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プレイヤー二十人でお送りする、異世界デスゲーム  作者: PKT
それぞれの初日
12/39

敷島利喜の初日

 敷島利喜は、漫画とTVゲームが趣味の、いかにも今時の学生だ。

 彼は、異世界への正体が来た際、飛び上がって喜んだ。オレにも、物語の主人公になるチャンスが巡ってきたと。自分も、漫画に出てくるようなヒーローになれると。


 彼は、力をつけて”悪”と戦うべく、サリシアで冒険者となる道を選んだ。

 武具店で、かろうじて振れる重さの剣に加え、胸当てと膝当てを購入した。

 この時点で、彼の興奮は最高潮に達した。


 リキは、早速武器を試すべく、魔物が住み着いているという平原へと繰り出した。

 最初に出会ったのは、全身が水色で額の部分のみが白色の、ウサギの様な姿をした魔物だった。大きさも、学校で飼っていたウサギを一回り大きくした程度だ。見た目はとても美しいが、赤い目だけは間違いなく敵意を湛えていた。それが、二匹。

 その内片方が、意外な脚力でリキの首筋を狙って飛び掛かってくる。どうやら、人間の急所を知っているらしい。

 その動きに思考の結果ではなく反射で、剣を振り下ろす。咄嗟の行動にしては上手く行き、魔物が真っ二つになる。

 剣の切れ味に感動している間もなく、もう一匹が足首へと噛み付いた。

「くそっ、このっ!」

 食らいついたまま離さないそいつに、剣を突き刺す。すぐにもう一匹も絶命した。しかし、噛み付かれた足首からは血が流れだし、ソックスの色を変えていく。

「いってぇ・・・」

 これがヒーローに付きものの痛みか、などと現実逃避のように考える。


 そういえば傷薬の類を購入していなかったなと気づき、街に引き返そうとするリキだったが、そうは問屋が卸さなかった。

 街へ戻ろうと歩き始めて僅かに六歩。前方から新たな魔物が現れる。赤い色をした粘液体の生物。平たく言うと、スライムだった。

 スライムくらいなら剣で切れば倒せると考え、素人なりに構えを取る。スライムというのは、彼にとってはRPGで序盤に出てくる雑魚モンスターだ。それが、油断を生んだ。

 スライムが突如、自身の体の一部を飛沫として、リキの足首の傷へと飛ばした。傷口に張り付いたスライムの一部は、そのままリキの静脈へと侵入し、心臓へと向かっていく。

 その動きは、リキに痛みとして伝わる。

「くそっ、こいつっ!」

 何が何だかわからないまま、それでも剣を振るってスライムに切りかかろうとするが、スライムは以外にも跳ねて移動し、大きく距離を取った。

「まてっ!・・・っ!?」

 それを走って追おうとするリキだったが、突如心臓に圧迫感と痛みを感じて蹲る。鼓動が、あり得ないほどに早い。

 彼はそれから三十秒程度の間のたうち回り、やがて体を痙攣させた後に死亡した。


 彼が相対したスライムは、正式名称をブラッドミューカスという。体の一部を生物の血液に侵入させ、心臓を経由して脳へと到達。脳を食らって、対象の生命活動を停止させるという残忍な習性を持つ魔物だ。その後は、対象の体を内側から溶かして自身の養分にしていく。スライムは、燃やすか凍らせるか、身体にある核を全て壊せば死に至る、比較的倒しやすい魔物だ。しかし、それを知らなかったリキは、みすみす敵の餌食となってしまった。


 いくら小型でも、見た目が強そうでなくても、魔物は魔物なのだ。そして、無思慮と慢心を装備して魔物の前に立ったリキは、そのツケを命で支払う羽目になったのだった。



≪残り18名≫

馬鹿なのに風邪ひいてます、作者です。

若干キツイ描写が入りましたが、本来魔物ってこうあるべきだと作者は思うのです。動物とは違いますからね。


ようやく、登場人物それぞれの初日も折り返しを迎えました。

初日以降は、楽しめる描写も増えるかと思いますので、もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。


誤字脱字の報告や、感想などお待ちしております。

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