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2023/2/2全文改稿
その後の授業も委員長は戻って来ず、誰も行方を知らないまま、放課後を迎えてしまった。
なので、何事もなかったかのようにホームルームを済ませて終わらせようとする若い担任に、副委員長の羽根村が手を挙げて尋ねた。
「先生。生駒が授業を抜け出してから戻って来ないんですけど、何か知ってますか?」
「えっ?」
担任はビクッと体を震わせる。
「えっと……その……生駒さんは体調不良で早退されたと……聞いています……」
もっと堂々としていればいいのに、担任の白永先生はいつもおどおどしている。
「先生は生駒と話していないんですか?」
「えっ?」
「数学の授業で何があったのか、知らないんですか?」
「え、あの、その……」
先生は挙動不審になる。
後ろの席をチラリと振り返ると、普段は温厚な羽根村もこれには顔をしかめていた。
先生がそんなに不安そうにしていたら、こっちまで不安になってくるじゃないか。
「他の授業があったから簡単にしか聞いてなくて……ま、また確認しておきますね。じゃ、じゃあ皆さんさようなら!」
先生は逃げるようにして教室を出て行った。
何だあれ……
「やれやれ……。俺、変なこと言ったかな?」
「そんなことないと思うけど……」
羽根村はただクラスメイトの行方を尋ねただけだ。
なのに、あんな反応されるとは……
「そういや荒波、今日助っ人来てくれんの?」
「……ああ……そうだな。約束してたもんな」
羽根村は、俺が助っ人に行くと約束していたサッカー部に所属している。
いつでもいいから練習に参加してくれと先輩たちからもお願いされていたし、今日顔出すつもりでいた。
このまま俺も羽根村と一緒に行くか……と立ち上がった……が。
「どこへ行くんですか」
「うおあっ!?」
後輩、華村が仁王立ちしていた。
眼鏡の奥の目がジトッと俺を見ている。
「何でいるんだよ!」
「先輩方を呼びに来たに決まっているでしょう。放課後、吹奏楽部に行く話でしたよね?」
「あ……あー……」
完全に忘れていた。
「でもさぁ、勝手に森宮が言ってるだけで、こっちは行くなんて一言も言ってないじゃん」
「だから行くんですよ! ああいう人はこちらの都合などお構いなしに、来るまでしつこく言い続けますよ! だったらさっさと出向いてやって終わらせるべきです!」
後輩のものすごい剣幕に圧倒される。
「荒波。先輩には俺が言っとくからいいよ。また明日でもいいから」
羽根村にも気を遣われてしまった。
すまん……
「さぁ、行きますよ! 先輩方!」
張り切っている後輩。
クレハは自分の席でため息をついている。
「逃げようと思えば逃げられたんじゃねぇの?」
「面倒だが華村の言うことも一理あると思っただけだ。俺はあいつと同じ部屋だから、逃れることはできないしな」
そうだった。
あいつと同じ部屋とかどんまいすぎる。
「何を呑気に喋っているんですか! 早く歩いてください!」
「はいはい。わかったって……」
後輩に急かされながら、俺たちは吹奏楽部が集まる音楽室へ向かった。




