41.いざ出陣!
緊張の朝。
「これ見て元気出してたんだよー!」
ピスタチオカラーのパンツに、カジュアルな白ブラウス。ゴールドのフープピアスとリングも、この日のために寝かせてたの。お待たせみんな!
メイクはがっつりしたら引かれるかな?まあ今回の作品は泣くだろうから、ウォータープルーフは必須だよね。リップはナチュラルな方がいいか。
「久しぶりにラメが入ったやつ使っちゃう?」
おしゃれするのが久しぶりすぎて、何から手をつけたらいいのかもうわかんないよ!
とりあえず映画見るから頭が痛くならないように,2つ結びのくるリンパにしよう。
出発前の、最後の保険。夜中に来ていた3件のメール対応まで完璧。綿貫さんに国家の殺し屋なんでバレたら大変だもん。
「いざ出陣!」
間違いない、このバスだ!
普段電車には乗るけど、バスに乗ることなんて滅多にない。遠足はあんまり楽しみじゃなかったタイプなので、現在人生で初めてバスを楽しんでます、椿です。
「緊張するな。まずなんて言えばい……こ、こんにちは」
「こんにちは」
なんでバス停に綿貫さんが!?改札前待ち合わせって言ってたじゃん!心の準備がまだなんだけど?
「バスで来るなら、わざわざ改札前待ち合わせにする必要なかったなって」
「……そう、ですね。ハハッ」
サプライズすぎるよ。優しいけど、嬉しいけど、言ってくれたらバスの中でリップ直したし前髪も整えたのに!
「はぁ、イケメンすぎる」
「ん?なんですか?」
「いやいやいや、なんでもないです!」
普段はパーカーかトレーナーにストレートパンツなのに、オーバーシャツにワイドスラックス!?
セーターから見える手は、萌え袖ってやつじゃないですか……控えめに言って最高です。
「なんだか変な感じですね」
「私どこか変ですか!?」
「違いますよ。こないだスーツ姿を見たのもあって、なんかちょっと……恥ずかしいなって」
え、尊すぎる。これがいわゆる神対応ってやつなのでは?もうお金を払わせてください。
そして恥ずかしさなら絶対に負けてない。
「綿貫さんもなんか、その、いつもと違いますね。あ、変な意味じゃなくてですね、あの」
「ちょっとだけおしゃれしてみました。変じゃないですかね?」
「大変お似合いです!」
神様、今日という時間をくださりありがとうございます。今のところ仕事のメールが6件、チャットが12件です。欲を出していいなら、もう少しセーブしてください。私は彼を堪能中です。
「じゃあ行きましょうか」
「はい!」
「ランチ、洋食屋さんを選んじゃいましたがよかったですか?」
「全然大丈夫です!」
「ならよかったです。普段は自炊されるんですか?」
え、これはお見合いですか?私花嫁として試されてるの?
「自炊はまあ、それなりに?綿貫さんは?」
「1人暮らし始めて1年経って、ようやくって感じですね」
「昨日は何を召し上がったんですか?」
「召し上がった、ふふっ」
笑われしまったということは、おかしかったんだ……召し上がったって友達には言わないの?でもこんなに尊い人に、食べました?なんて聞けないよ。
「僕は生姜焼きと味噌汁と卵かけご飯でした。佐藤さんは?」
「昨日は鰹のたたきと蓮根のきんぴら、ホタテのバター醤油ソテーですかね」
「副菜まで作るなんてすごいですね」
「いや、たまたま?たまたま時間があって?」
定時で帰れない日はインスタントスープと、レンチンご飯。納豆か卵かけご飯なんですけど……これ正直に申告するべき?でも嘘はついてないし……。
あー、彼が眩しすぎてクラクラする。
え、まだ開始10分……私今日持つかな?




