第十話 衝撃は膝へ
そういえば、
モイモイス王国の王都のゴロツキの代表格にもスキンヘッド。
今回のオロラントの窃盗団の頭目もスキンヘッド。
……スキンヘッドになんか恨みでもあんのかぁぁぁ!!
って叫びたくなります。
なんで?
スキンヘッドは悪ではないのですが、私の夢には悪役で出てくることが多いです。
「くっそ!誰もいないか」
柵を乗り越えて商業ギルドへ乗り込み、
従業員が誰もいないことを確認する。
あわよくば、助けを求めつつ、マオと安全圏で見守るつもりだったのだが……
「明日葉」
しかし、門は閉めきられ博物館へ輸送する筈の馬車はあるのに人の動きが見られない
「明日葉…」
本当ならまだ詰め込みを行いつつ、明朝馬車を動かす筈なのに、
御者もいない。建物の中だろうか?
「いいかげんにせぇよ」
「いった!」
耳を引っ張られる。
「ど、どうしたマオ。」
「明日葉、最近ワシの扱い酷くないか?よく無視されるし」
無視なんて……してないと思うけど。
「それはともかくなんで、こんなとこにおるんじゃ。闘うんじゃなかったのか」
「マオ、お前は強い。俺は弱い。」
「う、うむ。」
「アブブルリオとやらと戦い始めたらマオがそっちにかかりきりになって、もし仲間がいたらそれに対処しなきゃいけないのはその間俺一人になるだろ?」
「うむ」
「そうなったら……俺は死ぬ」
かっこ悪いかもしれないが、
自信を持って言える。
王都のゴロツキ相手にアレなのだ。
勝てる訳がない。
「なるほど……」
簡単に納得されてしまうのも少しモヤモヤするが話が早くて助かる。
「だから、アブブルリオと戦う前に他のやつらを全員倒すか、拘束させてもらう。だから縄も持ってきた。」
「あいわかった!」
そう、俺たちが目指すのは戦士のように真っ向から勝負を行うのではない。
アサシンのように不意打ちを行いつつ、自分達の勝率を少しでも上げれるようにすることだ。
内部はここ最近何度も足を運んでいるため、エントランス、ホールは熟知している。
「うぉっ!ご…………」
背後から回り込み声を出させないように布を口に押し込む。
マオがガッチリと足を掴み、倒した所に用意した縄で手足を縛っていく。
そしてそれは順調にいっているようにみえた
「あ。」
ガシャーン。
瀬戸物が割れる音。
縛った窃盗団の一味を引きずり、
案内所のカウンター下にまとめてる最中の出来事だった。
マオのお尻が通路に置いてあった壺に当たったようで……
「なんだ!?割ったのは誰だ!」
「取り分なしかなー?」
「まず金額と現物の確認してからってボス言ってたろー?」
「誰だよ、ボケカスがぁ」
ぞろぞろと窃盗団の一味が奥の部屋から出てくる。
「明日葉、すまぬ」
「何人いるんだー!」
走り出し、もごもご言っている窃盗団がいる案内所に隠れる。
が、マオがいない。
やばい!いや、平気か?
「どこ行った?ぶっ殺す」
影になって覗き込まなきゃわからない位置ではあるが、
レベル差があればワンパンで倒される事を危惧し耳を塞いで踞る。
「静かにしてくれ、静かにせんといかんのじゃ」
「なんだこのチビ、げぎゃー!」
「捕まえろ!」
「なんだこいつ!」
「ぐぅ」
「ひ、ひざがぁぁぁぁぁ!」
「マジか」
「何なんだよ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
耳を塞いで踞ってから2.3分もかからぬ内にカウンターの上からマオがひょっこりと顔をだす。
「明日葉!」
しかし耳を塞いで踞っており、聞こえない。
マオが肩を揺すれば動揺して明日葉は後退る。
「なんだ、マオか。」
「あしたば、おわったぞ」
そう言われ、ホールを見渡せば手足は縛られてはいないものの膝を抱えて7人の人間が転がっていた。
「これはどういう状況なんだ?」
呻く窃盗団団員を見渡す。
「全員の膝小僧を叩いてまわったのじゃ」
「叩く……」
「肘とか膝とか、ぶつけるとじーんとするじゃろ?」
呻き倒れている団員の膝を触ってみるが
「いだい、いだいいだい!!なんたんだお前らは!!」
あまりの過剰な反応に手を引っ込める
「ご、ごめんよ」
「静かにしとくれ、というたじゃろ。」
マオが明日葉に膝を触られ騒いだ団員の顔を叩く。
見るからに屈強そうな窃盗団団員はその一撃で失神する。
「え。」
「だって敵じゃろ?」
「ま、まぁそうだけど。」
そういえばコイツは魔族で魔王候補だった。
ちょくちょく忘れてしまうが、
自分に関係のない者には容赦をしない。
マオのステータスからみたら、
俺の一桁で統一されたステータスは
二足歩行し饒舌に喋る赤子のようなものなのかもしれない。
……それはそれで気持ち悪いが。
意識のある奴の膝を触るとまたマオに強制的に眠らされそうなので失神した団員の膝を触って確認する。
「あー。」
「どうした?あしたば。」
「これ、割れてるねぇ」
「?」
不思議そうに顔を傾げるマオに悪意は感じられない。
人間の膝には本来、
骨のクッションになる半月板というお皿のような軟骨があるのだが、粒々とした感触と股から膝にかけての骨が触れてわかる。
スポーツ選手でいうところの選手生命を絶たれた状態。
立ったり走ったりすることは出来なくもないが動かそうとするだけでとてつもない激痛が走る筈だ。
「……全員?」
「さっき出てきたやつは全員!」
誇らしげに、胸を張るマオ。
「よ、よくやったぞ。マオ」
頭を撫でてやると、
もっとやるぞー!と言わんばかりに気合いが入ったようだ。
そこからは
膝クラッシャーマオが幾多の膝を出会い頭に叩くという探索ゲームが始まった。
「たのもー」
「なんだお前は!」
「ぐぁぁぁぁ、膝がぁぁあ……」
こんなやりとりが何度も続く。
「なんだか可哀想なかんじがしてきた。」
膝を抱えて踞る大男をツンツンとつつきつつもマオは意気揚々と扉を開けては出てくる男の膝を叩いていく。
奥の部屋、
備品倉庫の扉を開けた時だった。
「たのもー」
「あぁ?なんだお前は!」
「……マオちゃん!?」
オリビアさんの声がした。
「オリビアさん!!」
明日葉も走ってマオの入っていった扉を抜ける。
「なんだ、このガキは!」
スキンヘッドの大男は縛られたオリビアを弄びながら部屋の入り口を睨む。
「……っ、オリビアさんを離せ!!」
「明日葉、さん?」
「ケッ。んだよ、邪魔しやがって。」
スキンヘッドは立ち上がり、オリビアを突き放す。
「キャッ」
「オリビアさん!」
明日葉とマオの奥、
踞っている手下を確認すると
スキンヘッドの大男は口笛を吹く。
すると突風の様な風が吹き、部屋を荒らす。
「呼んだか?」
突風の中心あたりに、
不機嫌そうな少年が明日葉の後ろから姿を現す。
その少年はマオを見るやいやらしく笑った
「お前は……フハハハハ!
お前から会いに来てくれるとはな。
……会いたかったぞ!マオ!」
短いですが切りました。
本当はキリよく10話目で一段落終わらせたかったです。。。
まぁ、夢と思い付きで書いてるので無理かなぁ。