148
タイニーテラーは何を思ったのか。
シヴィルと会話をしようと声をかけた。
その言葉を聞いたメディスンが声を張り上げる。
「耳を貸すなシヴィル! お前の戦意を削ごうとする作戦だッ!」
メディスンが叫んだ。
彼に続いてニコも大きく鳴いていた。
彼らの声を聞きながら、シヴィルはタイニーテラーの目の前に立っていた。
そして興味を持ったのか、彼女は手を出さずに、タイニーテラーが口を開くのを待っている。
「聞いてくれるか? なら、話をさせてもらうぜ」
それからタイニーテラーは話を始めた。
彼がまずは口にしたのは連合国のことだ。
連合国は世界を平和にしたつもりなのかもしれないが。
実際には、この街――アンプリファイア・シティのようなところはいくらでもある。
そして、これからもこの街のような犯罪都市は生まれていく。
それは、連合国の上層部が特殊能力者を疎ましく思っているからだと、タイニーテラーは言う。
「お前らも同じだよ。連合国の連中からすれば、才能の追跡官と逃亡した特殊能力者の差は、言うことを聞くか聞かないかだ。ホントは危険分子として、さっさと始末したくてしょうがないんだよ」
「うん、シヴィルは知ってる。だから連合国は嫌い」
「嫌いなのに言うことを聞いてんのかよ? 何か理由があんなら相談に乗るぜ。オレならきっと力になれる」
「なら、シヴィルがこれまで殺した人たちを全員生き返らせて。おじさんにそれができるなら、シヴィルは才能の追跡官をやめてもいい」
「……お前が殺してきた人間と、お前が連合国の犬になっていることがなんで繋がってんだ?」
「それは……他人に話すようなことじゃない。……装甲」
シヴィルは解いていた機械化を再び発動させる。
彼女の握った拳――その腕が、メキメキと音を立てて白い鎧甲冑のような装甲で覆われていく。
「おじさんは、なんで連合国を嫌うの?」
右手腕を装甲し、今度はシヴィルがタイニーテラーに訊ねた。
何故そこまで連合国を嫌うのか。
特殊能力者でもないなら、前の戦争に負けた逆恨みか何かなのか。
シヴィルは淡々と質問をぶつけていった。
「そりゃお前、あれだよ」
タイニーテラーが両腕の仕込み刀を構えると、その肩と背中、両足からも刃が現れる。
「オレは自分がやりたいことをやってるだけだ。連合国はたしかに嫌いだが、それだけで命が懸けられるかよ」
そして彼は口角を上げ、シヴィルを見据えながら言葉を続けた。
「なんでもそうさ! 殺したいから人を殺す! 助けたいから人を助ける! 連合国をぶっ壊したいからぶっ壊す! オレンジ・エリアを守りたいから守る! そこに理由なんてねぇ! オレはオレのやりたいことに命を懸けてんだよッ!」
タイニーテラーの言葉を聞き、シヴィルの少し憂いが帯びていた表情が、もとの無愛想なものへと戻っていった。
そんなシヴィルの顔を見て、タイニーテラーが言う。
「今はメディスンを殺す。昔からやりたかったことの一つだからな。お前とは友だちになれると思ってたんだが、残念だよ、お嬢ちゃん」




