表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人
第一章 修理師

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/109

repair.82 『炉の残響と共鳴の旋律』

浄化された魔導炉から溢れ出した白銀の光が収束し、四人の前に立ちふさがったのは、透き通った氷の装甲を纏う魔導の巨人だった。巨人の胸部には、リエイが先ほど施した星滴麦の回路が淡く明滅している。


「……浄化の反動か。炉に溜まっていた数百年分の魔力が、守護精霊の姿を借りて暴走しているな」

リエイが多機能ゴーグルの深度を最大まで引き上げると、巨人の体表面を流れる魔力の奔流が赤い警告となって視界を埋め尽くした。

「くるぞ! ニーリル、正面を受け持ってくれ!」


「任せなさい! 礼儀の欠片もないデカブツには、少々手荒な教育が必要ね!」


ニーリルが杖を叩きつけると、足元の石畳から巨大な樹根が噴き出し、巨人の振り下ろした拳を受け止める。轟音と共に石片が舞い、衝撃波がリエイたちの頬を打つ。


『小僧、右の肘関節に因果の淀みがあるぞ。そこを突け! 我が座標を固定する!』


アルス・マグナが黄金の光輪を展開し、巨人の動きを一瞬だけ静止させた。その隙にリエイは超振動ピッケルを手に地を蹴る。


「風景化……同調開始!」


迷宮の一部として認識を逸らし、リエイは巨人の懐へと滑り込んだ。狙うは肘の魔力接合部。しかし、巨人の体表から放たれた極寒の冷気がリエイの肺を焼き、その動きを一瞬だけ鈍らせた。


「くっ、冷気が……構造破壊が届かない!」


巨人のもう一方の拳がリエイを狙って振り下ろされる。回避は間に合わない。


「リエイさん! させません!」


間一髪、ノエルの奏でる鈴の音がリエイの周囲に「遅延発動型障壁」を構築した。アルス・マグナの助言によって進化したその壁は、巨人の一撃を物理的な衝撃ではなく、霧のようなマナへと分散させて受け流す。


「助かった、ノエル! そのまま共鳴を維持してくれ!」


「はい! 鈴の音を……回路の鼓動に合わせます!」


ノエルが必死に鈴を振り続け、炉の駆動音と自身の魔力を同調させていく。すると、巨人の動きが目に見えて緩慢になった。炉そのものが、ノエルの奏でる音色を「正しい主の声」と認識し始めたのだ。


「ニーリル、関節の氷を剥ぎ取れ! ノエルが抑えている今なら通る!」


「いいわよ! 氷の彫刻にでもしてあげるわ!」


ニーリルの魔力が一点に集中し、古代の技術である


「因果の点打ち」が放たれた。巨人の右腕を支える氷の装甲が、まるでガラス細工のように音を立てて砕け散る。


「……今だ。構造解体、出力最大!」


リエイは剥き出しになった魔力回路へ、魔導レンチを叩き込んだ。超振動が汚染の残滓を粉砕し、星滴麦がもたらした正常な循環を炉の深部へと押し流す。

巨人は一瞬だけ天を仰ぐように静止し、やがて粒子となって静かに霧散していった。残されたのは、以前よりも力強く、かつ穏やかに脈動を続ける大魔導炉の駆動音だけだった。


「……ふぅ。これで本当に、お掃除完了だな」


リエイがレンチを収めると、肩で息をしていたノエルが、安心したようにその場にへたり込んだ。


『ふむ。職人と魔導師、そしてハイエルフ。なかなかに見事な不協和音であったな。小僧、これならば次の深層も退屈はせぬだろう』


アルス・マグナが満足げに揺れる中、リエイは浄化された炉の表面にそっと手を触れた。そこには、長い眠りから覚めたばかりの道具が発する、心地よい微熱が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ