68.脈アリ!?
横浜の倉庫に到着したのが17時半。私の幸せ時間を奪ったやつは、薬物取引をする悪いやつだった。
「マジで悪かった。椿がデートっていうのは知ってたんだけど……」
「いいよ。私、適役でしょ?それにいつも宗さんなんだかんだサポートしてくれてるし」
「いやー、俺は殴られる覚悟で電話したんだけどな。お前成長したな」
優しくして損した。しかし仕事は目の前。
19時にトン単位のMDMA、通常エクスタシーと呼ばれる麻薬取引を潰すのが今回の仕事。
薬物取引は他国の人が交わることが多く、葬暗局での制裁が難しい。しかし今回は、外国での生産と運搬をしているのも日本人だと発覚し、こっちの仕事になった。
「え、戦闘服あるの!?」
「あるよ。え、着ないのか?」
前回真心斗からの呼び出しでは、初のデート服で突入し、今回もそうだと思ってた。今日はお気に入りのワンピースだったから、正直やだなとは思ってた。
「ありがとう宗さん。さすが大人!」
「いやー、たまたまだな」
ささっと着替え、資料を読み、打ち合わせ。
ちなみに今回は、一般の警察官(組織犯罪対策部)の人も来てるらしい。つまり、私はあまり見られない方がいいのだ。よってヘルメットを深く被る。
「椿、間違っても俺のことは撃つなよ?」
ガハハっと笑い、ひと足先に現場に向かった宗さん。今回の私の仕事は、倉庫の上からの援護射撃。さ、では私も行こうか!
「お疲れ様です」
「椿、お疲れ様。んで助かったわ。サンキュー」
「たまたま、ね?」
「何がだよ。犯人殺せないからって3階から飛びやがって。おかげで助かったけど」
制裁対象は味方同士の誤殺ということにするために、銃を奪いに行く予定だった宗さんが危なかったため、10メートルちょっとの場所から飛んでキックした。
あ、みんな安心して?無傷だから。
「ねえねえ、この後赤レンガで買い物とかどう?ご飯も!」
「今回は血ついてないし、いいぞ。報告書のメインは警察側だし」
やった!すぐさま着替え、普通の女の子に変身。
「とりあえず飯行くか」
「お肉がいい!お肉食べよ!」
「はいはい、うちの娘も最近魚食べないんだよ」
宗さんには9歳と7歳のお子さんがいる。面倒見がいいのは、パパだからなのかな。
「ねえねえ、聞いてほしいんだけど」
「ん?」
「綿貫さんがね、今日も家を出る時に体調心配してくれたり、私のこと女の子って呼んでくれるの。優しくない?」
「なんだ、脈アリってやつか。佑樹さんと大輝とばっかり話してて、俺全然聞いてなかったからな」
脈アリ……?え、少女漫画でよく出てくるあの脈アリ?綿貫さんが私のことを好きかもしれないの……?
「待って待って!?本当にそう思う?」
「女の子に女の子っていう男が、異性として見てないってことはないだろ」
「じゃ、じゃあさ!前にカフェで勉強してたら、綿貫さんの友達に茶化されたの。友達にそっけなくするのって、少女漫画的には脈アリなんだけど……どう思う?」
「そりゃ多少なり気があるんじゃねえの?」
私は綿貫さんのことが大好きだし、友達になれたから次は彼女になりたいって思ってるよ?でもさ、そんなの夢じゃん?
綿貫さんが私のことを、嫌いってことは多分ないと思う。お家に入れてくれたし。でも好きなわけある?
「椿、お前可愛んだからもっと堂々としたらいいんじゃないか?今なら告白してもいけそうだと俺は踏んだね」
た、宗さん!?それ責任取れますか!?
「あー、でもお前を小さい時から見てきた身としては、娘のようでつらい」
それはどうでもいい。でも、もし綿貫さんが私のことを……あー、熱が出そう。




