17.サプライズ
「しばらく会えないかもな。あーあ」
なんて落ち込みながら選んだのは、白いプリーツスカートにミント色の春ニット。
教習所から1回家に帰り、佑樹さんと電話してたせいで、到着したのは綿貫さんの退勤15分前ギリギリ。軽く髪を直しながら、忍び足で本屋さんに入店。
「あー、今日もかっこいい」
レジを覗けば綿貫さんは接客中。とりあえず今日は何を買おうかと歩いていると、小学生の時に好きだった作家さんの本を見つけた。
「3冊、いや5冊?10冊なら文庫本だしいっか」
「今日もたくさん買ってくれるんですね」
「なっ、あ、はい!?はぁ、綿貫さん……でしたか」
「佐藤さんは毎回驚きますね」
くすくす笑う彼の、髪を耳にかける1つひとつの仕草すらが美しい。
「今日は遅いから来ないかと思いましたよ」
「あ、すみません。教習所に行っていたので」
「そうだったんですね、お疲れ様です。あの、あともうちょっとで上がりなんですけど……待っててもらえたりしますか?」
「ん?あ、はい?え、はい」
え、待っててと言われたの?そんで私「はい」って答えた?
はい!?何のご褒美?え、私待ってて欲しいって言われたんだよね?待ってていいの?いいって言われたってことは、ストーカーじゃないよね?
高鳴る鼓動で心臓が痛む中、端から本を手に取った。判断力は消え去り、どれにするかなんて決められない。
今私の脳は「綿貫さん」を処理することでいっぱいいっぱいである。
とりあえず10冊カゴに入れ、スタスタっとレジに向かう。すでに彼の姿はない。代わりに顔馴染みになった「スタッフY」さんにカゴを渡す。
もう何を言われているのかよくわからなかったけど、体が覚えていたようで記憶のないままお会計完了。
紙袋を受け取ったはいいけど、戸惑いからなんとなくお店の隅へいそいそ。
「お待たせしました」
「っな!わ、綿貫さん……」
「なんでそんな端っこにいるんですか。さっきの場所にいると思って探しましたよ」
「……へ?」
「よかったら前に行ったカフェ、行きませんか?」
「い、いいんですか!?」
「ちょうど話したいことがあったんです。よかったら奢ります」
「え、あ、そんな……むしろ私が!社会人なので!」
「ありがとうございます。じゃあ間をとって各自ということで」
話したいことって何!?そりゃ待っててって言われたからには、何かあるとは思ってたよ?
でもお茶できるの!?教習所卒業祝い?何にしてももう頭の中はパニック。
その先は彼が何を言っているのかほとんど聞き取れず、笑ってやり過ごして到着したカフェ。
「佐藤さんはホットなんですね。僕はもうアイスにしちゃいました」
「あ、そうですよね!もう暑いし……へへっ」
仕事柄アイスは氷が溶けるから、普段家でしか飲まない。いや、家でも結局仕事があるからほっとんど飲むことはない。
でも彼とお揃いになるならアイスにすればよかった。
「あ、それで本題なんですけど」
本題なんですか?それ聞いて私耐えられそうですか?
「ゴールデンウィークって空いてる日ありますか?」
「え、はい?あ、いや、まあ、多分……空いてます!」
「よかったら映画行きませんか?」
「……はい!?」
私は夢を見ているのだろうか?待っててと言われ、カフェに誘われ、映画に行こうと言われている?私の勘違い?
……え、私殺されるの?




