さようなら、人生
ビルの屋上
やっと今日で、人生が終わりだ。
――さよな……
「こんにちは」
「わあっ!?」
突然声をかけられ、思わず振り返る。
「驚かせてしまい申し訳ございません。
私は死神の谷死と申します」
「え……あの、私、まだ飛んでないのに死んだんですか?」
「いえ、あなたはまだ死んでいません」
「じゃあ、なんであなたが見えるんですか?」
「あなたは“選ばれた”のです」
「……何に?」
「この人間世界で、“死神”になることに」
「死神!?」
「簡単に言うと、自ら命を絶とうとする人を止める仕事です」
「嫌だよ。それ、死神の仕事じゃないじゃん」
「ご安心ください。本来の死神の仕事もきちんと存在しますので」
「いや、私は楽したいの」
「ですが、このまま命を落とせば――楽にはなりませんよ」
「なんで……?今まで人助けとか、いっぱいしてきたのに」
「それとこれとは別です。命を粗末にする行為は、許されません」
「でも、自ら命を絶つ人って多いでしょ?」
「はい。だからこそ今、地獄は人で溢れかえっています。
少しでもそれを減らすために、我々が止めているのです」
「でも人手足りてないんでしょ?」
「その通りです。ですから、“選ばれた人”に協力してもらっています」
「へぇ……どうやって選ぶの?」
「自ら命を絶とうとした人の中から、抽選で」
「雑だなぁ……」
ピコン。
「申し訳ありません。私は次の任務へ。
このマニュアルを読んでください」
「え、ちょっ――」
谷死は消えた。




