「私は王女です」
えーと……この王子は、何をわけのわからない単語を並べているのだろうか。この世の中には、何をどう間違っても『私=王女』という等式は存在しないし、そんな要素はどこにもない。私は一般市民だ。一般市民なのだ!
でも、それならなぜ王子はあのような言葉を発したのだろうか。ーー全て説明はつく。おそらくこれはテレビのドッキリか何かだ。後で「残念、冗談でした!」と言って、私の反応を楽しもうとしているのだ。
ーーとなると、それに騙されるのは、私のキャラとはいえないだろう。
「あーはいはい、王子もなかなか演技がうまいですね。そろそろ俳優に転向しますか? ふふ、私にはわかっていますよーーそんな非論理的なことは起こるわけがないのです。私が王女だなんて! 王子、もう少し上手なドッキリはできなかったんですか?」
「むむ、そう来たかーー確かにそうだよね。信じられないのは無理もないと思うよ。でも、君がなんと言おうと、これは事実なんだよね」
王子はまだドッキリを続けたいらしい。さすがにもう無駄でしょうーー視聴者は完全にドッキリだと気づいているはずですけどね。これ以上やっても、恥をかくだけですよ?
「じゃあ、証拠を見せたい。ちょっとそのペンダントを貸してほしいんだけど」
「はあ……何も出てきませんよ」
私は王子に例のペンダントを渡す。すると、王子はどこからか針を取り出し、ペンダントのメイン、宝石部分を押した。ーーと、ペンダントが二つに割れ、中から一枚の紙が出てきた。
「思った通りだーーさっそく読み上げるよ」
王子は勝ち誇ったような顔をしている。
「『このペンダントの持ち主になっているであろう女性は、天原王国の第三王女、天原紀斗奈である。これを見た者は、彼女がそのような身分であることを、天原王国中に公表しなければならない』ーーどうだい、これで文句はないだろう」
なんだかすごいものが出てきている。まさか私も、これほどのものだとは予想していなかった。かなり現実味がある。
「い、いや、まだわからないでしょう……だれかがこっそり入れておいた可能性も……」
王子は紙の左下をとんとんと指差した。
「これを見てもか?」
「……あっ!」
見ると、そこには判が押されていた。天原国民ならだれでも知っているマークだ。要するに、それは王国公式の玉璽だったのである。
さすがにドッキリといえども、玉璽まで偽造したりはしないだろう。となると……
「マジなんですかぁっ!?」
「マジだよ。ていうか言葉遣いが悪いよ王女ちゃん。『本当なのですか?』だろ」
自分も言ってるくせに。
「まあまあ、せっかく王女だとわかったのだから、何か挨拶でも」
どういう流れなんだ? でも、せっかくだからやってみよう。よくある悪役令嬢を思い出して……
「みなさん、わたくしは新しく天原王国の王女になりました、天原紀斗奈ですわ! よろしくお願いいたしますわ!」
「おー、うまいじゃないか。さすが恋愛小説家は違うな」
王子がにやにやと見てくる。ーーちょっと恥ずかしい。でも、これが私の日常的な言葉遣いになるのかもしれない。




