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半壊した局長室では、ニコの持つ治療キットで傷を治してもらったメディスンも廊下へと行こうとしていた。


「シヴィルがいて助かったな。ところでニコ、他の班員たちはどうした?」


ニコはメディスンの言葉を無視して、廊下に向かおうする彼の足を掴んでいる。


まだ動いてはダメだと必死に鳴いている。


メディスンはそんなニコの言いたいことを察し、その頭を撫でながら答えた。


「いつまで寝ているわけにもいかんだろう。弱者には弱者なりに役に立てることもある。お前なら私の気持ちがわかると思ったが?」


そう言われたニコは、呻くように鳴くと、メディスンの足を離した。


だがその後に、まるで子供に忠告する母親のように大声で鳴く。


「わかってる。無理はせんよ。お前も私も、まだこんなところで死ぬわけにはいかんからな」


このやり取りは、メディスンとニコの信頼関係が見えてくるものだった。


この神経質そうな男と電気羊は、二年前に起きた戦争から付き合いである。


彼らの出会いを語るのは次の機会にするとして、互いに思うところがあるのだろう。


彼らは見つめ合うと、シヴィルとタイニーテラーがいる廊下へと向かった。


そして、ニコはメディスンの目線まで浮いて、他の班員たちのことを説明し始める。


とはいっても、ニコに言語機能はないのでメェメェ言っているだけなのだが。


何故かメディスンは理解できるようだ。


「リズムとパロマは一階。そこへムドとディスが行ってるんだな?」


ニコがコクコクと頷いて返す。


「四人いればまあ安心か。おそらく本命はこっち、タイニーテラーだろうからな」


そして、メディスンたちは廊下へと出た。


そこには廊下の壁に叩きつけられたタイニーテラーと、局長室の壁に開いた穴から見えるシヴィルの姿があった。


その様子から察するに、二人の戦闘はすでに決着がついたように見える。


「シヴィル、やったのか?」


メディスンが訊ねると、ニコも続いて大きく鳴いた。


局長室に開いた穴からピョンと飛び出して廊下に出てきたシヴィルは、メディスンらに下がっているようと答える。


「まだ近づかないほうがいい……と、シヴィルは思う」


メディスンは言われた通りに近寄らず、バヨネット・スローターの銃口をタイニーテラーへと向ける。


シヴィルは先ほどの素早い動きとはうって変わり、ゆっくりと倒れたタイニーテラーへと近づいて行く。


すでに勝利は確定しているような状態だったが、それでもシヴィルに油断はない。


警戒しながら距離を詰める。


「ハハ、ハハハ。さすがだぜ。不用意に飛び込んできたらカウンターを喰らわせてやろうと思ったんだけどな」


床に倒れていたタイニーテラーは、笑い始めると、その身体を起こした。


全身義体のため痛覚がないのだろう。


義体を損傷しつつも、余裕で立ち上がっている。


「なぁお嬢ちゃん、いやシヴィル。ちょっとだけでいい。オレの話の聞いてもらえねぇか?」

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