"の配置状況を見てから、俺の迷宮を堂々と『迷宮挑戦者』達に曝すか隠すかを選択することになるだろう。
そう考えた時、現実的には森をエイリアンで染め上げることはせず、ごく「普通の魔物」達が巣食う場所として拠点をデザインするというのが、現在の次善の策というところ。んで「普通の魔物の森」である以上は、ある程度の侵入と、その中で撃ち漏らしや意図的に逃がす可能性を見込まなければならないだろう――【魔界】側にまで侵入したら、逃がすわけにはいかないがな。
◆簡易拠点
まず、将来的な金策手段を見越した「ゴブリンの魔素絞り」を配置するため、"大うろ"の地下には最低限の空洞を幾つか掘り抜いている。
その後、周囲には採集労働力やいざという時の肉盾とする【魔界】の『ゴブリン工場』産の"養殖"奴隷ゴブリン達を配置していく。どうせ大半の個体は"廃棄"することになるのだから、その前にローテーションを組ませて見回らせようというのである。まずは、反抗心の低い個体を中心にした品種改良が進みだしており、走狗蟲の監視下ではまず逃げ出さないような、調教と刷り込み法もル・ベリによって確立済みである。
んで、無論、こいつらは寄生小虫入りだ。
というのも、パラサイト達について検証と研究が進んだ結果――より効率的な使用法が明らかになったのだよ。
◆"大うろ"周囲の監視
というのも、パラサイトを埋め込む場所によって、顕著なパフォーマンスの違いが現れたのである。
特段の指示をしない場合、パラサイト達はデフォルトで対象生物の「延髄」に寄生する。これはパラサイト自身の寿命を優先し、長く情報を得ることを目的としたものである。
一方で、直接"脳"に寄生するように指示すると。
パラサイトの寿命が激減するのと引き換えに、延髄寄生の時よりも、寄生先の生物を"操る"自由度が少しだけ増したのである。
――しかも、寿命激減の問題もある程度解消する目処が立った。埋め込む時に、最小サイズの命石をさらに砕いた欠片を持たせることで、その寿命を伸ばすことができるとわかったのである。
これで多少の"無茶"が利くようになったため、他の様々な鳥獣と共に、養殖ゴブリン達を"探索役"として操作することも容易になったのである。
◆さらに周囲の"森"の監視
それだけではない。
「ぼく、もりのおうさまだって!」
……と言いながら、"異界の裂け目"からニコニコしながら這い出してくるグウィース。その両腕には『宿り木トレント』の若木が。
実はこの魔人樹幼児、いつの間にかエイリアン達を手当たり次第"乗りこなす"ようになったことで行動範囲が劇的に増えており――なんと、最果て島の地上部にかつて侵入した【宿り木トレント】のうち、駆除を逃れ、少しずつだが島の生態系に適応していた"群れ"と接触したのである。
そこで【宿り木トレント】達から、なぜか英雄視され、協力を取り付けることができるようになっていた。
『グウィースちゃんとの共同作業……燃えるきゅぴ!』
いや、植物なんだから燃やすなよ?
"裂け目"から半分だけ身体(脳髄)を露出させたウーヌスが、"森"の探索と地理測定のために設置した「人界探索班」の走狗蟲を呼び寄せる。すると、そのうちの一体に、グウィースが下半身を"根枝"モードに変えて背に絡みつくように乗り――近くの木に『宿り木トレント』を植樹して戻ってきた。
「みんな、いいこ!」
「いいか、グウィース、いざとなったら必ず逃げるのだぞ? お前の両腕と下半身は、時間さえ立てば回復する。それを盾にして――」
ル・ベリが多少の過保護精神を発揮しているが、現状グウィースはあまり遠くには行かせない予定だし、最低限の"植樹"が終わったら、後は【宿り木トレント】達の自然的な繁茂に任せて、一旦【魔界】側に戻す予定である――そっちの"森"も管理してもらわなければならないからな。
……これはなんというか、よもや本当にかつての【樹木使い】リッケルが転生したかと思うような光景だが、便利なのだから仕方ない。
なにせ、グウィースは【宿り木トレント】を通して"寄生先の木"と交信できるようになり、"通訳"役を務めることができるようになったのだ。これによって、俺はこの禁域の森を監視する別の方策として彼らの協力を取り付けることが可能となったのである。
といっても、界レベルで存在が異なる植物が相手。
考えていることも使っている言語というか手段も、というか"意識"なるものの在り方なんぞは根本から異なっていて、どうにも俺やエイリアン達と直接交信できるわけもなし。迷宮の眷属になったわけではないため、心話や『エイリアンネットワーク』に取り込めるわけでもなし。
よって、ひとまずはグウィースに丸投げする形を取っているため、定期的に【魔界】と【人界】を行き来させる必要はあるだろうが。
こうして"大うろ"の周囲に【宿り木トレント】達を繁殖させていき、『目』兼いざという時の防衛戦力としている。
◆"森"全体の踏破と探索、因子探しなど
「大うろ」周囲は養殖ゴブリンで固め、さらに周囲はパラサイトした鳥獣や【宿り木トレント】で見張る。いざという時は、地下の『魔素絞り』施設は落盤させて隠蔽するのが、現時点での【人界】側拠点の防衛思想だ。
その上で、【魔界】側の防衛体制をさらに簡略・効率化することで、エイリアン数十体から成る『人界探索班』を構成した。
<人界探索班>
・走狗蟲 …… 40体
・誘拐小鳥 …… 15体
・隠身蛇 …… 10体
・韋駄天鹿 …… 5体
・鉱夫蟲 …… 10体
とりあえず一週間ほど周囲を円を描くように少しずつ慎重に探索させたところ、かなり広大な森林地帯であることが分かっている。
【魔界】の最果て島が2~3個は入りそうな広さを踏破したが、全容を掴むにはまだ時間がかかりそうである――『痺れ大まだら蜘蛛』が"どこ"から侵入してきたのかも、合わせて調査しているんだがな。因子探しも並行して行わせており、『人界探索班』が狩ってきたり採集してきた動植物その他を"大うろ"周辺で受け取って【魔界】側の奴隷蟲達に引き渡すのも、養殖ゴブリンどもの重要な仕事だったりする。他には……魔素絞りへの給餌とかかな?
とはいえ、ルク兄妹が既に「止まり木」上で作成していた"地図"も提供を受けることができたため、調査ペースは予定より早く進んでいる。加えて、モーズテスの『超党派部隊』からも「地図」を手に入れており、これによって『関所街』に通じる街道が見つかった。
魔人の体力をフル活用して急いで森を踏破すれば、1~2日程度の距離といったところか。関所街ナーレフへは、さらに1~2日ほど街道を歩けば到着できそうだ。
◆管制体制
さて。
【人界】に本格的な拠点は作らないとはいっても、パラサイト然りグウィースによる"樹木語の翻訳"然り、『人界探索班』然りでどうしても「エイリアンネットワーク」に頼らねばならない側面が生じている。
しかし、【人界】側では【魔界】由来の技能――例えば【情報閲覧】や【眷属心話】が阻害されており、発動そのものが不安定で、これは『エイリアンネットワーク』を構築しているウーヌス達にも言えることなのである。
かなりの負担が加わっているらしく、単純に演算処理能力が3割以下だが……ここは踏ん張りどころということで、小細工も弄している。それが、あれだ。
『きゅ……【人界】側に出したお尻が冷えるぅ!』
『チーフ、身体を上下半分にじゃなくって、左右半分で出すのが楽だよ?』
『きゅぴ! その手があったか!』
グウィースがさっき植樹した時にも一瞬見えたが、ぷるきゅぴ達になんとか【人界】と【魔界】を同時に『エイリアンネットワーク』維持させようとした結果、この頭隠して尻隠さずに近い、半分こずつ"裂け目"から身体を露出させる方式に落ち着いたのである。
……なかなか美しくない光景ではあるが、背に腹は代えられまい。一応、【魔界】側でサポート役の副脳蟲をさらに何体か増やしてやっているし、いざとなれば6体全員で【人界】側に身体(脳髄)を露出させて管制してもらうから、即応能力はなんとか及第点という感じではあるんだがな。
それでも、仮に大規模な侵攻部隊なんかを確保しようと思ったら、もっと本腰入れて拠点開発しなければならないだろうが……まだまだ、【魔界】側の情勢も合わせて考えると、それは早いかな。
下手したら世界をまたがる二正面作戦やらかすことになるわけで、そうでなくても【人界】のペナルティが重いわけだし。
ひとまず、以上が現在の【人界】側の拠点整備状況である。
はっきり言って、ナーレフでの活動がどのように転がるかわからないための、一時的な措置である側面も強い。本格的にエイリアンで侵食するでもなく、徹底的に活動を抑制しているわけでもないからな。
中途半端と言えばそうだが、どんな状況にも対応できるように、すぐに手を引ける体制にしているとも言えるか。
***
それから、服装面と装備の面でも入念な準備をしてきた。
なにせ【人界】に侵略するのではなく浸透することを狙う身だ。
異文化バリバリの怪しさ満点な格好で、下手に注目と警戒を集めてもしょうがないだろう――このことを見越して【異形】にも【魔眼】にも振っていなわけだが、やはり転移初期から着ていた衣服はボロが目立っているというもの。
ならば、新調したのか?
……答えはNOだ。
ほれ。
リュグルソゥムの追っ手を撃退したことで、戦利品がたくさん手に入ったろう?
――因子として絞りきるだけでなく、その工作員としての機能的な"旅装"すらをも余すところなく、再活用させてもらったというわけよ。
……まぁ、死因が死因なもんで、数名分は完全にダメになったものもあるわけだが。"酸"でズタボロになったり"転移事故"のために天井や壁と融合してしまったり……それでも、ソルファイドやルク兄妹みたいな「魔界落ち」する前から元々着ていた衣服防具がある連中は、手直しや補強だけで済ませられるんだがな。
なので、一から取り揃えるという意味では、俺とル・ベリぐらいなものか。
『きゅぴぴっ! というわけで、僕達きゅぴきゅぴ仲良し戦隊のふぁっしょんチェックの時間なんだよ!』
いや、要らないから。
『まずは、ソルファイドさん! 故郷の"里"さんにいた時から着ていたベストさんが、希少な魔獣の革さんを使っているのか、使い古された感が逆にゔぃんてぇじな戦士さん風を醸し出してるきゅぴねぇ』
……押し通るのかよ、仕方あるめぇ。
主脳より優れた副脳など存在しないことを、その身に刻みつけてくれよう。
『きゅきゅ!?』
<装備:ソルファイド=ギルクォース>
武器:火竜骨の双剣【レレイフの吐息】【ガズァハの眼光】
頭部:眼帯(両目分)
上半身:『火蜥蜴』の鱗服(使い古し)
上半身:『城壁獣』の硬殻胸当て ← New!!!
背中:『温水野牛』の毛皮製の鞘(使い古し)
両手:魔法工作員の手甲 ← New!!!
両腕:魔法工作員の肘当て ← New!!!
腰:『迷彩鹿』の腰巻き ← New!!!
腰:『火蜥蜴』の長舌ベルト(使い古し)
両脚:魔法工作員のズボン ← New!!!
両脚:魔法工作員の膝当て ← New!!!
両足:『溶岩サソリ』の軟骨靴(使い古し)
ウーヌスが述べた通り、元々が"里"の高位戦士だけあって、魔物狩りなどで手に入れた希少な素材で作った衣服兼防具を"魔界落ち"前から所持している。
これらは頑丈であるだけでなく、『火竜統』なソルファイドの"火の技"にも耐えうる素材であることがポイントで、合わせて軽さと機能性を両立している。使い古されてはいるものの、目立った傷は少なく、十分今後とも実用に耐えうる。
ただし、ズボンはごく普通の素材であったため、焼け焦げなどが目立っており、ちょっと見苦しいぐらいにボロボロになっていたので、新調させた。
合わせて手甲だとか肘当てだとか、"要所"をピンポイントで守るような装具で固めて本人の機動力を殺さないようにしている――というのも、竜人たるソルファイドは体表の50%ほどが"鱗"に覆われており、それだけでそこそこの防刃性能がある。その分、軽装でも十分な防御力が確保できるというわけである。
……確かに彼は達人の体捌きを持つが、決して俺の筋肉エイリアン達のような"怪力"を持つわけではないため、いたずらに重装備にするよりはこれが良い、というわけである。
後は、胸甲騎兵的な発想で、せっかく引剥して取っておいたガンマの『硬殻』を胸当てとして再利用してみた、というところだろうか。
とはいえ、それだけでも結構な重さだったのだが――心臓と、肺の間にある"息吹嚢"を守るアクセントとしてならば、本人曰く十分許容範囲な重さとのこと。
『きゅきゅ! 良い仕事ですねきゅぴねぇ! 全体的に無骨な戦士さんになっちゃったのを、ズボンとベルトの上から覆った鹿さんの迷彩柄の腰巻きさんが、いい具合にワイルドなアクセントを加えているきゅぴねぇ!』
はいはい、それっぽい言葉並べなくても意気込みはわかったから。
<装備:ル・ベリ>
武器:『城壁獣』の硬殻皮鞭 ← New!!!
異形:8本触手(四肢触手+触肢花×4)
頭部:魔法工作員のフード付き外套 ← New!!!
首:触手1本(擬装済み)
上半身:触手2本(擬装済み)
上半身:魔法工作員の上着(大型) ← New!!!
上半身:ボアファント毛皮製大型コート ← New!!!
背中:魔法工作員のフード付き外套 ← New!!!
両腕:触手2本(擬装済み)
両腕:魔法工作員の上着(大型) ← New!!!
腰:触手1本(擬装済み)
腰:ボアファント毛皮製大型コート ← New!!!
両脚:触手2本(擬装済み)
両脚:魔法工作員のズボン(大型) ← New!!!
両脚:ボアファント毛皮製大型コート ← New!!!
両足:魔法工作員のブーツ ← New!!!
先に述べた通り、ほとんど新調する形になったんだが――うん。
どこぞのタコ博士よろしくな【異形:四肢触手】の存在によって、何も対策せずに人里に出たら、即刻討伐対象にでもされていたことだろう。
しかし、うまいこと『擬装』因子を埋め込むことができたので、なんとかなったわけだが……これは、ちょっと。
――ル・ベリが今どんな状態になっているか説明しよう。
まず、何も着せない状態で、背中と腰から伸びた8本触手をそれぞれ首と腰と両腕両脚に一本ずつ巻きつけさせるのである。そしてその上から、体型を隠すことだけを考えた大型の衣服をおっかぶせて、はい擬装完了! というわけである。
いや、うん。
然は然りとて、どこからどう見ても某緑の筋肉暴走巨人ヒーローに服を着せたようなパツンパツン具合であり、本人のシュっとしたIKEMEN頭部とのアンバランスさが酷い。仕方がないから、上からさらにフード付き外套と、ボアファントの毛皮を贅沢に使った大型のコートを被せて、なんとかした違和感の減殺に努めた感じである。
「……どうだ? ル・ベリ」
「これは――実に身体が動かしやすいですな、御方様!」
「はい?」
「物を持つのも、走るのも、腕と足の力だけでなく我が異形と御方様の眷属の力を借りることができる――確かに装備はいささか重いですが、その分だけ力強くなったことが実感できるというものです!」
あぁ……そういうことね。
『伸縮筋』によってほどよく引き伸ばされる形でル・ベリの両腕と両足に絡みついた【触手】が、サポーターだかパワードアーマー的な"補強"効果を発揮するようになっていたのである。
これにより、ル・ベリは単純な"怪力"だけならば、人間や魔人よりも遥かに頑丈なはずの竜人をも上回っている始末。オマケに腰と上半身と首にも伸ばした触手をぴったり巻いているおかげで、防御力も増しており、耐衝撃性が特に増しており……予想外にもパワーファイター型に近づいていた。
で、それに加えての【触手流魔人拳】の存在だ。
触手の"補助"を借りたパワーで殴る蹴るも良し、いざとなればコートと外套を放り捨て全身の触手を解くことで『触手魔人』モードで不意を突くも良し。
いや、まぁ、別に少人数行動だから個々の強さは大事だから良いんだけどさ。
そして、【奴隷監督】を象徴する"得物"の鞭もこの機に新調した。
またも城壁獣ガンマから剥がした硬殻を利用しているわけだが――この硬殻を炎舞ホタルの可燃性強酸に漬けて、炙ってふやかすことにより、硬殻の強靭な表皮を剥ぎ取ることができるようになる。こうして得た"硬皮"を、螺旋獣デルタに、その筋肉の限り全力でねじらせて作成した特製の『エイリアン鞭』である。
……こいつは痛くて重いぞ? とりあえず実験台の養殖ゴブリンは打たれた箇所の皮膚が破裂するのみならず、内部に衝撃が貫通して余裕で骨折に至っていた。
『パワードスーツ……その手があったきゅぴね!』
待て、何を思いついたお前ら。
<装備:ルク=リュグルソゥム>
武器:貴族の魔法剣(粗製)
頭:『愛憎の仮面(鉄製)』 ← New!!!
上半身:貴族の礼服(使い古し)
上半身:貴族の狩猟羽織(使い古し)
上半身:ボアファント毛皮製コート ← New!!!
背中:魔法工作員の外套 ← New!!!
両腕:貴族の礼服(使い古し)
腰:装飾ベルト(使い古し)
両脚:貴族の狩猟ズボン(使い古し)
両足:貴族の狩猟靴(使い古し)
<装備:ミシェール=リュグルソゥム>
頭:『愛憎の仮面(鉄製)』 ← New!!!
上半身:貴族のドレス(使い古し)
背中:魔法工作員の外套 ← New!!!
両腕:貴族のドレス(使い古し)
両脚:貴族のドレス(使い古し・裾カット済み)
両足:貴族の装飾靴(使い古し)
さて。
二人にはこの俺から"プレゼント"をしてある。
モーズテス隊の鉄製装備を、ソルファイドの竜火で鋳潰して、奴隷蟲数体に整形させ最終デザインを俺が調整した『鉄仮面』である。
「――うん。やっぱり、よく似合っているな、これでお前が誰だか誰にもわからないとも」
「自分が、道化師の真似事をすることになるなんて、思ってませんでしたよ」
なに。
ほら、彼と妹ミシェールの在り方を見せられて――こう、インスピレーションが働いてね。
名付けて『愛憎の仮面』。
ルクの方は、右半分と左半分でそれぞれ「顔」が異なっており、ゆるキャラみたいにデフォルメされた"泣いた男性"で、左半分が"笑った女性"の「半顔」を繋ぎ合わせたようなデザインとなっている。一方、対となるようにミシェールの方は、右半分が"怒った男性"で左半分が"微笑む女性"。
……いや、追われる身だし? ハイリターンを得るためにわざわざ敵地に乗り込ませるようなもんだから、顔を隠す物も必要かと思ってねぇ。
「こんなものいただかなくても、【精神】魔法で大抵の隠蔽工作はできてしまうんですがね」
まぁ、ルクよりもミシェールが気に入ったようで、ルクも「着けない」とは言えなくなったようだが。
「まぁ、俺からの心配りと思ってくれ」
二人の復讐対象の一人にして、呪詛をかけた直接の怨敵たる"銀衣仮面"の男。
それを忘れないようにするための、臥すべき薪であり、嘗めるべき胆という意味も込めて贈ってやっている。
あと、【人界】から着てきたままの礼服の類については、だいぶ補強したり手直ししたりしている。関所街へ着いたら、服飾店を回ってさらに調整はするつもりであるようだ。ミシェールからあれこれと"買う物リスト"を渡されているルク……もはや完全に尻に敷かれているな。
だが、まぁそうだよなぁ、今後は「子供服」もたくさん必要そうだからなぁ。
「オーマ様、今失礼なこと考えてませんか?」
「いいや、天地神明に誓って、これっぽっちも」
「……全く」
『きゅ、僕もお面さん欲しいなぁ、みんなでお面ごっこだね!』
<装備:オーマ>
武器:漂着の謎金属槍
頭部:魔法工作員のフード付き外套 ← New!!!
上半身:魔法工作員の上着 ← New!!!
上半身:魔法工作員の軽鎖帷子 ← New!!!
上半身:ボアファント毛皮製コート ← New!!!
背中:魔法工作員のフード付き外套 ← New!!!
両腕:魔法工作員の上着 ← New!!!
両手:魔法工作員の手甲 ← New!!!
腰:ボアファント毛皮製コート ← New!!!
両脚:魔法工作員のズボン ← New!!!
両脚:魔法工作員の膝当て ← New!!!
両脚:ボアファント毛皮製コート ← New!!!
両足:魔法工作員のブーツ ← New!!!
まぁ、大体ル・ベリと似たような感じだ。
……野人生活ともおさらば、文明度が上がったことは素直に喜ばしい――後回しでも一向に構わなかったんだがな、良い機会だ。
ただ、これらも別に何か特別な『付呪』効果があった代物というわけではなく。
様子を見ながらだが、関所街へ行って「より良い」品物が手に入るようならば、そこは深くこだわらずに随時着替えていこうとも思っているところ。
将来的には、俺の眷属が生産した素材なんかを加工したり、オーダーメイドで強力な効果を持った装備を整えていきたいとも思っているところだが、今はこんなところだろうか。




