第二話 馴れ初めはビンタ一発
夢、見ました。
想像以上に早かった。
一話目投稿した次の日、起きて思った。
「みてしまった。途中までだけど。」
幸い、その日は遅番でした。
なので私はまた眠り、続きをみる事にしたのです。
「見れてしまった」
その日二度目の起きがけ、私は思いました。
また寝ればもう少し続きをみれるのではないか?
しかし、時間は差し迫り。
出発まで残り2時間弱というところ。
…私は、寝ました。
「へぇ。時代は中世みたいなかんじか。」
幸い言葉は通じるようで、
道行く通行人に換金屋を聞いて回り、
無事大金を手にいれることに成功していた。
スキル:言語理解 で書いてある変な文字は自然と読めるし、
会話もよくわからないが成立している。
とりあえず大通りに面した少し大きめの宿屋に泊まる事にした。
(また明日から今後の方針について固めよう)
ベッドの上に横になり、考えを巡らせているといつの間にか意識が沈んでいった。
「やっべ。遅刻!」
バッと飛び起きるが、どうも見知らぬ部屋の内装に一瞬頭が硬直する。
(そっかー、俺異世界転移したからもう会社いかなくていいんだ。)
再びベッドの上に転がると自然と笑いが込み上げてくる。
(何の取り柄もなかった俺が…勇者。……ん?)
何やら騒がしい。窓の外からだ。
「ハッハッハ。おじょーちゃん。そんなでやってたら俺の商売あがったりだよ、そんなに食いたきゃ親御さん連れてきな。」
筋肉質のおじさんは笑いながら手をシッシと振る。
「じゃーから!わしは魔王じゃて、言っておろう。親御などおらんわ!!」
「ハッハッハ。お小遣い握りしめて来てもいいんだからな」
「あーーもーーー!魔法さえ使えれば!魔法さえ使えれば!!」
難癖をつけ地団駄を踏みながら
屋台のおじさんから肉の串をせびる少女には見覚えがあった。
「あれ、昨日の魔王じゃね?」
(おかしいな。魔王は俺のインフィニットサクリファイスで倒したはずなのに。)
「いい匂いがするんじゃ!その肉をよこせーぃ!!」
「ハッハッハ!褒めてくれてありがとよ!だが一本200Gだ!これはまけられねぇ!」
様子を見ていれば魔法が使えない上におじさんの変わらぬさっぱりとした対応にイライラし始めている。
もしも間違いで魔法が発動したら?
この活気のあるこの通りは阿鼻叫喚、地獄絵図に早変わりである。
(ダメだ!危なっかしくて見てられない。)
1000G屋台の台に置き、
「すまない、俺の従姉妹なんです。串をとりあえず5本下さい。」
「まいど!」
「え、ちょ」
無理やり腕を引き屋台から引き剥がし、
路地に魔王を連れ込む。
「こんな所にわしを連れ込んで何のつもりじゃ?
MPは切れててもお主位簡単にひねり…」
目線は手に持つ串に釘付けだ。
「ほら」
串を一本渡すと
「わしにくれるのか!
なんじゃ、お主は物わかりがいいやつじゃな。」
綺麗な手のひら返し
「ぅんまぁ~。これ程の美味とは。ハラの虫を誘うあの匂いの通りじゃ。」
「あそこで何をしていたんだ?」
「あやつら、わしは魔王じゃと言うてるに、全く聞き入れもせんで。わしを迷子か何かと勘違いしておるようでの。…考えたらハラがたってきたわ!ぶっ殺してくる!」
そういうとすっくと立ち上がりズカズカと大通りに向かおうとする。
すかさず腕を掴み、
「あ、こらこら」
口に無理矢理肉串を突っ込む。
「ふぐぅ!」
「そんなことしたらこれがもう食えなくなるぞ。」
「ぅま、うま、うま。むーん……それは困るな。」
「だろ?だから平和的に金を払えばいいんだよ、無駄に人を殺すとこういうものも食えなくなるからな。」
「ふむ、確かにな。お主は人間にしては頭がいいな。確かにもう勇者は殺したし、ゆっくりと世界征服をしようとするか。」
ギクリ。
「…ぬし?急に固まってどうしたんじゃ。」
「い、いや。ゆゆゆ勇者を殺したんですか?」
「そうじゃ、昨日呼び出されて間もない勇者を一発で掃除してやったわ。ぬ?ぬし、何処かで見たことが…」
「い、いいいいやいやいや。初めてお会いしましたよ。いやいやお見それいたしました、まさか魔王様だとは露知らず…」
「ふっふーん。そうじゃ?わしは魔王じゃ。」
ない胸を張り得意気にする魔王。
「噂の魔王様にお会いできて光栄ですとも」
とにかく話題をずらし、持ち上げる。
「ぬしもワルよのう?して、どんな噂なのじゃ?」
(何がワルなんだか、王様の装備品を剥いだ事か?)
「え、えーと、とにかくお強い!とても美しい!お強い!えー、すごく強い!!」
「ふふん、それ、わしじゃ。」
ドヤァと言わんばかりのこの表情。
「やっぱりーははー」
(どうにかしてさっさとこいつとの縁を切らなければ…)
「ぬし、名は何と言う?」
「明日葉豊、といいます」
「あし、たばー?みのりか、変な名前だな。」
「あしたば、で結構ですよ。魔王様のお名前はなんという名前なのですか?さぞ素晴らしい名前なのでしょう」
そういうと急に黙り、俯く。
(なんだ?さっさとコイツどっか行ってくんねーかな)
「あしたば。わしは魔王じゃ。」
「えぇ」
「魔王になる存在なのじゃ。」
「?」
「わしも…昨日殺した勇者と同じ……昨日生まれたばかりなのじゃ。でも勇者を殺さなければならないのは無意識にわかっておる。それに勇者は死ねばまた少ししたら新しい勇者が召喚される。常に魔王は勇者の影に怯えて過ごさねばならんのだ。だから殺す。」
「!?」
「名前はまだ無いんじゃ。魔王になるべく生み出されたのに、名前の1つもない。わしは…」
「魔王様…」
「あしたば。わしは魔王になるべく生み出された魔王の卵じゃ。名は…ない」
寂しい笑顔を見せる魔王
「貴女の名前は、マオ。」
「?」
「魔王の卵なんかじゃありません。貴女はこれから魔王のマオ。いかがですか?」
うるっとする魔王
「変な名じゃな。」
「僕程でもないですよ」
「そうじゃな、ぬしの名前よりはよい。よい、気に入った。」
見た目はどこからどう見ても幼い少女。
この小さな身体にどんな宿命を背負わされているのだろうか。
って俺もか。
もしこの少女に自分が勇者だとバレたらどうなるんだろう?
やはり殺されなければならないのだろうか。
ゾゾっとする。
というか、早く魔王と離れて接点を断たねば。
すっくと立ち上がり、
「では、僕はこれで。」と別れようとする
が、
袖の裾を捕まれる。
「ぬし、何処に行くんじゃ?」
潤んだ瞳、捨てられた子犬のように…震える手。
一人この世界に産み落とされて、寂しいのだろうか。
だが、知らん。
一緒に行動してればいつか俺が勇者だとバレて殺されかねない。
勢いよく、手を振り払い逃げ出した。
追ってくる気配があったものの、
「そうか、わしが魔王だから…怖いのか」
と聞こえてから追ってくる気配も足音も聞こえなくなった。
闇雲に走り、知らぬ景色に身を包む。
(なんだってこんな後味悪いんだ、畜生!)
魔王と勇者、普通に考えて一緒にいちゃいけない。
肩で息を吐き、呼吸を整える。
咄嗟に自分でも今自分が何処にいるのかわからなくなっていた。
明らかに治安が悪い。
スラムというに相応しい。
回りをキョロキョロと見回しながら歩いていると、前方にいかにもワルそうな顔した
スキンヘッドが行く道を塞いでいる。
目線を合わせないように、早足で歩いて行くが、スキンヘッドは急に立ち上がり、ぶつかった。
「おぉう、いってぇ。」
そういって肩を払う大男。
ぶつかった衝撃で明日葉は軽く2m程吹っ飛ばされていた。
「う、く。」
いつの間にか周りを数人の男に囲まれていた。
(ダメだ、きっと逃げられない。)
ただでさえ少ないHP、屈強そうな男。
ダメだ詰んだ。
「お…犯されりゅー!エロ同人のようにぃ!!」
「あ゛?」
(渾身のギャグも通じない。)
「金目のもん置いてけよ」
折角王の金品を売って手にいれた金だが、
命には変えられない。
しかし、金を全部渡せば今後宿にも泊まれないし、食料も買えない。それは厳しい。
「これでいいか?」
手持ち15万Gの内、8万Gを地面に置く。
「ウッヒョウ、バーカ持ってんじゃねぇか」
「これで全財産なんだ、もう持ってない、勘弁してくれ。」
スキンヘッドの男は明日葉の頭をポンポンと叩き笑顔で
「嘘ついてんじゃねぇぞ?クソが!」
地面に頭を叩きつけられる。
「がっ!?」
「俺のスキルは相手の所持金がわかる。まだ、半分。もってんだろ?」
!?
「なんだ?嘘ついてたのか」
「それは…よくねぇよな」
「嘘つきにはお仕置きが必要だよな?」
そういうと明日葉は滅茶苦茶に殴られる。
意識を失った
気がつけば、
魔王の膝枕。
え。
「大丈夫か?」
「え?」
「よわっちいくせに、苛められてんじゃねーよ。」
頬を撫でる指は冷たく、それがここちよい。
「ま…魔王…」
「違うぞ、わしは魔王。だけどマオって名前がある」
「…変な…名前ですね」
「あしたばほどじゃないけどね」
優しくかけてくれる言葉が重たく心にのしかかる
「ありがとう、ございます。…僕なんかを……」
「…ホントだよ。もう逃がさぬ。…ヌシがいなくなって一刻程しか経っておらぬが、とても悲しかった。」
「ごめんなさい」
「もう、わしを…独りにしないでくれ」
肩を震わせ目に涙を沢山貯める魔王に
威厳も何もあったもんじゃない。
そこに居るのは身寄りのないただ一人の少女だった。
(……敵わないな。)
「わかりました、もう離れません。」
向き合い彼女の小さい手を取り握りしめる。
その瞬間、視界は白黒に暗転した。
バチンという音が遅れて聴こえてくる。
否、先だったか?
とにかく頬を叩かれたのだ。
「約束じゃからな!」
堪えた涙は既に溢れていたが、笑顔をつくり微笑みかけてくる。
疑問は残るが返事はYESだった
「はい…」
手を繋ぎ立ち上がると、無惨にも散っていた人であっただろう憎き亡骸を発見。
「…。」
「どうした?」
「さっき盗られたもんを取り返したところです。」
そう言いながら先程盗られた15万Gに加え、短剣と使えそうな物を頂戴していく。
「早くゆくぞ。」
手を再び差し伸べられ、街の方へ向けて歩く
時折手を強く握り感触を確かめつつ、
此方を向き無邪気な笑顔を見せてくる。
(懐かれてしまったもんだ)
魔王といるのだ、
きっとこれから気にしなければならない事がもっと増えていくだろう。
何 故 叩 か れ た ん だ …
疑問は残る。
これは後日談ですが、
三度寝を強行した私は、夢の続きを案の定みることができました。
【【【何故そんなに何度も寝直すのか?】】】
それは僕が眠ってみる夢は大体前回のおさらいをしつつみる形に依るところが大きいと思います。
それにより、狙った夢をみることは割とよく出来てしまうのですが、ストーリーとして進む速度はとても遅いです。
展開がそれなりに早いのは最初の一話だけ。
だから私は
すみません、眠かったんです。ハイ
遅刻してスミマセンデシタ!!