1.初恋
イギリス帰りの最初の朝ごはんは、コンビニで買ったチンするごはんと納豆。
1年ぶりにもらえると言われた1ヶ月の有給。しかし、送られ続ける大量のメールとチャット。
「こんなの無視無視!誰かいないかなー?」
代わりに、今日休みの人が知るために出勤簿をチェック。そして最適なターゲットを発見した。
「あ、もしもし?今日車出してよ。え?だってこのままだと私、生活できないんだもん。じゃ、よろしくね」
言い逃げするが勝ち。半ば強引に足を確保した私は、スーツケースから引っ張り出したTシャツとデニムを着る。
「日焼け止め塗って眉毛だけ書けばいっか」
連絡してから1時間弱で到着メッセージが来たけど、ミュージカルのチケット予約中だったので放置。完了メールをしっかりと確認してから家を出発。
「真心斗くん、お待たせしましたー!」
「何が真心斗くんだよ。お前、1年経ってもわがまま治ってないのな。15分も待ったんだけど?」
「わがままじゃないよ。チケットがかかってたんだもん」
「それをわがままって言うんだよ。っていうかお前が運転。ほら、交代」
「いやいや、免許ないもんね」
「は?嘘つくなよ。イギリスで運転してたって知ってるからな」
「あれはイギリスで取った免許。日本の免許は持ってませーん」
「……すぐに教習所の予約取れよ」
「はいはい。そんじゃ今日はよろしく」
「ばーか」
「真心斗こそばーか」
久しぶりの休日、久しぶりの買い物。
まずはお洋服だよね。
「はいどうぞ」
「かごを突きつけるな。そんで自分で持てよ」
そんな言葉聞こえないもんね。だって春服を前にしたら、心が躍りだすものでしょ?ストレスから解放された私に、予算なんてあるはずない。
「椿さん、すみません?パンパンで重いんですけど」
「何言ってんの?次行くよ」
3フロアをしっかりチェックし、最後に1階でアクセサリーでも見ようかな、なんて思っていたのに……。
ブーブーブーブー
「うるさいな!もしもし?うん、真心斗と一緒だよ。運転係謙荷物持ち。マジで?えー……はいはい、わかりましたよ」
休日1日目にして、職場からの呼び出し。指で肩を突いてきた真心斗を、反射的に捻りあげるぐらいにはイライラ。
「痛えよ。そんで何の電話?八つ当たりかよ」
「……17時までに来いって。有給申請の手続きしてないから」
「俺は絶対送んないからな」
「真心斗は一昨日の始末書を書いてもらうから必ず一緒に来てください、って言われたけど、何やらかしたの?」
「……お前には関係ないだろ」
「最近なんか入ってたっけ。あ、もしかしてこないだの捕獲案件、予算より弾使いすぎたとか?」
「俺……お前のこと嫌いだわ」
「お、ビンゴ?そりゃ怒られるわ」
からかいすぎたら不貞腐れて、車に戻ってしまった真心斗。仕方ないからコーヒーを買ってあげよう。私は何か新作にしようかな。
「本屋さん!」
私は隙間時間には本を読むぐらいには、本大好き人間。そして圧倒的紙派という理由から、イギリスではかさばるので買えず、あまり読めなかった。
重なるストレスの鬱憤を晴らすべく、吸い込まれるように店内へ。そして一瞬でカゴはパンパン。大満足である。
「お願いします」
「はい、お預かりいたします」
重いカゴをカウンターに置くと、体に響くドンという音。
店員さんがそれを引きずるようにずらすと、カゴの向こうに見えたのは、どこにでもいそうな好青年。よくあるシチュエーション、なんてことのない買い物のワンシーンのはずだったのに……。
――椿、18歳。人生で初めての恋をしちゃいました。
え、どうしたらいいの!?私、友達もいないんだけど?




