アモンという悪魔
「アーモ、アーモ!」
妄想に浸っていたアモンが正気に戻る。
クイックイッと水着の端を引っ張られていた。
いつもと違って掴むところがなかったのだ。
「……どうしましたか、姫様?」
そう尋ねるとイオンがビクッとした。
アモンはうまく接することができず、時折ビク疲れることがある。ショックな半面それもかわいいなとか思っているあたり大分アウトだ。
「あのね、あのね…」
胸の前で人差し指をツンツンしながら俯くと見上げるを繰り返すイオン。
何か言いだしづらいことがあるようだ。
しかし、アモンは助けの手を差し出すことができない。外見は似ていないが、母親が子供を叱っている図に見えも見える。
「向こうでね、けんかしててね、皆困ってうようだったの。アーモは仲直りさせるの得意なんでしょ?」
手をギュッと握りしめて覚悟を決めて言ったのはそんなことだった。
アモンは確かに喧嘩の仲裁が得意だった。呼び出した者が願えばいまにも修羅場の恋人同士だろうが、冷戦中の敵対国同士だろうが間を取り持つことができた。
根が真面目で誠実な性格は悪魔らしからぬ。
最も、呼び手が誰かの仲を引き裂いてと願えば言われたように引き裂くのだからやはり悪魔なのだろう。
「喧嘩を止めればいいのだな?」
アモンが静かにそう言うと、俯いていた顔を上げパァっと表情を明るくして、
「うん、うん。けんかはメッなの」
と頷いた。
やべ、鼻血出そう。悪魔の存在が鼻血を出すことはないが、アモンは何かを必死にこらえながら騒動が起きている方へと向かった。
「おうおう、この姉ちゃんたちに先に声をかけたのは俺たちだぜ」
「あん?はっ、そんなダセェナリで何を言ってやがる」
どうやらナンパ先を巡っての争いのようだった。された方の女性たちは嫌そうにしている。
男の方は二人連れが二組。
「おい」
躊躇一つせず、声をかけると6人の視線がアモンに向かう。
「んだぁ?お姉さんが相手してくれるってのかぁ?」
「あ、あんたは!?ヒィっ」
反応は真逆だった。方や鼻息を荒げ、アモンの身体を凝視する。
もう一方は先ほどアモンに声をかけてきた男たちで、気づくや否や悲鳴を上げた。
「恐れ多くも姫様が気に病んでおられる。喧嘩をやめてとっとと失せろ」
低い声でそういうと、
「は、はいわかりましたー」
おとなしく去る2人。
「はぁ?何それ。それよりさ、俺たちといいことしyぐがごっ」
残った2人は話す途中で、上から地面に押し潰されるように倒れ込む。
「姫様からはこの場を静めるようにとしか言われていない。おとなしく去るならそれもよし。さもなくば跡形もなく消し去ることになるがどうする?そうかそうか、退く気はないということだな?」
「「ち、違……動けね…ぇ」」
アモンがかけている圧力で身動きがとれない二人は必死に弁明する。
『滅』
別に何もしていないが声だけで男たちは気絶して泡を吹いていた。
「あ、あの!ありがとうございましたっ」
ナンパされていた二人がお礼を言うもアモンは足を止めることもせず去っていった。
「ああ、つれないところも素敵」
知らずアモンのファンができていた。
「姫様、無事終えましたよ」
待っていたイオンの元に帰り、報告する。
「アーモさすがなの!ありがとっ」
にぱぁと笑いかけられ、アモンは悶え死にしかけるのだった。




