第四話 旅立ちは高級パン
お疲れ様です。
私のいる会社。
ヤバイです。
何がって?
つ ぶ れ そ う
「節約ってなんじゃ?」
「…今まで通り、食べて遊ぶことが出来なくなるってことだよ。」
「ーーーーーーーーっ。」
声になら無い叫びをあげながら
口をパクパクさせつつ、驚きを隠せていない。
「あしたば。」
「なに?」
「…働こう?」
「ーーーーーっ。」
子供に働けと言われるとは…
だが…
今まで消化していなかった有給休暇のようなものとして休んでいたい。
…叶わぬ願望だ。
「金を得るために仕事を見に行ったのだろ?」
「そうだけど…」
「だけど…?」
「なかった(働きたい内容が)」
「そうなのか…」
素直にしゅんとなるマオに申し訳なくなってくる。
マオはこの世界の文字はわからないが、言葉は理解している。
だからこそ、誤魔化せているわけだが…
「あの…」
急に声をかけられる。
「なんでしょうか?」
「この文字を読めますか?」
「“配達をお願いしたい“…?これが何か?」
「なるほど、失礼致しました。私、この国で商人をしております。パパガヤと申します。」
「あ、明日葉です」
「早速ですが、明日葉さん。私のお仕事受けてみませんか?」
カフェでパパガヤと向かい合って座る。
マオは変わらずパンを頬張りながらカフェのミルクを飲む。
「で、何故見ず知らずの俺に?」
「明日葉さん、いい育ちの出でしょ?求人の貼り紙見て読めていた様でしたし、私が見せた紙の外語文字も正確に読めておりました。それから、お嬢さんの持っているパン屋の袋、高級なパンをそんなに」
「あしたば!ミルクと食べるとこれもっと旨いぞ!!」
あんパンとミルクとの食べ合わせに感動するマオ。
軽く会釈しながら頭を撫でる。
「なるほど、それで俺を…」
「えぇ、この国では識字率も低い上に外語文字を読める方は本当に少ないのでとても貴重です。」
「ふむ、ところで何の仕事なんだ?」
文字を読める貴重性で仕事を頼んでくるのだ。きっと弾んでくれるに違いない。
「この国の商人ギルドと他国ギルドとの調整と配達です。明日葉さんもこの国の人じゃないんでしょ?雰囲気から違いますし」
「配達はわかるけど調整?」
「主に鍛冶屋ギルドや冒険者ギルドへの依頼と仲卸ですよ。」
「ギルド…」
(これだよ、これ。異世界といったら冒険!そしてギルド!)
「きっと報酬としてはそれなりに用意出来ると思います。ただし、他国へ行き来しますのでそれなりに危険が伴います。なので街道を進むにしても、魔物から身を守る為にも冒険者か護衛を雇う事が前提となってしまいますので、初期費用が少々かかってしまいます。勿論、その初期費用を補って余るだけの報酬は出ますがね。」
「悪くはないな…」
今ならまだ7万程残っているし、
願ってもない依頼だ。
「最初は馬車はレンタルでいいと思いますので、1日馬付きで2600Gかな、冒険者がCランク相当1人で1500G、4人パーティーで呼ぶから、食料も多めに見積もって1日1万G。明後日にでも出て行けば3日でオロラントまで着くだろうけど見積もりとしては少なく出せないな。」
ぶつぶつとパパガヤは呟き、紙にメモをする。
こんな感じで如何でしょう?
ササッと紙に書いた内容は、
~~~~~~~~~~~~~~~~~
所要費(往復)7万(馬車護衛食料込み)、
仕事内容
オロラントへの物資納品
オロラント冒険者ギルド及び
鍛冶屋ギルドの不足物のリスト化
オロラントからの物資搬入
報酬
リストにより増減、10万~20万見込み
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「此方で如何でしょう?」
確かに破格だ。
「わかった、引き受けよう。」
握手を交わし、
契約書を書き、血判を押した。
依頼内容の仕事はするが、
護衛はいらない。下手な護衛よりもマオの方が断然強い。
俺はマオを見てウインクをする。
マオは理解していないが真似をしようと瞬きで返す。
なかなか愛いやつだ。
携行食と水を買い込み、
パパガヤの口利きで馬車を借りた。
街道をずっと進む形にはなるが、
この世界で初の冒険だ
期待と焦燥に胸が膨らむ。
「準備はOK」
荷物を確認し、パパガヤから渡された木製の商人手形を持ち、門から街道に出た。
御者台から遠くの景色を望む。
目的地はオロラント。
遠くの山を指を差し、
「俺の冒険はここから始まるのだ!」
「のじゃ!」
忘れられては困るとばかりにマオもでしゃばる。
い い と こ だ っ た の に … !!
今回は短めでお送りしました。
飲食の会社なのですが、
短縮営業のくせ、拘束は長くなります
とりあえず、今のウチに積みゲー消化しますわ