39.頼れるお兄ちゃん
集中できないままお昼の時間になちゃったけど、心のモヤモヤが晴れる気配はない。頼れる人が1人もいないんだけどどうしよう、困ったな。
一応ネットで調べてみたけど、そんな情報1つも出てこないし。
「お、妹よ。どうした?」
「お疲れ様です。お兄ちゃん早かったね」
「今日みんな現場だっけ?」
「佑樹さん現地調査、宗さん茨城。真心斗は会議3連チャンのあと八王子」
「椿は?」
「夕方に講習講師」
「お昼は食べたか?」
「まだ」
「じゃあ奢ったる」
「ほんと?じゃあ行こっか!」
真心斗の話は本当か嘘かわからないし、佑樹さんも聞かないで欲しいみたいだし、仕事は終わらないし……とりあえずは大輝さんにも聞かない方がいいよね。というか綿貫さんの話するとお兄ちゃんモード入っちゃうし。
「椿、挙動不審だけどどうした?」
「緊張してる……デートなの、明日。え、どうしよう、どうしたらいい?」
「んー、じゃあお兄ちゃんが1つアドバイスをしてやろう」
「えー」
「明日は早めに解散しなさい」
「な、なんで!?」
「もう少し話したいぐらいで止めた方が、次に繋がると思わないか?」
「……お兄ちゃんにしてはまともなこと言うじゃん」
そんなに的確なアドバイスくれるなんて初めてじゃん!ありがとう通り越して怖いな。
「まあまあ、お兄ちゃんに任せときなさいよ。恋愛相談はなんでもしなさい」
「彼女いないくせに何言ってんだか」
でもなあ、一応聞いてみる?これで言うべきっって言われても困るけど、知らないよりは知ってる方がいいよね。
「ねえ、あのさ」
「なんだ?」
「明日のデートで……」
「さっそく相談か?」
「いや、うん。あのー、そのー……真心斗にアドバイスもらったんだけど」
「ろくなアドバイスじゃなさそうだな」
やっぱりそう思う?でも佑樹さん、否定しなかったんだよな。
「ちなみになんて言われたんだ?」
「今日は可愛くメイクしてきたので、私の目をたくさん見てください……って男の人は最初に言われたいって。言われたら嬉しいって」
「……」
「え、これほんとなの!?恥ずかしくて言えないよ!って思ってたけど、言った方がいいの?ねえ!」
それで本当にたくさん目を見られたら、私もう目を開けられなくなっちゃうよ。映画なんて観れるわけないじゃん……。そんでもって綿貫さん、優しいから本当に目を見てくれちゃいそうだし。
「椿、それは嘘だな」
「え、やっぱりそう?」
「それは真心斗が言われたいだけだ」
「そうなの!?」
危なかった……こんな恥かいたら2度と綿貫さんに会えないよ。
にしてもあいつ最低だな!そしてそんなふうに言う人がタイプだったんだ。真心斗の恋愛なんて想像したことがない。何せ興味がないから。
「真心斗どんまい」
「ん?何か言った?」
「いや、なんでもない」
まあいっか。
安心した私は、大輝さんの奢りのコーヒーを持って2人でデスクに戻り、明後日の現地調査の書類を作成。
明日の真心斗の仕事もチェック。え、なんであんな人の仕事手伝わなきゃいけないの?アドバイス鵜呑みにするところだったじゃん!
「ん?ねえ大輝さん、なんか手を回してくれてる?」
「ん?あぁ、できるお兄ちゃんだろ?」
「うん、もう怖いぐらいに」
午前中捗らなかったのに、この調子なら17時に帰れそう。定時退社なんて月1ぐらいなのに。
「戻りましたー」
「あ、佑樹さん!大輝さんに朝のアドバイスについてちゃんと聞いたもんね!」
「えっと……大輝?」
「大丈夫です、ちゃんと正しい情報に直しときました」
「さすがだ」
「っていうか佑樹さんが教えてくれればよかったじゃん」
既婚者とは思えない慌てぶりだったけど、もしかしてお付き合いした後に美英さんあれ言ったのかな。だとしたら仕方ないね。美英さん綺麗だから、思い出してキュンキュンしちゃったのかも。
今度事実確認してみよっと。




