ダンタリオンの憂鬱
異世界の犬やねこのことを教えて以来、姫様は
「わんわーん!にゃんにゃーん」
とおおはしゃぎだ。人間達の世界から連れて来ることは出来ない。基本この世界には魂でしか来られないのだ。罪を犯して冥界に来るのは人間だけだ。動物達はたいてい天界に行って転生する。
どこまでわかってくれたかはわからないが、ねこや犬がいないのは分かったのだろう、少し沈んでいた。
ことは翌週から起こったのだ。
「にゃあーん」
「わんわんっ」
そんな鳴き声が聞こえてきて、私は首を傾げる。姫様の部屋へと踏み行って、
ーーー部屋の空気が凍りついた。
犬の容姿を持つ魔神達とねこ科の魔神達が私の方を見て、口を大きく開いている。
姫様が
「にゃんにゃーん♪」
と言って撫でているのはウァプラ。
公爵の地位にあって、グリフォンの翼を持つ
獅 子
である。
お腹を見せてゴロンとしている。
だが、獅子だ。
まぁ、そんなのがいっぱいいたわけだ。
羽根の生えたマルチーズの姿のグラシア・ラボラスは特技は殺人術、流血させること、人を唆して殺人を行わせることだ。人の抱く悪魔のイメージ通りの悪魔だ。
同様に公爵のアロケスは頭部こそ獅子だが、二足歩行する兵士の悪魔だ。流石にちょっと無理だろう。
どいつらも必死である。
私を鋭い目で睨みつけてくる。
地位の差こそあれ、私も魔神の一柱だ。武力で脅そうとしても無駄だと
にらみ返す。
「頼む、言わないでくれ」
候爵位にあり、漆黒のおおか…犬でグリフォンの羽根を持つ魔神、マルコシアスが頼み込んで来る。無論他の魔神達も同様にだ。
姫様に正しい知識を伝えなくては、という思いとは裏腹に、彼らの思いをないがしろにしがたかった。
悩んだ結果、私は彼らのことを姫様に言わなかった。彼らの懇願に負けたわけでもないし、彼らの威圧に屈したわけでもない。
ただ姫様が楽しそうにしていたからだ。
結局姫様至上主義なのは彼らも私も変わらないのだ。
……来週からは鳥の話になるんだったな。
頭が痛い。




