魔女の呪い
魔女の呪い
ご機嫌よう。マルゲリット・アルカンシエルです。今日はあんまり元気がないです。何故なら…魔女に呪いを受けたからです。
虹の森での一件以降、学園は休校となり、私達王族は魔王征伐のためにあらゆる手を尽くすことになったのですが、そこで北の魔女に助言を求めることになったのです。ところが北の魔女は見返りとしてシュテル様との婚姻を望み、シュテル様がそれを断り助言も要らないと突っぱねた為に婚約者である私が呪いを受けたのです。
何故最初からそうなると分かっていたのに敢えて北の魔女に助言を求めるのを止めなかったかというと…そう、北の魔女から呪いを受ける為だったりするのです!
呪いを受けると、呪いの度合いにもよりますが高確率で魔力の覚醒が起こります。そして呪いによる魔力の覚醒が起きた場合、闇の魔力を得られるのです。聖剣、サントテネーブルエペを得るためには世にも珍しい闇の魔力が必要なので、むしろこれは好機なのです!
原作ではここで姉姫さまが第二次覚醒を起こし、光の魔力に次いで闇の魔力を得られるのですが、優しい姉姫さまは聖剣で魔王を殺す事をよしとはせずに、光の魔法を使って封印の道を選ぶのです。
その点私なら覚悟を決めて魔王を殺す事も出来る…はずなので、これで良いのです!
「うぅ…」
にしても、怠いです。身体が重い…頭が痛い…喉がイガイガする…身体の節々が痛い…くらくらして気持ち悪い…うぅ。やっぱり呪いは、生半可な気持ちで受けるものではないようです。
「私の可愛いメグ…こんなに高い熱…どうしたのかしら…宮廷治療術師さん達もお手上げ状態なんて…」
姉姫さま、そんなに心配しなくても大丈夫です。第一次覚醒さえ来れば、すぐに元気になるのです。…まあ、逆に魔力の暴発が怖いのですが。
「メグ、見て。シュテル様がメグに、可愛い花束を持ってきてくださったのよ。魔王征伐の為に、一緒に居られないのが悔しいって言っていたわ。お父様も、さっきまでメグの側で執務を行っていたのよ。今は魔王征伐の為に会議を行っているから、席を外しているけれど…すぐにまた来てくれるわ。ノルも、貴女のために朝摘みのバラでブーケを作っていたの。ね、皆メグを心配しているわ。だから…病気なんかに負けちゃダメよ」
そういう姉姫さまの目は潤んでいる。ああ、呪いを受けていなければすぐにその涙を拭って差し上げるのに。何も出来ない私は、私の手を握ってくれている姉姫さまの手を弱く握り返す。
「…メグ。大丈夫。大丈夫よ。私が一緒にいるわ」
…思うと、いつもこうやって姉姫さまに心配ばかりかけています。いつも姉姫さまを守りたいだけなのに…ごめんなさい、姉姫さま。
しばらくそうしていると、トントン、と、部屋の扉をノックされました。姉姫さまがどうぞ、というと一人の若い…訂正、若く見える美しい魔法使いが現れました。彼はソルセルリー・アストロロジー。旅の魔法使いで、聖剣、サントテネールエペを見つける人。原作では結局使わなかったけれども、魔王を征伐しようとする今、重要な人物です。
「あら…治療術師さんじゃないのね。貴方は?」
「ソルセルリー・アストロロジーだ。俺の古い友人がまた馬鹿を仕出かしたみたいだから、尻拭いをしに来た」
「…、えっと、どういうことかしら?妹は今、病を患っていて…私も看病で忙しいの。後で済む用事なら、後にしてもらえるかしら?」
姉姫さまは状況がよく分からずに困惑している。と、その時パパも部屋に入ってきた。
「お父様!」
「リュディー。どうやらメグは北の魔女に呪いをかけられたらしい。こいつは北の魔女の古い友で、メグを助けにきたらしい」
「の、呪い!?なんてこと…っ」
姉姫さまの顔色が真っ青になります。パパも心なしか顔色が悪く、目元にクマが出ています。
「これからこの姫さんの身体に干渉して、強制的に第一次覚醒を引き起こす。それで助かるはずだ」
「は、はずって…」
「少なくともこのまま放っておくよりよっぽどいいだろ」
「…俺の愛娘に下手な真似をしてみろ、その軽い頭は二度と身体にくっつかないからな」
パパが殺気立っています。
「安心しろ、悪いようにはしないさ」
「で、でも…っ」
「リュディー、今はこいつに任せるしかない」
「…っ!」
姉姫さまは、ゆっくりと私から離れ、ソルセルリーに頭を下げて一言。
「妹をお願いします」
「任された」
そしてソルセルリーが私の額に触れると、私の身体が闇に包まれた。そして、次の瞬間には暗い闇が私の宮を覆いました。
魔力の第一次覚醒です!
すごい!身体が軽い!力がみなぎるよう!
「姉姫さま!」
「メグ!」
暗い闇も晴れ、呪いを跳ね返して身体が再び自由になった私は、姉姫さまと抱きしめあいます。
と、そのままソルセルリーに首根っこを掴まれて止められます。
「まだ完全に処置が終わったわけじゃない。大人しくしていろ」
「はーい」
パパで高圧的な態度に慣れている私は、ソルセルリーの態度にも特に何も思わず、そのまま受け入れます。
「これから魔力の暴発を抑えるために、お前の魔力を引っ張り出して形にする」
「使い魔的なものだよね!」
「…知ってたのか。そう。使い魔と似て非なるもの…聖獣だ。」
「聖獣?」
「闇の魔力を持つものだけが手に入れられる特別な使い魔のようなものだ。闇の魔力を持つもの自体が少ないから、あまり知られていないが…闇の魔力を暴発させないように、ある程度の闇の魔力を身体の外に引っ張り出して形にする。そいつに定期的に魔力を食べさせる。そいつはどんどん強くなり、主人を守る。…とまあ、そういうわけだ」
「そうなの…つまりメグには特別な力があるのね!」
「簡単に言えばな…さあ、行くぞ」
そうして私の額に手を当てるソルセルリー。出来上がった私の聖獣は…。
「え?鳥の、雛?」
「まあ!可愛いわ!」
「おい、これで娘は本当に大丈夫なんだろうな」
「ああ、問題ない。無事に成功した」
パパは安心したようにため息を吐く。姉姫さまは私の聖獣に興味津々のご様子。原作では、姉姫さまの聖獣は猫だったのにな。でも鳥の雛も可愛いからいっか。
「それで?名前はなんてつけるんだ?」
「…うーん。ファン。ファンにする」
魔王を終わらせるもの。ファン。うん、我ながらナイスなネーミングセンス!
「ファン!可愛い名前ね!」
「…ふ、メグは名付けの天才だな」
「ふふ、もう、パパったらー」
「じゃあ、そういうことで俺は失礼する」
おっと、ソルセルリーを逃がすところだった。
「ちょっと待った」
「なんだ」
「ソルセルリーを凄腕の魔法使いと見込んで、お願いがあるの」
「…ほう?」
魔法使いとの出会い




