3-10.諦められない、三条とキス
2月の期末テストの為に帰国した私は、三条にどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。
どうして
「三条程の素敵な男性に一途に想われて、あなたの事を好きにならない女性なんていないわ。」
だなんて言ってしまったんだろう。
言うべきではなかった。
三条に会っても私はそっけない態度を取ってしまった。
三条の目が見れない。
三条の熱い視線がいたたまれない。
綾には「三条と喧嘩でもしたの?」と心配されたけど、「そんな事ないよ。」と答えた。
私が三条にあんな事を言ってしまったなんて言えない。
テスト終了日はいつもみんなで遊ぶのが日課になっていて、今回もいつもと同じように遊ぶ約束をしていた。
三条の家でみんなで遊んでいると、三条から
「ソフィア、少しだけ2人きりになりたい。」
と言われた。
いつもだったら断るけど、
「このままソフィアに避けられ続けるのは辛い。」
と言われて、逃げてばかりだったのを反省して着いて行った。
「ねえ、どうして僕を避けるの?」
「ごめんなさい、私がいけないの。私が三条に変な事を言っちゃったせいで。」
「僕に想われて、僕のことを好きにならない女性はいないって言ったよね。あれってどう言う意味?」
「ごめんなさい、あの言葉は忘れてほしいの。」
「忘れられないよ。僕が愛してるのは、ずっとソフィアだけなんだよ。ソフィアは僕の全てだ。ソフィアも僕の事を好きって言う意味?僕はソフィアを諦められない。」
「ごめんなさい、私のことは諦めて。」
三条は切なそうに
「ソフィアはひどい人だ。忘れられない僕に、忘れろって言う。諦められない僕に、諦めろって言う。」
と言った。
「愛してるんだ、ソフィア」
近づいてくる顔に、キスされるのが分かった。
それでも、私は熱に浮かれたように、三条の真剣な瞳から目を逸らさなくて、キスを受け入れてしまった。
何度も繰り返されるキスは、次第に深いキスになった。
もっとキスしたいと思ってしまった。
時折り三条が
「愛してる」
と囁きながら、繰り返される深いキス。
三条がキスしようとして来たのなんて、初めてのことだった。
キスが終わった後も私はぼーっと三条を見つめてしまった。
「僕のキスを受け入れて、それでも僕に忘れろって言うの?僕に諦めろって言うの?」
ハッとして、襲ってくる激しい後悔。
「ごめんなさい、忘れて。私の事は諦めて。私はスティーブを愛してる。」
「忘れられないし、諦められないよ。」
三条は傷ついた顔をしてキスをしようとしたけど、今度こそ私はキスを拒んだ。
「それでも、私がずっと一緒にいたいのはスティーブなの。」
「さっきのキスも忘れろって言うの?」
「ごめんなさい、忘れて。」
「ソフィアは忘れられるの?」
「…キスはするべきじゃなかったわ。」
「僕とキスしたこと後悔してるの?」
「後悔してるに決まってるよ。私はスティーブに合わせる顔がない。。」
「僕はソフィアにキスしたこと、後悔してないよ。僕の事を見てよ、ソフィア。ソフィアの気持ちを知りたい。」
「…私は三条のことが好きよ。でも、それ以上に私はスティーブを愛している。彼とずっと一緒にいたい気持ちは変わらないわ。」
「僕に好きと言いながら、彼を愛してると言うんだね。初めてソフィアに好きって言われて、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないや。」
「お願いだから、このことは忘れて。」
「忘れられるわけがないよ、ソフィアがこの事を忘れられないようにね。」
「それでも私はスティーブが大切なの。彼を傷つけたく無い。この事はスティーブには言わないで。」
「僕よりもスティーブが大切?」
「三条よりもスティーブが大切よ。」
「…スティーブには言わないよ。でも、僕はソフィアを諦められない。」
切なそうな三条を見てると、涙が出て来た。
「私はスティーブに合わせる顔が無いわ。それでも、彼を愛してるし、離れたく無いの。」
三条に優しく抱きしめられて
「泣かないで。泣かせるつもりは無かったんだ。泣かせて、ごめん。ソフィアがスティーブを愛してるのは分かってたのに、ごめんね。」
私が泣き止むまで優しく抱きしめ続けてくれた。
「ごめん、僕のこの想いは、君を苦しませるだけだ。スティーブとソフィアは愛し合っているのに、僕は君たちを傷つけた。」
「私もごめんなさい。私は三条にたくさん救ってもらったわ。三条は私の心の支えだったの。ありがとう、もう大丈夫。戻ろう、みんなも心配する。」
その後、三条はいつも通り接してくれたし、私もいつも通り接するようにした。
翌日、私はまた飛行機に乗ってアメリカへ渡った。




