パヴロ聖王女決死の守護戦
アースウェイグ帝国軍 帝国騎士の象徴たる【武神将】の一斉攻撃は苛烈を極めた。
それ以上に3人の聖剣主達の人知を無視した、一方的で無慈悲な猛攻はパヴロ聖王国の大地をも破壊し、ヴァルゴ国軍に大打撃を与えた。
それにも増して、リスティアード皇太子の【力】の開放はまさに神の如く、瞬殺で何万もの敵兵を消滅させる。
アースウェイグ帝国軍 帝国騎士団は陣形を組み、ヴァルゴ国軍に向かって突撃を開始した。
大地が揺れる。
6万3千騎の竜騎馬の全力進撃は緑の丘を駆け下りていく。
帝国騎士団の最後尾に配置された、黒龍騎士団元千竜騎士長のリュギィ・コネル一兵卒と同じくブリッシュ・アンツ一兵卒の二人は話し合っていた。
「聖剣の威力は、何度見ても、ありえないエゲツサだな。肝が冷えるほど凄まじいぜ。」リュギィ・コネルが相棒のブリッシュ・アンツに語り掛ける。
ブリッシュは「あれをやられたら、どうにも出来んだろうな、、、しかしヴァルゴ国軍がこのまま、一方的にやられるとは考えにくいな」
リュギィが「敵にとって、起死回生の一発逆転があるとしたらなんだろうな?」
ブリッシュは考え込みながら「帝国軍にとって、今一番のアキレス腱か、、、」
「「、、、、、、」」
「「!!」」
二人共、思いついたのだ。
「「ルビリア聖王女だ!!」」
リュギィが幼馴染に緊迫しながら「皇太子殿下が、ルビリア様を守護している場所は、、、」
「「後方支援部隊の中だ!!」」
「護衛は帝国騎士1千名と機動歩兵士団2万、、、」
「ゼレイヤ黒魔術王国の兵士は空間を飛び越えてくるぞ、、、」
「「まずい!!」」
リュギィとブリッシュは近くにいた上官の十竜騎士長に
「リュギィ・コネルとブリッシュ・アンツはルビリア聖王女護衛の為、現場を離れます!」
十竜騎士長は元千竜騎士長殿の言われるがまま、命令として聞き、アルセイス団長に連絡を頼まれた。
千竜騎士長ともなれば、所属の団長と真魂交神はしているものだが、今は戦闘の最中一兵卒が交信してよい状況ではない。
二人はそう判断し、上官の十竜騎士長に伝言を頼んだのである。
2騎の竜騎馬が戦列から猛烈な勢いで、後方へ駆け離れていく。
アースウェイグ帝国軍機動歩兵団は真甦を持たない普通の兵士で構成されている。
指揮官や隊長級だけは真甦を持つ者がいる。
ヴァルゴ古代兵器興業国軍はアースウェイグ帝国軍最強の初撃で総兵力の半数を失った。
18万対6万3千の戦いで始まった、大決戦は開始早々に既に9万対6万3千に変わっていた。
更に帝国騎士団の怒涛の進撃が続く中、ヴァルゴ国国王ウルグスは焦りの色を隠す事も無く、隣の上級黒魔術師ルカに向けて、大声で命令する。
「例の作戦を実行しろ!!」
上級黒魔術師ルカは黒く深く輝く双方の瞳をさらに不気味に光らせて
「御意」
と一言だけ、答える。
黒龍騎士団のリュギィとブリッシュは焦っていた。
愛騎の竜騎馬を物凄い勢いで疾駆させ、後陣の支援部隊に向かっていた。
パヴロ聖王女ルビリアは、後方支援部隊の中でも最も後方に【帝国騎士】1千名に守られ、その前衛に2万名の機動歩兵団が護衛に付いていた。
帝国騎士の責任者は最年長の武神将率いる、虎翼騎士団所属の千竜騎士長バウス・リッシュである。
年齢32歳【土の真甦】所有者の練達熟練、経験豊富な千竜騎士長である。
大戦に参加できずに、悔やむような人柄ではない。
いかなる任務も確実正確にこなす帝国騎士であった。
バウス・リッシュが異変に気が付いたのは、全帝国騎士団が緑の丘を下り突撃していく最中であった。
前衛の機動歩兵団2万が、ざわついているのだ。
直ぐ様、バウスは指揮する帝国騎士に命令を下す。
「全員、竜騎馬騎乗。ルビリア聖王女殿下の馬車をいつでも動かせるようにしろ!!」
前衛の機動歩兵団の指揮官と真魂交神している部下が報告してくる。
「機動歩兵団の兵士の影の中より、ゼレイヤ黒魔術王国の兵士がヴァルゴ国軍の機械兵士と共に陣中に突如出現。」
「長機銃による攻撃を受け防戦中なるが、防衛不可能と判断。」
「直ちに、ルビリア聖王女を退避避難されますようにとの事です。」
バウス・リッシュ千竜騎士長は無能とは無縁の帝国騎士である。
直ちに命令を下す。
「全軍、聖王女を中心に守護し退避!!」
「モッシュ百竜騎士長!」麾下の帝国騎士を呼ぶ。
「はっ!!」直ぐに竜騎馬を寄せてくるモッシュ百竜騎士長。
「卿は、ここに残り敵軍を少しでも足止めせよ。」バウスは命令を下す。
モッシュは「了解しました。」即応し、自分の部下を配置に就かせる。
バウス・リッシュ千竜騎士長はモッシュ百竜騎士長の部隊に残って【死んで時間を稼げ】と命令したのだ。
その命令を逡巡する事なく、受諾するモッシュ百竜騎士長。
帝国騎士たる者の【覚悟】とはそういうものであるのだ。
誰でも、真甦さえあれば【帝国騎士】になれるものではない。
以前炎元郷でビル・ヘイム卿がランガードに享受した【騎士の十戒】とは、そういうものなのだ。
【死】を恐れるのは人間として当然。
自らの死よりも自国の為、臣民の平和の為、守るべき者を救う為、尊ぶべき行為を行えるものが、【帝国騎士】の称号を得る。
バウス・リッシュ千竜騎士長は、部隊に後方退避行動を取らせ、団長であるナリナック・スパック武神将に真魂交神で現状を報告する。
ヴァルゴ国軍機甲兵士はゼレイヤ黒魔術兵士の力を借り、アースウェイグ帝国軍 後方支援部隊 機動歩兵団の兵士の影の中より2人1組で突如として、出現してきた。
現われるなり、周囲に向かって無造作に長機銃を連発するヴァルゴ国機甲兵士、、、、
アースウェイグ帝国軍の歩兵部隊に応戦する暇も力もなく、次々と射殺される機動兵士団兵士たち。
帝国騎士でもない、兵士団にはヴァルゴ国軍の古代兵器に対抗する術はなかった。
まして、奇襲を受け陣中をかき回され、ゼレイヤ黒魔術王国の兵士も短剣を抜き差し、襲撃してきた。
アースウェイグ帝国軍機動歩兵団2万名の壊滅も時間の問題だった。
リュギィ・コネルとブリッシュ・アンツは後方支援部隊の近くに迄来ていた。
異変を悟った二人は、迂回してルビリア聖王女を守護するバウス千竜騎士長率いる、虎翼帝国騎士団が退避する方角、大陸街道目指して、竜騎馬を飛ばす。
アースウェイグ帝国軍後方支援部隊機動兵士団に奇襲をかけて来たゼレイヤ黒魔術王国の指揮官は【上級黒魔術師カガ】と言った。
ウルグスの傍らに常に控える、上級黒魔術師【ルカ】の同級黒魔術師で、指揮官術師である。
上級黒魔術師カガはゼレイヤ黒魔術師1人にヴァルゴ国軍機甲兵士1人を後ろから抱え込む様に、空間を転移させて、敵アースウェイグ帝国軍歩兵団の影の中から攻撃させたのだ。
パヴロ聖王国 聖王女ルビリアを再度捕獲するために、、、
人質として使う為に、、、
影より現われた敵兵の数はヴァルゴ国軍2千名、ゼレイヤ国2千名の合計4千名の部隊であった。
2万名の歩兵団で守護しているアースウェイグ帝国軍が数では多く勝っているにも関わらず、壊滅されようとしているのは、奇襲を受けたせいもあるが、ウルグス国王が復活させた古代兵器がいかに強力であるかと言う証拠である。
モッシュ百竜騎士長は100名の帝国騎士を円陣に組ませ防衛と時間稼ぎに専念した。
4千名対百名では、いくら盛況を誇る【帝国騎士】でも勝ち目はない。
ヴァルゴ、ゼレイヤ連合国奇襲軍は、2万名のアースウェイグ帝国軍後方歩兵団を壊滅させて、古代動力の騒々しい音と共に、牙をむき襲いかかってくる。
モッシュ百竜騎士長の部隊は全員が【土の真甦】だ。
帝国騎士は所属の武神将の戦い方に似てくるもので、モッシュ達も巨大な戦斧に真甦を乗せて、迫りくるヴァルゴ国機甲兵士に向かって、投げつける。
そして、瞬時に両手を大地に付け防御態勢を築く。
緑の大地がメキメキ盛り上がる。盛り上がる。
ヴァルゴ国軍に投擲された100の戦斧は機甲兵士の鉄の鎧を易々と貫き、切断し、敵軍前衛部隊を切り裂き後方へ後方へと勢いを落とさず、切断する荒ぶる凶器となり、旋回しながらぶった切る。
ぶった切る。
ヴァルゴ国軍機甲兵士の長機銃が発砲するが、せり上がった大地が全て吸い込んで無力化する。
モッシュはそれ以上の攻撃は命じなかった。
大地の盛り上がる巨大な盾を二重三重に作り、ヴァルゴ、ゼレイヤ連合国軍行く手を阻む。
モッシュは麾下の騎士に
「影に注意しろ、ゼレイヤ軍は闇から現れるぞ!!」
「抜剣し、全方位に注視せよ」
っと、指示した直後、、、
各帝国騎士の影の中から、500名以上の黒魔術兵士が出現する。
モッシュは「防戦!!」と大声で号令するが、地面から一気に湧き出る大量の暗殺者に帝国騎士は奮闘むなしく、徐々に切り殺されていった。
モッシュ百竜騎士長は無数の切り傷を負ったが、毅然と屹立し、気合と共に自らの剣を大地に突き刺し、残った全ての真甦を大地に注ぎ込む。
ごごごー
大地が震える。
刹那!!
緑の大地より無数の槍が物凄い勢いで飛び出す。
ゼレイヤ黒魔術兵士にむけて、、、
無惨に大地より生えた土の槍にゼレイヤ国黒術兵士は半数以上が串刺しにされる。
累々と連なる屍と共に、剣を大地に突き立て、屹立したまま命果てるモッシュ百竜騎士長であった、、、、【壮絶】な姿であった。
防戦と時間稼ぎ、、、
立派に任務を果たした【帝国騎士】の最後の威容であった。
ゼレイヤ黒魔術国軍 上級黒魔術師カガは舌打ちを打つ。
「たかが、これだけの数の相手にどれだけ手間取っているのです?」
「早く、追撃しパヴロ聖王国の王女を捕らえるなさい」
残った、ヴァルゴゼレイヤ連合国軍の兵力は約2500名だが、ゼレイヤ黒魔術師国軍の兵士はいつどこから現れるかわからない、、、、
バウス・リッシュ千竜騎士長はルビリア聖王女を護衛しながら緑の丘より離れ、両脇に岩崖が続く大陸街道に入った。
っと、そこで爆音がする。
ババババー
鉄の塊が空を物凄い速度で、空中を飛行して追撃してくる。
ルビリア聖王女がパヴロ聖王国を脱出する際に、襲ってきた飛行鉄馬機甲兵士、その数、、、、
50機。
強力無比な【機関銃】を全機装備している。
距離が一気に詰まる、、、
爆音が更に酷くなる、、、
飛行鉄馬機甲兵が機関銃をバラバラ連射してくる。
バウス・リッシュは全員に盾に真甦を流し防御の為、空に向かって盾を翳させた。
900騎が一斉に盾を空に向け、翳す姿を上空から見ているヴァルゴ国軍兵士にとっては【亀】の様に見えた事だろう。
何の容赦もなく命を瞬時に奪う、古代兵器 機関銃の銃弾は、虎翼騎士団の盾によって無力化された、、、
一部を除いて、、、
ルビリア聖王女を乗る馬車は機銃掃射をまともにくらってしまった。
馬車は一瞬で、粉砕され走行不可能になった。
バウス・リッシュ千竜騎士長が急いで駆け付け、馬車の扉を開ける。
ルビリア王女は無事だった、、、
護衛についていた4人の帝国騎士は銃弾に倒れていた。
おそらく、自分の真甦を自分に使わず、ルビリア聖王女を守る為に4人とも使ったのだろう、、、
その結果、王女は助かり騎士は死んだ、、、
バウス千竜騎士長は死んだ騎士の事には構わずに、ルビリア聖王女を助け出した。
バウス千竜騎士長は逃亡を断念し、援軍が来るまで籠城戦に切り替えた。
両側が岩壁で囲まれた大陸街道の横に岩壁の窪みのような部分が右側に100メートルほどの脇道があった。
窪地なのだから、勿論行き止まりである。
この窪みで籠城する決心をしたのだ!!
自陣の一番奥にルビリア聖王女を連れて帝国騎士に盾で守らせるように何重にも盾を被せた。
ルビリア聖王女を守っての死闘がここから始まるのである。




