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とある苦労人side

 

 のし上がった連中はスタンリーの爺を今でも恨んでいる筈だ。

 自分で選んだとはいえ、捨てた物の代償あっての地位だ。

 彼らが犠牲にしたのは何なんかは分からない。家族か、恋人か、友人か、誇りか……あるいは全てなのかもしれない。それでも結果として地位と名誉を得た。ところがスタンリーの爺が台頭した事で誤算が生じた。自分達の立場がどんどん悪くなっていき最終的には政界からの追放。表向きの理由は違うが、政治の世界から排除される形で辞めさせられた。「こんなはずではなかった」と思った奴は多いだろう。苦労して得た地位と将来を奪われた、許せないと思った筈だ。

 それでもスタンリーの爺に報復するにはリスクがあり過ぎる。その恨み辛みが何処にいくかというと……王都に居残っている元スタンリー派閥だ。本当なら爺の家族にその矛先が向かうが、一族揃って領地に帰っているから出来ない。物理的に距離があり過ぎるからな。


 

「追い落とされた人達の憎悪の的になりかねない立場ですからね、ヤルコポル伯爵は。これからも沢山の受難が伯爵に襲いかかってくるでしょう。上層部とその家族の怨念に飲まれないように周囲には気をつけてください」


 気を付けた処でヤルコポル伯爵がスタンリーの爺の身代わり(生贄)と化す事は避けられない。連中は大なり小なりヤルコポル伯爵に対する嫉妬もある。追われた連中らの中にはヤルコポル伯爵と同じように後ろ盾を持たない立場だった人間も多い。実力はあっても上にいけない連中がなりふり構わず行動して成り上がった背景は大概が薄汚れているものだ。連中にしたら()()()()ヤルコポル伯爵に対する妬みはある筈だ。理不尽な妬みだが、ヤルコポル伯爵はそういったものを背負って行かないといけない。


 

「……それは、君の考えか?それとも一般的な考えか?」

 

「世間一般の考え方です」


「……私はこれからどうすればいいんだ?」


 

 知らねえよ!

 そんなこと自分で考えやがれ!


 と、言えたら楽だろうな。

 

 

「新政権に自分の有用性をアピールしていく他ないでしょう。自分という存在を失えば政治が上手く回らないとでも脅しをかけながらね。それとも彼らが疑っているように自分の派閥を作って政権を奪うか……この場合、ヤルコポル伯爵の派閥に入ってくれそうなのは元スタンリー派の人間でしょう。流石、スタンリー元宰相閣下の下に居た人材だ。実力だけはあります。ただ、これは捨て身の作戦に近いので逃げる選択は絶対にできません。新政権の喉元を食らいつくさなければヤルコポル伯爵側が危ないですからね」


 どっちも地獄だ。

 他人事ながら可哀そうな伯爵様だ。


「……スタンリー元宰相閣下に戻ってきてもらうという事は出来ないのだろうか」


「それは絶対にムリです。そもそもスタンリー元宰相閣下の復帰を望む者は新政権にはいません。王太子殿下も同じです。彼らはスタンリー派を一掃する事で協力関係にあります。因みに、和解も絶望的ですのでご了承ください」


 

 だから、爺に助けを求めようなんて考えは起こすなよ!


 

 



 

 


 

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