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カインのスピードで、花火の見える場所まで連れて行かれる。

正直速すぎて、足がもつれそう。


やがてその場所へ着くと、タイミングよく花火が上がりだした。

大きな音と共に、色とりどりの形を作って華やかに輝いては消えていく。

疲れて足はがくがくだし、息も上がっているけれど、そんな事を忘れるくらい花火は綺麗で壮大だった。


「凄いね・・・!とても綺麗・・・!」

メルダは見上げながら声を上げる。さっきまでの不機嫌が嘘のように、とびっきりの笑顔浮かべていた。

カインはメルダの傍に寄る。近くでカインの香りが感じられて、メルダはドキリとしてしまう。

「メルダごめん。俺、ジンクスの事知らなくて。知ってたらお前の誘いは絶対断らなかった」

その言葉にメルダはカインの顔を見る。

カインは真っ直ぐにメルダを見つめている。

「せっかくメルダが誘ってくれたのに。だから、俺と話してくれなかったんだよな?本当にごめん」

そう言うと、カインは自分の胸にメルダを引き寄せた。

カインの体温が感じられて、メルダは嬉しくなり泣いてしまう。

好きな人に抱きしめられる事が、こんなに幸せだとは思わなかった。

「メルダが俺を誘ってくれたってことは、その・・メルダも同じ気持ちだってことだよな?」

「同じ・・・気持ち?」

「俺、お前のことが好きだよ。最初に会ったあの日から、ずっと思ってた。でもお前の心の中にはグランがいて。・・・だからあいつのことを忘れるまで、俺のことを好きだと言ってくれるまで、頑張ろうと思ってた。俺の頑張りが報われたってことだよな?」

カインの抱きしめる腕が強くなる。メルダも身体に腕をまわす。

「うん・・・。私カインが好き。自分の気持ちに気付くのが遅くてごめん。もうカインのことしか考えられないわ」

「メルダ、結婚しよう。ずっと一緒にいる。お前のこと幸せにするから」

「・・・うん」

自然と二人は見つめ合い、そして唇を重ねる。

二人の恋を祝福するかのように、花火が空でキラキラと輝いていた。




―――2年後。

「え?今なんて?」

「だからね、赤ちゃん、出来たみたい」

メルダのその言葉に、カインは読んでいた本をばさっと落とす。

「そ・・・そうか・・・。子供・・・俺とお前の・・・・」

カインの身体がぷるぷると震えている。

「ど、どうしたの?」

メルダは心配になり、声をかける。


「っっっやったあーーーーーー!!!!メルダ、ありがとう!!!ついに俺達の子が!!」

突然堰を切ったように大きな声でそう叫ぶと、メルダをきつく抱きしめる。

「ちょっと!痛いって」

「あああ!ごめん!!お前はもう一人の身体じゃないから、優しく扱わないと!」

と抱きしめた腕の力を緩めてくれた。

「嬉しいなぁ、俺とメルダの子か・・・。きっと可愛い子だろうな」

メルダを抱きしめながら、カインは呟いた。

「だぶん、この子は女の子。・・・そうね、生まれたらエレナとつけるわ。ちょっとおませな女の子よ」

「なんでそう思う?」

カインは驚いたようにメルダを見る。メルダはお腹をさすりながら答えた。

「昔、夢で見たのよ。あなたとの子が出てきたの。おとうさんはおかあさんのことがすきなんだって。だからはやくあいたいな、ってそう言ってくれたの」

メルダは優しく微笑んだ。カインも一緒に微笑む。そして、お腹をさする。

「そうか。・・・ようやく会えるんだな」




エンディングのあとの物語は、終わることなく続いていく。

それは誰にも語られることのない物語だけれど。

二人だけの幸せな物語だ。


 

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