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隔たりを埋めるのは愛

レジィ。

旧ザラン砦に居を構えていた魔王の鱗スケイル討伐戦の際に出会った少女。

近接戦で激しく動くユイやニイル、コマチの間をすり抜けるようにスケイルの鎧の隙間を撃ち抜くほどの弓の腕前を持っている。

細やかな気配りが出来、戦闘後に力尽きていたユイの介抱を買って出てくれていた。

強く優しい少女だと思っていた。

そのレジィが、ミハルを空中で拘束したまま浮遊し、ユイ達と対峙している。


レジィが指を立てれば、闇が不気味にうねり、形を持って練り上げられてゆく。

筒を二つ並べたような闇が出来上がれば、光と爆音を吐き散らし、ほぼ同時に防壁を爆発が襲う。

それはまさに、ズレイゴス村に降り注いでいた流れ星のような攻撃そのものだった。


「ある程度の防壁を貼られるのは想定していたけれど……ここまでとは、流石に想定外だわ」


唇を尖らせ、不服というように呟く。

ならば彼女は。

彼女こそが、ムーシャが感知し、ユイ達が接近に身構えた『魔王の血』ドークに間違いない。


「……俺達を、騙してたのか。『魔王の血』、ドーク」


いつの間にかユイの横に並び立っていたニイルが、空を見上げて低い声で呟く。

槍の表面をばちりばちりと電気が行き交っており、今すぐにでも飛び出しそうな勢いだ。


「騙してたなんて人聞きの悪い。

 そっちのギランの手下やあの頭のおかしな女と違って私は純粋に……なんなら貴方達よりも純粋に心の底からユイ様のために働いてましたよ。

 そもそも魔族になったのもつい最近ですし」


朗々と語るレジィ。その瞳に一切の陰りはない。心の底から。少なくとも彼女は今なおそう思っているということだ。

だとすれば、繋がらない。あの頃の彼女と今の彼女には大きな隔たりが存在している。


「だったらなんで、こんなことを」


ユイの問いに、レジィはただただ穏やかな笑顔で返す。


「ここまでやれば、きっとユイ様にも私がどれだけ本気か伝わりますよね」


受け答えは恙無く、だが決して隔たりは埋まらない。


「ユイ様に逢って、一緒に戦って、一緒に旅をして……その間、ずっと、ずっと、考えてたんです。

 ひたむきに夜明けを目指すユイ様のために、私に何が出来るのか」


片手でミハルを器用に抱きとめ、その顎に指を這わせながら、夢見るように口にする。


「色々遠回りもあったけど、ようやく分かったんです……」


視線が交わる。

まるで救いの手を差し伸べるように、レジィがユイに手を伸ばす。

そしてレジィは、満面の笑みのままで口にした。


「私が、ユイ様の夜明けになればいいんだって!」


その言葉に、ユイはなんと答えればいいのかわからなかった。

ユイの混乱を他所に、レジィは続ける。


「もう、無理して危険に身を投じる必要はないんです!

 貴方の愛のおかげで私がこんなに強くなりましたから!」


……


「私がユイ様だけの太陽になりますから!」


……


「だから、私の手を取って! 一緒にいきましょう、ユイ様!!」



……


……


沈黙。

それ以外に答える術がなかった。

ニイルも、ガルグも、ランドリューも、サバラも、当然ユイも、何も言えなかった。


「ガルグさん、あの人ひょっとして頭がおかしいんじゃないですかね」


ただ一人、ムーシャだけは、いつもの調子で口にした。

私生活多忙のため、次回は4月17日投稿を目指します

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― 新着の感想 ―
[良い点] そもそもこの勇者パーティ(旧)はアタマのおかしなやつだらけな気がします
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