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鋼女神話アサルトアイロニー  作者: ハルキューレ
海上編第三部~海上神秘~
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第三十二海路 7 ヴァルキリア・シャーク

「戦乙女と鋼の鮫が、一つに合わさり超合体! 悪しきリンゴを打ち砕き、島を守るは鋼の巨人! ウチの名は、ヴァルキリア・シャーク!!」


「上等よ! さあ、アタシ達の反撃を始めるわよ! コルセア、海岸線にそってジャックマークⅡへの接近!」


「おうよ」 


 クリスタのアイコンタクトを受けたコルセアが、機体を走らせる。スラスターの故障により機動力が失われているため鈍重な動きしか出来ないが、今はそれで十分だ。


「皆さん、撤退、撤退ッス! 真打の登場ッス!」


 ユナの景気のいい掛け声に合わせ、一斉に撤退を始めるイナバ百式。彼らの一撃離脱戦法に対処していたゴッドアップルは、彼らの再突入を警戒し、追撃を始める。


「逃がさんぞ小僧!!」


 イナバ百式の速度はジャックマークⅡの歩幅を下回り、次第に距離が近づく。その間にも、ユナの合図で離脱を始めるイナバ百式。


「追いつめたぞ。その機体で水中に潜ることなど、不可能だ!」


 撤退を続けたユナはジャックマークⅡによって、浜辺へと追いつめられていた。しかし、背後の波の音に臆することなく、ユナは正面を向き不適な笑みを浮かべ続ける。

 その表情に怒りを覚えたゴッドアップルは、ジャックマークⅡの拳を振り上げた。その黒く禍々しい拳は、イナバ百式黛カスタムを、後方の海へと吹き飛ばそうとしている。


「これで終わりだ!」

「追いつめた? それはこっちのセリフッスよデカピエロ」


 機体への負荷を承知で、ユナはイナバ百式黛カスタムを急発進させた。


「何⁉ 拳を躱しただと!」


「工業用の瞬間馬力、舐めるな!」


 砂煙を巻き上げキャタピラはジャックマークⅡの股下を通過する。攻撃対象が消えたこと、そして意表を突かれたことからジャックマークⅡは大きく空振り、バランスを崩す。

 しかし。


「うぬぼれるな人間風情が!」


 ジャックマークⅡは背後のジェット噴射を利用し浮上を行い、姿勢を整える。


「何がこっちのセリフだ! 私は健在だぞ」


 振り向き、あの忌々しく見るに堪えない偽物の陸戦を破壊しようと歩みを進める。その時、真横から近づく鈍重な音が、ゴッドアップルの意識を奪った。

(しまった! アイツらがまだ居た)

 気付いた時には既に遅く、拳を引きつけた八型改、もといヴァルキリア・シャークがすぐそこまで迫って来ていた。


「突っ込め! ヴァルキリア・シャーク」

「させんぞ!」


 拳は骨のように繊細なジャックマークⅡの手によって受け止められてしまった。そのままジャックマークⅡは拳に力を入れる。


「このままへし折ってくれる」


「もう一発ゥ!」


 しかし鬼丸が繰り出したヴァルキリア・シャークの左手も、同様に受け止められてしまった。


「どうした。合体までして、そんなものか?」


「かかったわね」


 クリスタの口角が、ニヤリと吊り上がる。そのまま立ち上がり、手を前にして声を張り上げる。


「ヴァルキリア・シャーク! アンタの本当の力、アタシ達に見せなさい! 総員、水中戦用意!!」


「かしこまりました。鬼丸クン、コイツを水中へ引きずり込みます。タイミング合わせていきましょう!」


 クリスタはこの時すでに確信していた。この戦いの勝利を。合体の際、八型改はヴァルキリア・シャークの予想スペックを彼女に提示していた。そこから彼女が導き出した答え、それは……。


「うおッ。な、何のつもりだ一体」


 体を海とは逆方向に一度捻り、ジャックマークⅡの体重を陸地側へと倒す。そのまま無意識に近い反応で、彼が姿勢を保とうとした瞬間、


「「せぇの!!」」


 今度は掴まれた拳ごと、海の方へと振り回される。当然、姿勢を戻そうとしていた力も加わり、ジャックマークⅡは海へと吹き飛ばされる。

古来より、戦は高所を取った方が有利に戦えるとされてきた。これは様々な戦術の基礎となっており、クリスタも勿論把握している。

現在ヴァルキリア・シャークは飛行能力を失い、対し向こうはそれを有している。この危機的状況を脱出するカギを、クリスタは無重力状態に近い環境であるこのカイナ島の海に見出した。


「なんだと! 小賢しいマネを!」


 咄嗟の出来事に、上昇をして水没を回避することが出来なかったジャックマークⅡは、大きな水柱を作り海中へと沈む。


「飛び込むわよ!」


 クリスタの指示を受け、跳躍をしその水柱に飛び込むヴァルキリア・シャーク。背中の傷から空気が洩れることはない。

 海中という一種の無重力空間において、飛行能力というアドバンテージは両者から取り上げられる。

 代わりに求められるものを、このヴァルキリア・シャークは持ち合わせている。


「ヘル、多分いつも飛ぶときみたいに背中に力入れて! 多分出来るはず」


 スラスターとダイシャークは密接に合体している。そこに目を付けたクリスタは、改になったばかりの八型改が起こした驚異的な移動を思い出した。


「フ、成程な。勝機は我らに、ということか。面白い!」


(この接続方法なら、あの莫大なエネルギーをダイシャーク経由で使えるはず)


 目の前には、水に自由を奪われ、漂いながら拳を構えることしか出来ないジャックマークⅡ。彼の姿は、ゆっくりと皆底へと向かっている。


「目標、ジャックマークⅡ。機動力で翻弄してブッ叩くわよ」


 コルセア、次に鬼丸へと視線を合わせ、合意を取る。


「任せな。海ならアタシの庭さ!」


「とは言いつつエリート様? 我々は、一体どのような方法で攻撃するのがよろしいのでしょうか? なんせ水中ではARも誘導弾の扉も、圧力で取り出すことが難しいんですから」


 わざとらしく困ったような口調でクリスタに質問する。その顔からは闘志が溢れており、センターで揺れている真っ赤な毛束がその勢いを表していた。


「答え出てるのに、わざわざ聞く必要ある?」


 彼らの背後では、ヘルによって出力調整が行われている。コックピット内に響く重々しいエネルギー音は、次第に大きくなり、一定の所で変化がなくなる。

 調整終了の合図だ。


「バレてたか。御高説賜って、全部否定しようと思ったんだがな。コイツを使うぞ」


「バレバレよ。そろそろアンタの思考も読めてきたわ」


 衝撃に備え席に着くクリスタは、なお不適な笑みで視線を逸らさない鬼丸を鼻で笑う。その口角は自然な形で上がり、いつものように誰かを見下すものとは異なって見えた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。創作活動の励みとなりますので、この作品が面白ければブックマーク、感想やコメント、レビューを何卒宜しくお願い致します。

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