敗走
パヴロ聖王国の聖王都より少し外れた、緑の大地で行われているアースウェイグ帝国対ヴァルゴ古代兵器興業国、ゼレイヤ黒魔術王国連合軍の対戦は終結を迎えようとしていた。
ヴァルゴ国軍、本陣。
ヴァルゴ国王にして【幻惑の影】ウルグス元竜王は手傷を負っている上に顔中汗をたらして、脇に控えるゼレイヤ国の上級黒魔術師【ルカ】に目を血ばらせ、叫ぶ!
「リスティアード皇太子は殺したのか?」
ルカは何も言わない、、、
ウルグスは更に苛立ち、大声で叫ぶ!
「どうした!ゼレイヤの罠は上手くいったのか!」
ルカが黒く深く輝く目をウルグスに向け、苦しそうに声を吐き出す。
「わ、わが、ゼレイヤ黒魔術師が、、、ぜ、全滅しました、、、」
ウルグス国王は驚きを隠そうともせずに
「100万の黒魔術師とルナブ国王陛下が、ま、負けたというのか、、、」
上級黒魔術師ルカがアルセイス武神将に切断された右手を上げて自らの顔を覆う、、、
「リ、リスティアード皇太子たった一人に、我国は全滅されました、、、」
ウルグスは思わず苦しそうにつぶやく
「馬鹿な、、、」
そこにヴァルゴ国軍の機甲兵士が駆け足で飛び込んできた。
「報告いたします。」
「我軍、主力後衛部隊壊滅。残すはこの本陣のみでございます。」
ウルグスは自ら傷口を掴み抉る。
追い詰められた、魔の真甦を持つウルグスは、悔しさのあまり自傷行為をする、、、、双方の目は紫色に爛爛と輝いていた。
「ぐ、ぐぅうう!!」
脇に控える上級黒魔術師ルカは、今の報告を聞き、、、
自ら、命を絶った、、、
黒魔術を自らにかけ、前のめりに倒れ、心臓の鼓動を止める。
ウルグスは顔中汗をかき、紫色の双方の目を異様にぎらつかせながら、報告に来た兵士に苦しそうに、声を絞り出し命令を下す。
「て、撤退する。兵士を集めよ。」
「本陣の兵力は撤退する時間稼ぎの為、全力で守護させよ」
報告に来た兵士は動揺しながらも
「は、はい、かしこまりました。」
と言い、玉座の間を後にする。
ウルグスは屍が累々と残る、パヴロ聖王国聖王都 玉座の間で一人呟く、、、
「アースウェイグ帝国が、これほど強いとは、、、」
ー戦場ー
アースウェイグ帝国軍陣
ヴァルゴ国軍主力後衛部隊を殲滅した、帝国軍本陣に、、、
何事もなかったように、、、
突然、、、
リスティアード皇太子殿下は、、、
出現した。
レィリア・アストネージュ武神将が直ぐ様、駆け寄り
「リスティアード皇太子殿下!ご無事ですか?」
と心配そうに金麗美女武神将は切れ長の目を潤ませ、今にも抱き着かんばかりだ。
皇太子は端然と佇み
「心配かけたね、レィリア。僕は大丈夫。」
ランガードが魔鉄剣を右手に持ちながら、走ってくる。
「それで、ゼレイヤはどうなったんだ」
黄金の鎧を煌かせて、皇太子は悠然と「ご馳走様」とでも言うかのようにごく自然に
「全部、やっつけて来たよ」
俺は大きな口を開けて、吠えるように叫ぶ
「それでこそだ!大将」
「こっちも残すはウルグスの本陣のみだ!」
ヴァルゴ国軍主力部隊後衛を打ち破った、アースウェイグ帝国軍は一時、戦闘を止め本陣周辺に集まっていた。
各武神将、准将が各騎士団の先頭に立ち、最後の号令を待つ。
6万3千名の【帝国騎士】全ての目がリスティアード皇太子殿下に注視される。
リスティアード皇太子殿下は威厳ある堂々とした歩き方で、前に進み出る。
黄金の愛剣を抜き、高く掲げてよく通る大声で言う。
「人類の敵、ゼレイヤ黒魔術王国は大陸より消滅した。」
「残るは、ヴァルゴ古代兵器興業国 国王ウルグスのみだ!最後まで気を抜かず、皆の奮闘を願う」
「私に続け!!」
「「「「おうっ!!」」」」
「「「「焼き払え!!」」」」
緑の大地に、【帝国騎士団】の鬨の声がこだまする。
アースウェイグ帝国 国旗と皇太子旗、12騎士団旗が風に|靡《なび》き、大地に翻る。
緑の大地の丘、始めにアースウェイグ帝国軍が布陣していた、場所では大きなテントが張られ、メイラ率いる治癒部隊が総動員して、今も治療に全力を尽くしていた。
いくら、損耗被害が少ないとは言え、全くない訳ではない。
傷ついた騎士は次から次に運ばれてくる。
メイラが叫ぶ
「その方の治療は、私がやります。こちらをお願いします。」
「怪我の程度に合わせて、運んで下さい!!緊急を要する重傷者は奥へお願いします。」
テキパキと指示し、治癒部隊を最大限有効に活用しているメイラだった、、、ここでも戦闘は行われているのだった、、、治療という名の戦闘が、、、
メイラは忙しい中で、ふと思う
(ランガード様、ご無事で、、、)
ー帝都アーセサス 黒曜天宮 謁見の間ー
玉座に座すは、第87代皇帝ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ陛下である。
謁見の間は、ヴァルゴ、ゼレイヤ連合国戦役後方総指揮所として、騒然と慌ただしく高級官僚や武人、貴族、兵士、文官が出入りを繰り返しており、ごった返していた。
その中心には、アルフィス・アソルト・アグシス国務長官が総指揮を取り、的確にそれぞれに指示を出し、報告を受ける。
その姿は、さすがは元黒龍騎士団団長にして武神将である威容と威厳に満ち、全く慌てる事無く、冷静にそして静かに低くよく通る声で、それぞれに指図する。
武人が駆け込んできて、アグシス国務長官の前で右膝を付き報告する。
「我軍はパヴロ聖王国聖王都外周にある緑の大地にて、敵軍と交戦中なるも、敵軍はほぼ壊滅。敵軍本陣を残すのみとなりました。」
「尚、我軍の損傷は至って軽微との事です。」
アグシス国務長官は一言「わかった」と言い。
皇帝陛下の方を向く。
皇帝陛下は「うむ」と国務長官に頷き、錫杖を右手に持ち、威厳を放ちそこに座す。
アグシス国務長官は周囲の高級官僚に向かって指示する。
「他国の大使館、大使全員に戦況を報告しなさい」
「そして、あくまでも余計な事はしない様、釘を刺しておくのです。」
「国境警備の警護は厳重に!不振な動きがあれば直ちに報告させるように」
「はっ」と返答し、それぞれ役目を果たしに謁見の間を飛び出していく。
ひと段落して、アグシス国務長官は皇帝陛下の玉座まで歩んでいく、周りにいる人ごみは自然と、アグシス侯爵に道を譲る。
剣聖アルセイスの父親は皇帝陛下のすぐ隣に立ち、静かに小声で話しだす。
「リスティアード皇太子殿下の申す通りの事でございましたな、陛下。」
「いろいろ、調べましたところ、ヴァルゴ古代兵器興業国は古代兵器を数多く復刻させて、大陸制覇を目論んでいたようです。」
「ルミニア王国、パヴロ聖王国が数日も持たず、陥落いたしましたのは古代兵器の威力とゼレイヤ黒魔術王国の妖の兵士が原因と判明いたしました。」
「いち早く、皇太子殿下が動かなければ、どのような事態に陥っていたか想像がつきませぬ」
ルグナス皇帝陛下は静かに目を閉じ小声で二人だけに聞こえるように話す。
「余も年老いたのであろうかのぅ、アルフィス」
アグシス国務長官を名で呼ぶ、ルグナス陛下
「火急な危険対処方法に間違いがあってはならぬ、臣民の生命財産、国土を守るのが、皇帝の務め。」
「間違った判断をしてはならぬのが、アースウェイグ帝国皇帝よな、もし間違った判断をしたら、、、ランガード武神将の言う様に、、、」
「【ケジメ】を付けねばならんのぅ」
アグシス国務長官は何も言葉には出さなかった。




