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31.カタカタ カタカタ

「ひとまず仕事終わりだー!」

「妹に危ない役ばかり任せて申し訳ない。が、今回も見事だった」

「ま、これが仕事だからね」

 

 無事制裁完了。

 大輝さんと車に乗り込み、ヒールを投げ捨てる。そうだ、携帯、携帯。

 欲しかった名前に、思考ゼロ秒で動いた指を許してあげて欲しい。


「ねえ、大輝さん聞いてよ!返事来てる、やばっ……」


『お仕事お疲れ様です!休日出勤ですか?僕は佐藤さんにおすすめされた青春小説を読んでます。このまま夜まで読み通します笑』


 尊い。尊過ぎる。


「死にそう……ありがとうございます、アーメン」


 両手を組んで神に感謝。


「え、大丈夫?」

「あ、多田さんお疲れ様です」

「死にそうなのは高崎さん?」

「あ、全然。私のプライベートの話です」

「そう、じゃあお疲れ様。制裁部は終了で」

「了解です」


 後はデスクに戻って、報告書を書くだけ。

 

『わりと休みがぐちゃぐちゃなんです(泣)綿貫さんはお休み堪能してください』


 しかしデートのために頑張るぞなんて意気込んで会社に戻ってきたのは、18時半過ぎ。


 随時多田さんから流れてくる情報も書き加えながら、現場状況から制圧の流れまでを詳細に記していく。殺しの営業を人の命で、しかも弱者を使って行うなんて残酷非道。


「こんなやつら、早くとっちめよう!」


 拠点は潰したけど、組織のかけらも残らないように破壊しなければいけない。そのために私たちは働くのだ。


 そうやって永遠とカタカタ カタカタ。

 私もカタカタ、大輝さんカタカタ。

 そしてなぜか隅で真心斗もカタカタ。


「私もう終わりそうでーす。大輝さんは?」

「相変わらず早いな。俺は残り4分の1ってとこだな」

「え、めっちゃあるじゃん。振れる仕事あったらもらうから回してください」

「お兄ちゃん泣いちゃう。これお願い」


 思った以上にドンと来た書類と資料のメール。

 妹に遠慮はないようだ。


 静かな事務所に響くカタカタカタカタ。


「椿さん、あー、すみません……?俺のもお願いできたりしないですかね?」

「えー……」


 受け取った仕事もほぼ終わったし、あとは大輝さん待ちしようと思ってたのに。


「これいつまで?」

「……明日の11時です」

「仕方ない、貸し1ね?」

「……はい」


 現場から帰ってきた時から、永遠とパソコンに向かっていた理由がわかった。

 そしてこのままだと真心斗ははオールコース。さすがに可哀想なので助けてあげよう。


「終電、逃しちゃったね」

「お兄ちゃんが車で来てよかったろ?」

「うん、大好き!」

「よし、椿の家先だな。いいだろ真心斗?」

「もちろんです」

「今日明日は私に逆らえないね」

「……はい」


 今日も夜は納豆ご飯かな。いや、卵かけご飯にしよう。


「な、妹よ。俺と家が近いではないか!」

「え、知らなかったの?」

「知らなかったよ」


 車で15分の距離に住んでいる大輝さん。今の家の場所は特に希望は出してないから、本当にたまたま。

 つまり彼との出会いはまさしく運命!


「大輝さん、こいつまた例の男のこと考えてますよ」

「何!?」


 何考えてたっていいじゃんね。残業に付き合わせた人のセリフではない。


「じゃ、お疲れ様でしたー」

「「お疲れ様ー」」


 玄関にリュックを放り投げ、忘れていた携帯を開けば疲れ何て吹き飛んじゃう。

 

『不定休なんですね。5日も難しかったらズラせるのでいつでも連絡してください。この後2冊目突入で、夜更かし予定です笑』


 優しすぎる!遅くまで働いた身体に染み渡る優しさ。でも私がズラせないのでめちゃくちゃ頑張ります!


「あ、待って……もう夜中じゃん。流石に返事は明日のほうがいいよね」


 既読付けちゃったのに返信できないもどかしさ。

 萎えた私は疲れも相まって、そのままベッドにダイブ。翌日しわしわのスーツができあがるとわかりながら、無視して寝た。

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