死体消失 勇者VS魔王 ー12ー
「箒はさっきので折れたみたいだし……素手で殴るのは嫌だし……ダメ元でやってみるか。えっと……名前は……エルシオンね。聖剣エルシオンよ、我が元に」
勇者エルナが使用したとされる聖剣エルシオン。主が呼べば、世界を越えて手元に来るのはアニメでもやっていたのだが、エリスの呼び掛けに何の反応を見せない。
「やっぱり駄目か……呼び出せないように封印したわね。差し押さえられたのが悪いんだけど……それも馬鹿親のせいじゃない」
聖剣がエリスを選ばなかったというわけではない。ただ、親の借金で聖剣を聖教会に奪われてしまい、封印されてしまったのだ。それだけでなく、親はどこかに雲隠れして、エリスが返すはめになったのだ。
「取りあえず……武器を奪う事から始めましょうか」
エリスを囲むのはゾンビ五体とスケルトン五体の計十体。ゾンビは人喰いであり、噛みつきなどをしてくる。スケルトンは剣を所持しており、狙うのはスケルトンが持つ剣。
行動目的がエリスの攻撃に設定されているのか、連携などなく、ひたすらエリスを追い掛け、街に向かう様子もない。
「骨なら汚れる事もない……し……ね。これでゾンビ達も」
エリスは飛び蹴りをすると、簡単にバラバラになり剣を奪う事が出来、その剣でゾンビの上半身と下半身を分断した。
「いやいやいや……気持ち悪いから」
ゾンビは上半身だけでエリスを追い掛けてくる。さらに体を補強するために他のゾンビやスケルトンの体を繋ぎ合わせるだけでなく、廃工場に落ちている鉄骨などを取り込み、強度を増していく。
「これって……倒す分魔力が減ると思ったけど、パワーアップしてない。持久戦とか嫌なんだけど」
エリスが攻撃を受ける事はないのだが、奪い取った剣は鉄骨を取り込んだ体によって斬る事が出来なくなっていた。残る手段としては時間の経過による魔力の低下しかなかったのだが、急に曲が流れ出した。
「この曲って……」
「呼べば……呼べば……現れる。店を……店を……放ってくる」
曲が流れてきただけでなく、歌声も聞こえてくる。エリスは何度もその声を聞いている。
「店長!何でここが分かったのよ」
店長は空からエリスがいる場所に着地した。エリスのピンチに駆けつけたのだ。しかし、エリスは感謝よりも先に、何故この場所が分かったのかを尋ねた。
「勿論、エプロンに盗聴機と発信機を……ちょっと待て。今の状況を考えてくれ」
エリスは店長の言葉に思わず頭を飛ばしそうになったが、思い止まった。
「もう!それなら、さっさと終わらせてよね。そのための準備はしてあるんでしょ」
エリスはそう言うが、店長は武器となる物を何も持って来てはいなかった。
「当然だ。今回は戦闘タイプにカスタマイズしたからな」
店長は武器を所持していなかったのは、体に内蔵されているからだった。それも斬撃、打撃が意味を成さないのであれば、それ以外の攻撃であり、魔法に似た攻撃をしなければならない。
店長の胸を開いた事でおっぱいミサイルでもやるのかとエリスは思ったが、灼熱の炎を放つ事でゾンビやスケルトンを燃やしていく。燃やす事で再生不可能にさせたのだ。




