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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
天空編第一部~空戦絶後~
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第三十九空路 1 汚染

「ミスタ―新井! 見つかりました! やはりあの男、オーマは危険デス」


 キーボードを叩く音が止まり、次にトマスの大きな声が部屋の中に響いた。

 現在、カイナ島では、島に残った一部の人間が、オーマについての情報を洗い出していた。


「……あと少し早く、その情報が欲しかったのですが、一体何が?」


「この男の名前、ここにもありまシタ!」


「……この記事、一体何処から」


「検索枠が勝手に変わり、このページに」


 体を自身のパソコンの前から動かさず、腹筋だけで体を倒した新井の目に飛び込んできたページは、予想もしていなかった事実で埋め尽くされていた。


「待て、それではまるでこの戦争は……そもそもこの名前」


「やはり、彼はデビルでシタか。所で、その彼らは? 下手に結束される前に手を打つべきデス」


「つい先ほど、オーマの指示で収容されました」


「ワッツ!」


 その場で小さく飛び上がり、目を見開いたトマスは、目を瞑り思考を巡らす。仮定とはいえ、とんでもない真相にたどり着いたと思った矢先に、その仮定を否定するような事実が出てきてしまっては無理もない。


「トマスさん、我々は一体、何を相手にしているのでしょうか」


 一方、ワイルドハント内の監禁室では、鬼丸が扉へ向けて体当たりを繰り返していたが、壁や扉はビクともしない。


「これ、ぜってぇただの硝子じゃねぇよな!」


「隣の部屋からの声も遮断されてるし、そもそも姿を見ることも出来ない。マジックミラーかと思っていたけど、耐久性の面からも認識を改めるべきね」


 対してクリスタは、部屋の隅々まで観察をしている。しかし部屋の中には、目立ったものは一切見当たらない。机もなければ、食事を出し入れする搬入口も。


「トイレがあったのは不幸中の幸いって、どんな地獄だよ」


「あら、アンタの身長なら、ここから抜け出ることも出来そうね」


「そーですか」


 鬼丸は壁が壊れそうにないことを悟り、その場に座り込んだ。息が上がり、少しの汗が額に見られる。

 入室前に部屋替えを希望するも、却下された二人は意表をついて背後の乗組員を襲おうとした。しかし本部での戦闘訓練を受けた二人でさえ、その男にあっさりと返り討ちにされてしまい、蹴り飛ばされる形で収容された。

 その際に鬼丸が所持していた端末も取られてしまったが、鬼丸が必死にそれを取り返そうとしている間に、クリスタが自身の端末をスーツと体の間にしまい込んだ。

 その演技のお陰か、男たちは鬼丸の端末を取り上げたことで満足し、その場を後にした。その後、端末経由で八型改に助けを求めようとしたクリスタだったが、定期的に見はりが巡回しているため、取りだす事すら不可能となっている。

 後は、八型改自身が行動を起こしてくれなければ、彼らの脱出は絶望的である。


「……眠い。こんな時にも眠気って、湧くんだな」


「先に寝てて。三時間交代でいい?」


「それで頼む……」


 鬼丸は床に寝転んで、自身の腕を枕にしながら眠りに落ちた。もし万が一、脱出の機会が訪れた時の為に、睡眠は交代制で行うことになった。


「さてと。暇ね」


 寝ている鬼丸の寝顔を見ながら、壁に寄り掛かり自身の爪を見る。

「……こんばんは。鬼丸さん」


「フィリップ。これはどういうことだ」


 あれから大体四時間がすぎただろうか。鬼丸が眠れない振りをしながら脱出のタイミングを図っていると、目の前に白を基調とした制服を着たフィリップが現れた。


「リヒテンシュタインさんは、お眠りですか。好都合です」


「どういう意味だ。質問に答えろ」


 敵意を隠すつもりのない鬼丸に対し、友好的な態度をとり続けるフィリップ。両者は、囁きのように小さな声で会話をする。


「ついて来てください。指示に従ってさえ下されば、彼女らの安全は保障しましょう」


 フィリップが壁の外側にあるパネルを操作すると、扉が少しだけ開かれた。鬼丸はそこから何も言わず、外に出る。


「ずいぶんと素直なんですね」


「少しでも遅れれば、コイツ等を一人ずつ殺す。お前たちからはそんな匂いがする」


 正直、ハッタリだった。如何にも歴戦の猛者風に振舞っているが、自分が動くことで、何か状況が変わるのではないかと踏んだ鬼丸は、その心中を察せられないような態度をとる。


「まさか」


「どうかね」


 そう言い、その場を後にするフィリップに着いていく鬼丸。彼は振り返り、一言。


「頼んだぞ、もう一人の天才」


 ゆっくりと、監禁室の扉が閉まっていく。


「どうですか? この空中生活になれましたか?」


「……」


「ハァ、少しくらいお喋りしませんか。私、緊張でお腹痛くなってきましたよ」


 まるで談笑でもするかのような笑顔で、鬼丸へ視線を向け続けるフィリップに対し、鬼丸は一切慣れ合う態度を見せない。


「あ、なんなら質問でも良いですよ。私に返答可能なものならお答えします」


「……お前がアイツらの指揮官か?」


「……丁度いいですね。我々チェック・メイツについて、説明いたしましょう」

 そう言いながら廊下を曲がると、向かう先で声が聴こえた。


「まただよ」


「どうしたんだ」


「ルークのガキだよ」


 清掃員と思われる二人が目にしたのは、食べかすや梱包で汚され尽くした廊下。その先には、歩きながら菓子を貪る少年の姿がある。


「あの奥にいる少年が、コードネームルーク。奇襲戦法を得意としており、現在のチェック・メイツ最年少のパイロットです」


 自分の名前を呼ばれた少年は振り返り、そして再び菓子にかぶりつく。その際にも道は汚れ続け、清掃員の二人が溜息を漏らしていた。


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