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修理師リエイのほのぼのクラフト生活  作者: 弌黑流人
第一章 修理師

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repair.78 『深淵への裏門(バイパス)』

ニーリルとノエルが地上の安全のために地下空洞を完璧に封鎖したばかりだ。そこを再びこじ開ける愚は犯さない。リエイは工房の床に敷かれたラグを剥ぎ、ヴィンセントすら欺いた「黒い円盤」の前にしゃがみ込んだ。


「……おっさん、座標の固定を頼む。養成所の地下空洞を垂直にバイパスして、マナの腐敗が最も濃い座標へ直接叩き込むぞ」


『案ずるな。因果の糸は既にその深淵を捉えておる。小僧、準備は良いか?』


アルス・マグナが青白い燐光を放ち、円盤の縁に黄金の術式を刻み込んでいく。リエイは愛用の魔導レンチを円盤の中央に突き立て、空間を無理やり抉り広げた。


「ニーリル、ノエル。留守を頼む……と言いたいところだが、この先はあんたたちの力も必要になりそうだ。ついてこい」


「もちろん! リエイを一人で行かせるわけないでしょ!」


「はい、私も……皆さんの力になりたいです!」


四人と一個の影が円盤の深淵へと吸い込まれ、次の瞬間、彼らは全く見覚えのない石造りの回廊に立っていた。


【転送完了:地下深層・遺棄された大魔導炉跡地】


多機能ゴーグルの視界には、迷宮探索用の自動書き込み用紙が空中に展開されている。リエイが魔力を注ぐと、用紙には現在地からさらに深層へと続く一本の道が、黒いインクで生々しく描き出された。


「……変だな。ここは本来、迷宮の生態系が激しい場所のはずだ」


カイルが盾を構え、周囲を警戒する。しかし、そこには魔獣の一匹も、羽虫の音一つしなかった。ただ、ねっとりと肌にまとわりつくような、異常な重圧感だけが満ちている。


「モンスターがいないんじゃない。……この『気配』に当てられて、逃げ出したか、消されたかのどちらかよ」


ニーリルが杖を握り直し、珍しく真剣な表情で回廊の先を見つめた。

一本道の回廊は、下へ、下へと緩やかに続いている。入り組んだ分岐もなければ、仕掛けもない。ただ、進めば進むほど、空気中のマナが「腐った沼」のような臭いを放ち、ゴーグルの数値が限界を超えて点滅し始めた。


「……ひどいな。回路が窒息しそうだ」


リエイは自身の魔力循環を最小限に絞り、背景と同化することでその不快感をやり過ごす。

道端に転がっている古い魔導灯は、内部の回路が黒く焼け爛れ、まるで断末魔をあげて死んだかのように沈黙していた。


『ふむ……。この先の空間、因果が捻じ曲がり、理が死んでおる。この「大魔導炉」の跡地、何者かが再び火を灯したようじゃな。それも、最悪の燃料を使ってな』


アルス・マグナの警告が、無機質な石の壁に反響する。

足音だけが響く静寂の回廊。その突き当たりにある巨大な鉄の扉の向こうから、ドクン、ドクンと、脈動するような不気味な音が漏れ聞こえていた。


「……行くぞ。この『故障』を放置してたら、地上まで腐り落ちる」


リエイは重い扉に手をかけた。その指先に伝わる冷気は、もはや魔力ではなく、純粋な悪意に近いものだった。


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