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修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人
第一章 修理師

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repair.90 『鋼の心音と新しい助手』

禁忌の森から帰還したリエイの工房には、今、一台の巨大な「塊」が横たわっている。ゼノスによって無残な兵器へと改造されていた古代の自動人形オートマタだ。外装の接合部は焼き切れ、内部回路はマナの過剰抽出によってボロボロになっていた。


「……ひどいな。よくこれでコアが持ちこたえたものだ」


リエイは多機能ゴーグルを装着し、人形の胸部装甲を慎重に開いた。そこには、アルス・マグナの知己が刻んだとされる、古風だが緻密な魔導紋章が、消え入りそうな光を放っている。


「リエイさん、お湯と新しい洗浄布を持ってきました! ……この子、きれいになりますか?」


ノエルが心配そうに覗き込む。彼女はすでに、人形のために予備の柔らかな布地を縫い合わせ、即席の服を準備していた。


「直せないものはないさ。……おっさん、同期シンクロの準備はいいか。こいつの記憶領域を傷つけずに、回路の再配線リワイヤリングをやるぞ」


『ふむ、任せい。我の古い知人が遺した傑作じゃ。この小娘の「魂」の置き場所くらい、我には手に取るようにわかるわい』


アルス・マグナが黄金の光を放ち、人形の核とリエイのレンチを魔力の糸で繋ぐ。リエイの指先が、目にも止まらぬ速さで断線した銀線を繋ぎ直し、汚染されたマナの澱みを取り除いていく。それは修理というより、止まった時間を再び動かす儀式のようだった。

数時間の沈闘の末、リエイが最後の一箇所を締め終えた瞬間、工房に澄んだ音が響いた。


「……個体識別信号、正常。魔導回路、全系統オンライン。……おはよう」


リエイの言葉に応えるように、人形の瞳に淡い琥珀色の光が灯った。彼女はゆっくりと上体を起こし、自分の手を見つめ、それから目の前の青年を凝視した。


「……認証。……管理者権限の譲渡を確認。……私は、迷宮管理用個体、シエル。……修理してくれたのは、貴方ですか?」


その声は、かつての悲痛な叫びではなく、穏やかな春の風のようだった。


「ああ。これからは好きに動いていい。ここは俺の工房だ」


ノエルが嬉しそうにシエルへ駆け寄り、用意していた服を着せ始める。ニーリルも隅で腕を組みながら、「ふん、賑やかになるわね」と口角を上げた。

しかし、シエルを迎え入れた安らぎも束の間、リエイは彼女のログの深層に、ゼノスが無理やり書き込んだ「ある座標」の記録を見つけてしまう。それは、迷宮のさらに深く、誰も到達したことのない「未踏域」を示すものだった。


「……シエル、お前の中に残っているこのデータ……。ゼノスはこれを使って、何をしようとしていたんだ?」


シエルの琥珀色の瞳が、一瞬だけ不安げに揺れた。

そして、緩やかに首を横に振るだけだった。

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