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1.ファーストキス、初恋

「愛してる」


「私も愛してる」


私と彼は敵国同士の王子と姫、決して結ばれるはずのない2人だったはずなのに、私たちは様々な困難を乗り越えながら恋に落ち、駆け落ちをした。


どちらともなくキスをして私たちは結ばれた。


私にも、彼にも婚約者がいるのに、身分を捨ててでも2人で生きていこうと。。



「カット!!」


監督の声が響いた。


「すごく良かったよ!」


興奮冷めやらぬ様子で、映像を確認する監督。



私、桜井ソフィアは14歳で出演した映画のヒロイン役で、今まさにファーストキスをしたところだ。


私も役になりきり、主演のアランに本当に恋してるかのような錯覚をしてしまう。


彼の熱い視線が忘れられない。


ただ、私達は実際には恋人では無いし、撮影が終われば関わることも滅多にないだろう。


役以外ではお互いに恋愛感情など無いはずだ。


役になりきることで彼に恋をする一方で、心の片隅で実際には恋をしてはいけないと自分に言い聞かせる。


私は恋愛をした事が無いから恋愛など分からない。


でも、初めてのヒロイン役でどうしようもなくドキドキしてしまう。


ヒロインになりきる事によって初めて経験する恋心。


幸せなのに切ない不思議な感覚。



3歳歳上で17歳のアランとの最初の出会いは1年前だった。


彼が主演の映画の脇役に出演して、こんな綺麗な人がいるんだと驚いた。


彼は世界で最も注目される俳優だけあって、驚く程綺麗な顔立ちをしている。


青い澄んだ瞳に金色の髪。


思い描く王子様そのものの容姿。


まさかそんな彼のヒロイン役に私が選ばれるなど、全く思ってもいなかった。



私は全力でヒロインを演じる。


皆が世界一のプロだ。


世界中の人々から注目される。


ボディーガードが常にそばにいる生活にも最近は慣れて来た。


外を歩けばパパラッチに追われる生活にはなかなか慣れないけど。



アランは噂によればアランと同じ歳の人気女優と付き合っているようだ。


あれだけ綺麗な顔をしていて、名誉も財産もあるのだから当然だろう。


でも、他の女性との噂を聞くこともある。


アランは噂では遊び人だ。


1年に1度程彼女も変わってる。


芸能界は噂好きな人も多いようで、あること無いこと色々なことを言われる。


プライベートなど無いようなものだ。


彼女がいる人を好きになってはいけないと自分に言い聞かせる。


それなのに、撮影最終日の打ち上げの時。


少し1人になりたくて外に出たら珍しくアランに話しかけられた。


「撮影お疲れさま。もう会えないと思うと寂しいな。」


「携帯電話の番号教えてよ。」


アランには彼女もいるだろうし驚いたが、ホテルのルームキーを渡されて、突然キスをされて私は思わず彼の頬を叩いてしまった。


すごく驚いた顔をして私を見つめるアランを置き去りに、その場にルームキーを落として私は打ち上げ会場から足早に立ち去った。


後から俳優の頬を叩いたことに凄く後悔したけど、私は力が弱いし、そんなに強くは叩いていないから大丈夫だと思いたい。。


慰謝料を請求されたりするかとヒヤヒヤしたが、その後特にマネージャーを通じた連絡も無く、密かに安堵した。


私はアランへの初恋を早く忘れようと心に決めた。

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