勇者と王女の関係に、魔王巻き込まれるー14ー
「そんなの……皆さん!生き残りたいのであれば、あの者に援護を。ゴーレムまでの道を作るんです」
マキナの指示により、選手達はサイガの援護に回った。ゴーレムも立ち向かってくるサイガに標準を合わせるのだが、シールドの魔法だけでなく、スピード増加の魔法を選手達はサイガに施した。
「これは……こういうのは久しぶりだな。協力も悪くない」
サイガはマキナのマンゴーシュを拾い、ゴーレムに『九』と『十』の文字を削ろうとする。その文字に『石』を足せば『砕』になる。だが、ゴーレムの硬度が勝ち、マンゴーシュは砕けてしまった。その様子はマキナ達には見えていない。
「そうなるよな。アイシャなら硬度を高くするとは思っていたさ。俺しか倒せないように」
サイガはマンゴーシュが折れる事は予想していた。レイピアを選んだとしても同じ事。それならば何故折れると分かっている武器をサイガは手に取ったのか。
砕けたマンゴーシュの柄に魔方陣が描かれ、そこから黒い刃が出現する。サイガはマンゴーシュを媒体にして、魔法の刃を作り出したのだ。
その刃は魔法でありながらもゴーレムの額に突き刺さる。
この力こそがサイガが魔王と呼ばれる所以の一つ。サイガの体には二つの魔力と属性があり、自然から魔力を取り入れなくても魔法を放つ事が出来る。だが、それよりも特殊なのは無という属性。サイガしか持たず、ゴーレムが吸収したはずの魔力を魔法刃の威力に変換するとともに、ゴーレムの体は魔力を失うと同時に『砕』の文字が刻まれた事で完全に崩れ去った。
「魔法戦闘は終了だ。一位はサイガ=オウマ!」
アイシャが魔法戦闘終了とサイガが一位になった事を告げると、バトルフィールドに張られた結界が解かれた。
結界の外側の観客にはゴーレムの強さだけが違うように見え、サイガの行動も目に映っていた。
だからこそ、エリスの時と同じ様に観客達からブーイングが起きた。それは選手の一人が言っていたように武器を使用して倒したからだ。マキナ達だけでなく、観客達もサイガの魔法刃を確認していなかった。
「はぁ……疲れた。これだけで魔力が空になるのかよ」
サイガもエリスのように観客の罵声を無視し、マキナの方へ歩いていく。
「悪い……最後に砕けてしまった。それと……結界のせいか、観客には戦闘が違うように見えてたかもしれないけど、弁護なんかしなくてもいいから」
「っ……そんな事はしません!貴方はこうなる事が分かったうえでやった事なんですから。だから……そんな貴方を私のライバルの一人として認めてあげます。私に抜かれないように切磋琢磨しなさい」
マキナは砕けたマンゴーシュをサイガから渡されると、そっぽを向き、闘技場から退場した。他の選手一堂、サイガに一礼して、マキナの後に続く。その光景に観客達は疑問に思っただろう。
サイガも最後に闘技場から退場すると、出口に子供バージョンのアイシャがいつの間にか移動して、サイガを待っていた。




