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最強吸血鬼である男子高校生と最凶ヴァンパイアハンターである女子高校生が出会ったら  作者: 田丸 彬禰


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12/12

人外協定

吸血鬼の一族。


同族はもちろん、他の種族からもその認識されている綺羅であるが、肩書上はヴァンパイアハンターであることには変わりがない。

そして、彼女もそのつもり、少なくてもそう振舞っている。

当然、ヴァンパイアハンター協会との連絡は怠っていない。


「日本における吸血鬼組織に潜り込むことに成功した。ただし、自分の身分に気づかれるわけにはいかないので、連絡員との接触や援助は遠慮する」


その際にこう注意をつけ加えていた。

もちろん、自身の立場を悟られないということが第一であったのだが、この学校を取り巻く状況は並みのヴァンパイアハンターでは手に負えるはずがなく、近づけば彼らに狩られるだけ。

つまり、仲間を人外の者たちの餌にしないという意味もある。

だが、協会はその言葉を無視し、彼女を監視する者たちを送り込む。

旅行者を装って。


ただし、上位のハンターは綺羅に面が割れているため、新人のハンターを選抜する。

そして、監視を始めるわけなのだが、彼らもヴァンパイアハンターである以上、吸血鬼の血を手に入れている者。

当然、人狼をはじめとした人外の者たちの標的となるわけなのだが、佳和羅の言葉どおり彼らヴァンパイアハンターは吸血鬼以外の人外の者を見つける能力はない。

綺羅の通う高校に近づいてほどなく狩られる。

まさに綺羅の予想通り。


むろん、これには綺羅は無関係であるし、佳和羅たち吸血鬼たちも関与していない。

だが、協会の幹部たちはそう思わなかった。


綺羅は吸血鬼側についた。


裏切り。

そして、そうなれば報復は必須。


「裏切り者は始末せねばならない」


それが協会の決定だった。


裏切り者には制裁を加える。


それはどの世界においてもおこなわれていること。

特に武力を持った者たちにとっては。

だから、ヴァンパイアハンター協会が裏切り者である久家月綺羅に対し刺客を送り込むのは当然のことではある。

だが、綺羅のいる場所は正邪ふたつの勢力だけがいるような単純な世界ではなかった。

単純な正邪だけでは示すことができない、お互いに利用し了される関係が複雑に絡み合う世界。

そして、刺客として送り込まれたヴァンパイアハンターたちも狩る側にいるのと同時に狩られる側でもあることを自覚しなければならない。

だが、「すべてを自分の都合のいいように解釈する者」はどの時代、そして、どの勢力にもいる。


自分たちはヴァンパイアハンター。

すなわち、吸血鬼と対峙する者。

そうであれば攻撃してくるのは吸血鬼のみであり、吸血鬼と敵対する勢力からは攻撃を受けない。


勝手にそう思い込み、死地へ踏み込む。


そして、背後からやってきた細い剣に胸を貫かれ、真っ赤な血をあたりにまき散らしながらこう叫ぶ。


「あ、あり得ない。我々はヴァンパイアハンター。貴様たち妖狐と敵対している吸血鬼を倒す者。つまり、仲間。それなのに、なぜその我々を攻撃するのだ?」

「仲間?」


男の身体から剣を抜き、そこについた血を舐めながら女は薄く笑う。


「私たちにとっての敵とは吸血鬼ではなく、同じように吸血鬼の血を欲する者。そもそも私たち九尾にとっておまえたちヴァンパイアハンターは吸血鬼の同類。つまり、狩りの対象」


「どこをどう間違ったら私たちがヴァンパイアハンターと仲間になるのでしょうか?」


「まあ、いいでしょう」


「吸血鬼の王の眷属は倒すのは難しい。ですが、ヴァンパイアハンターは御しやすい。格好の獲物です」


それは彼女たちのライバルである人狼や魔女も同じ。

争うようにやってくるヴァンパイアハンターを狩る。


そして、そのねじ曲がった状況はさらに進化をし、とんでもない共闘体制へと発展していく。


吸血鬼の血。


これは人外の種族にとっては人間における金やダイヤモンドのような存在。


むろん、それなしでも生きてはいける。

だが、手に入れられるものなら手に入れたい。


いや。

吸血鬼の血によって自身の寿命が延びる、さらに能力も向上するのだからそれ以上の存在ともいえる。


ただし、それを手に入れるためには自身の命を対価として戦わなければならない。

しかも、六条野可和羅の配下の者に手を出せば、その成功の成否にかかわらず過激な報復が待っている。

本人はもとより一族が滅びの道に進んだ者もいる。


だが……。


容易に狩ることができ、さらに佳和羅に関係のないと思われる吸血鬼が現れる。


言うまでもない。

裏切り者である久家月綺羅を狩るためにやってきたヴァンパイアハンターたちである。

彼らは吸血鬼狩りに特化しているため、吸血鬼以外の人外の者を認識できない。

いや。

殺意やその行動によって察知できるが、戦いにおいてはそれでは遅い。

当然のように狩られる。

むろん、やってきたヴァンパイアハンターは駆け出しの者もいたが、綺羅を狩る以上、多くは相応の力を持つ者。

だが、先手を取られては分が悪い。

加えて、佳和羅に集まる人外の者は皆能力が高い。


こんな旨味のある獲物は失いたくはない。


本来であれば独占したいところなのだが、人外同士の殺し合いはしたくない。

そこでそれぞれの長が陽の当たらない場所に集まり、ある協定が結ばれる。

後に人外協定と呼ばれるものである。


巷に溢れる物語では、このようなことは起こらない。

だが、人外の者も知性はある。

しかも、彼我の実力がそう変わらないことも知っている。

そうなれば、この程度のことは起こり得ることなのだ。


そして、その協定で決まった概要が次の通りである。


それぞれの種族に吸血鬼狩りができる日を振り分け、他の種族は自身に与えられた日以外で吸血鬼狩りをおこなってはならない。

違反した場合、まず、違反者をその種族が処刑し、さらに自身の狩り日を相手に提供する。

それに違反した場合、全種族が共同して違反種族を滅ぼす。

また、協定に参加していない種族についても共同で対処する。


ちなみに、参加した人外は人狼と妖狐、猿人。

そこに魔女団体も加わっている。

むろん魔女は人外ではないのだが、この協定の共通の標的にならぬよう強引に入り込んでいた。


「ここで私からひとつ提案があります」


そこで発言を求めたのは如月夜子だった。


「魔女よ。何が言いたい?」


人狼の代表として会議参加していた男がその言葉によって発言の機会を与えると夜子は薄く笑う。


「吸血鬼の主であるあの男にも話を通しておくべきでしょう」

「なぜ?」

「なぜ?言うまでもない。彼らの天敵であるヴァンパイアハンターを狩ってやるのに吸血鬼に背中から斬りつけられたらたまったものではないからです」

「言いたいことはわかるが……」

「大丈夫。あなたたちと違い、私も、隣にいる紫橋薫も吸血鬼の長とは話ができる程度のパイプはある。あの男との取り決めは全種族に話す。それとも、個別に話をしますか?それなら、私たちは私たちの安全を確保したうえで、こう話をします。そのうち、ヴァンパイアハンターと人狼をまとめて討てる機会がきますと。あの男がそれを聞けば、喜んで実行することでしょう」


「どうですか?」

「そのような馬鹿馬鹿しい事態は我々としても避けたいな」

「妖狐は」

「同じですね。それについてはお任せしましょう」


「では、承りました」


そして……。


「いいだろう」


翌日、その話を持ち掛けてきた如月夜子と紫橋薫に佳和羅はそう答える。


「ただし……」


「私はおまえたち魔女を信じていない。事実を捻じ曲げられたら困る。私自身が他の種族に話をする」


「日時と場所は追って伝えるので他の種族へ伝えてもらおうか」」


日本における最高級ホテルのひとつ。

むろん、それは料金を示しているのではない。

歴史と伝統。

その場所を選んだ者にとって、それこそが重要なのだ。


「見た目などいくらでもとりつくろえる。だが、そのホテルからにじみ出る本質は隠せない」


それがその会を主催した六条野可和羅の言葉となる。


そして、招かれた者たちもそれにふさわしい姿で現れる。

むろん佳和羅も。


「さて、話は如月夜子と紫橋薫から聞いている」


「そして、その申し出について答える」


「客人たちの扱いについてはそちらの望むままに。ただし、どのような事情があろうが、そこに私の配下が巻き込まれたときには相応の対応を取らせてもらう」


「そして、その中にこの者も加える。久家月綺羅。よろしいな」




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