アモンの苦難
火色の髪を風に遊ばせてイオンの様子を見守っているアモン。
イオンが波に呑まれてギャン泣きしていても駆け寄るでもなく冷静に腕を組んで見ているだけだ。表情は冷静そのもので、カメラ越しにブランコから転げ落ちた子供を見ている父親のようでもある。
「ねぇ、そこのカッコイイお姉さん、俺達と遊ばない?」
そんなアモンに声をかける男が二人。
「それ、本物?ひゅ~、最っ高にクールだぜ」
それぞれが声をかける。
「……今は姫様の声意中だ。他を当たれ」
対する声は氷山の如く冷たく、低い。
「姫様?OK、OK!そういうロールなわけね。」
「よくわかんねぇけどさ、そんな餓鬼より俺達と遊んだ方が楽しいって、ね?ブゴォッ!」
アモンの腕が男の首に食い込む。
「つまり、だ。お前らは自分の方が姫様より価値が上だと言っているってこと?」
片腕で一人の男を完全に宙に浮かせていた。
男たちは必死で首を横に振る。
顔が青くなってきたところでアモンの手が二人を離した。
「ひ、ヒィ、化け物だ」
一人は振り返りもせず足をもつれさせながら逃げた。
「……く、クール」
そしてもう一人はその場で意識をなくしたのだった。
「全く、姫様のせっかくの泣き顔を見る時間を無駄にした。ああ、姫様かわいい。波をかぶって、一瞬間をおいてから泣き出すところがかわいい」
表情は冷静なまま、内心では両手で顔を覆うようにしながら、クネクネと悶えながらそんなことを考えているのだった。
アモンは魔神となってより、配下にナメられないようどう振る舞うか悩んでいた。
どうも滅多に口をきかないほうが重々しい雰囲気が出るようだ。表情もなるべくコロコロと変えるべきではないなと他の魔神たちを見て判断したのだった。元々根が真面目だったのか徹底した結果、無口で無表情な冷酷な魔神という評価を得た。
それ自体はアモン自身が望んだ通りだった。
だが、イオンが現れて困ったことになった。
これまでのイメージが邪魔をして普通に愛でることが出来ないのだ。
結果的にうまく接することができず、口調がおかしくなったりしてしまう。
そして一層無口になり、内心と外見が別人のようになってしまった。




