いじめに負けないで
「……足、震えてますよ」
「わっ……!」
「ごめんなさい。驚かせてしまって」
「……」
「とりあえず、降りよう。手、貸すから」
「……あ、ありがとうございます」
ゆっくりと橋から降りる。
――――
「……なんで、あんなところに?」
「……人生が、辛くて」
「……」
導子が優しく聞く。
「よかったら、理由を聞いてもいいですか?」
「……」
少し迷ってから。
「……いじめられてて」
「……そっか」
「それは、きついな」
佐藤が低く言う。
「……親には?」
「……いません」
「……あ、悪い」
「大丈夫です。慣れてるので」
「……」
少し空気が重くなる。
「施設の人には?」
「……言ってないです」
「なんで?」
「……同じ施設の子たちが、学校にいて」
「……ああ」
「その子たちが、中心で……」
「……」
佐藤が顔をしかめる。
「タチ悪いな」
導子が続ける。
「施設の中では、どうですか?」
「……スタッフさんは優しいです」
「……友達は?」
「……います」
「よかった」
少しだけ、空気がやわらぐ。
「その子に相談したことは?」
「あります」
「……」
「でも、その子が注意してくれて……」
「……」
「余計にひどくなりました」
「……」
沈黙。
――――
「施設の大人には?」
「何回か言いました」
「……」
「でも、そのあと、にらまれて……」
「……」
「だから、もう言えなくて」
「……そっか」
導子が静かにうなずく。
「……でも」
少女がぽつりと言う。
「施設では優しくしてもらってるし……」
「……」
「だから、まだ……マシなのかなって」
「……」
佐藤が少しだけ視線を落とす。
「……よく頑張ってるな」
「……え?」
「普通、無理だろ」
「……」
「そんな中で学校行ってるだけで、十分すげぇよ」
「……」
少女の目が少し揺れる。
――――
導子がゆっくり言う。
「学校、無理に行き続けなくてもいいと思います」
「……」
「例えば、保健室登校とか」
「あ……」
「そういう方法もあります」
「……」
「全部一人で抱えなくていいですよ」
「……」
佐藤も続ける。
「転校とかも、選択肢ではあるけどな」
「……」
「無理なら、無理でいい」
「……」
「逃げるのもアリだ」
「……」
少女は少し考える。
「……先生に、相談してみます」
「うん」
「それがいいと思います」
――――
「……ありがとう、ございます」
小さく頭を下げる。
「……気をつけて帰れよ」
「はい」
少女はゆっくり歩き出す。
――――
「……」
「……こういうの、きついな」
佐藤がぼそっと言う。
「……そうですね」
導子も静かに答える。




