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第五話 エスパー



「認めええええええええええええええん!!」




 やはり認めてもらえないらしい。

 ダイニングルームに入ってすぐ、何も話していないうちに、姫匙のお父さんが怒鳴るように声を上げた。


 横にいる女性が「あらあら」と口に手を当てて上品に笑っている。

 たぶん、姫匙のお母さんだろう。綺麗な大人の女性って感じだ。すごく似ている。



「お父様、まずはお話をさせてください」


 姫匙が丁寧な言葉づかいで怒りを収める。


「……そうだな、時間はある。ゆっくり話を聞かせて貰おうじゃないか」


 立ち上がっていた姫匙のお父さんは腰を下ろして、僕を睨む。


 あはは、と笑って僕は姫匙に救いを求めた。

 姫匙は見兼ねたように息をついてから、僕の紹介を始めた。


「こちら鹿倉水斗くん。クラスメイトで一週間ほど前から私とお付き合いしているダーリンです」

「はじめまして、ダーリンです…………………………………なん、ちゃって?」


 ……………………。

 姫匙のお母さんが「あらあら」と哀れみの視線で微笑んでいる。


 何も言わないでくれ。放っておいてほしい。


「――――ッ!!」


 姫匙が僕の足を踏んだ。激痛に耐えながらも声が出ないように歯を食いしばる。

 僕の足を踏むためにハイヒール履いてるんじゃないよな!?


「……ええと。鹿倉水斗です。憐香さんとは誠実にお付き合いさせてもらっています」


 この、当たり障りない挨拶。パーフェクト。


「私、この人のこと愛しているの! 認めてくれないなら、この家を出ていきます」


 姫匙が堂々と胸を張ってそう言った。


 これが姫匙の作戦か……やっぱり子供っぽいな。

 おもちゃを買ってもらえなくて駄々をこねる子供みたい。


 けれど、ストーキングするほど娘を愛している父親が、娘を放り出すなんて真似できるわけもなく……。




「勝手にしろ! 絶対に認めんからな!!」




 放り出しちゃったよ!!

 姫匙は予想外の返事だったのか、一瞬だけ狼狽えたが、すぐにニヤリと笑ってみせる。


「ええ。そうさせてもらいます。お母様、お父様は私の監視をしています。生活に支障をきたしてしまうので、お父様が私を監視しないようお父様の監視をお願いします」

「……あらあら、わかったわ」


 姫匙のお母さんは怖い顔でお父さんを睨みつけた。


 そして僕を見て、

「心配せず、楽しんでらっしゃい」

 と、そう告げた。


 ……何を楽しめと?


 姫匙のお父さんは「どうしてそれを……」という表情で姫匙を見ていた。

 きっと監視するのを前提で「勝手にしろ」と言ったのだろう。


 そんなお父さんを横目に、姫匙はダイニングルームを出ていった。僕も付いていくように歩き始める。


「家を出て行って、どうするのさ?」

「もちろん、あなたの家に行くに決まっているじゃない」


 薄々そうじゃないかなとは思っていたけれど……。


「……急には無理だって、親とかいるし」


 僕はできるだけ自然に嘘をつく。

 その瞬間、姫匙に睨まれた。


「父親は海外出張。母親は父親に着いていって、今は妹と二人暮らし」



 ………………何で知ってんだ!?


「《契約》を結んだ相手のことを調べるのは当たり前でしょう?」



 当たり前のように考えていることを読むのは止めていただきたい。


「あなたが単純なのがいけないのよ」



「…………姫匙、エスパーとかじゃないよな?」

「あなたはどう思う?」

「もしかしたらそうじゃないかと疑っている途中」



「ふーん。昨日の夜、私をオカズに自慰行為に励んでいたわよね」

「………………ッ!?」



「…………嘘、でしょ? あなた本当に私をオカズにしたのね!?」


 姫匙が顔を真っ赤にして、僕の肩をグイングインと揺らす。


「してない! してないからッ!!」


 僕は必死に弁明するが、姫匙は聞く耳を持たない。


「じゃあ何よ、今の反応っ!」

「姫匙が急にそんなこと言うから!」




〇 ♢ 〇




 やっとの思いで部屋の前に着くと、姫匙は「覗いたら殺すから」と言って、部屋に入っていった。

 着替えやら何やらをまとめているのだろう。


 最終手段とやらが『家出』だったのだろうか?

 少なくとも、母親の許可は取っているから家出とは言えないけれど。


 でも、それもまた姫匙らしいっていうか。ちゃんと許可取る辺りが特に。



 姫匙が部屋から出てきて、スーツケースが二つと大きなカバンが三つ置かれた。

 ……どれだけの期間、家に居るつもりなんだろう。


「未定よ」

「……そっか」


 考えていることが読まれても、もう何にも感じなくなった。

 エスパーとかではないらしいので、とりあえずは気にしなくてよさそう。


「何をやっているの? 早く着替なさい」


 そういえば、僕は姫匙に借りたスーツを着ていた。

 僕は部屋に入って、クローゼットを開ける。そして自分の来ていた制服を取り出した。



「あのさ、姫匙……着替えるんだけど」

「知ってる」


「服も脱ぐんだけどさ……」

「着替えるんだから、当たり前じゃないかしら」



 はあ。このまま着替えたら「よくレディの前で服が脱げるわね」って言われるんだろうな。

 ……まあ、いいか。


 僕はそのまま着替えることにした。











「よくオカズにした女の前で服が脱げるわね」






 …………どこまでも理不尽だった。


《次回・妹》

 かわいい(威圧)もふもふ(適当)

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