ゴレム0Ⅴ激闘
パヴロ聖王国 聖王宮中庭をリスティアード皇太子選抜隊25名はアルセイスと俺を先頭に走り続ける。
帝都アーセサスからの強行軍に即時、戦闘状態となったが疲れた様子など、誰一人としてない。
アースウェイグ帝国【帝国騎士】精鋭中の精鋭である。
しかも、先頭を行く二人の武神将は最強最恐の聖剣主だ。
四海聖竜王が持っていたと言われる、4聖剣は1本は黒龍騎士団団長アルセイス・アスティア・アグシス武神将が持つ。
もう1本は【火の民】族長にして灼熱の不死鳥騎士団団長ランガードが持つ。
残りの2本は、、、
聖王宮中庭の先頭を走る、アルセイスが突然右手を肘から上向きにあげて【止まれ】と合図を送る。
俺は「どうした?」と聞いた。
返ってきた言葉は「静かすぎる、、、」
確かに、この中庭に出た途端、敵兵の姿や砲撃攻撃が止まった。
リスティアード皇太子が後衛を守る選抜帝国騎士に振り向き
「おかしい、注意して」
っと、言った刹那中庭を囲むように作られた北側の壁がいきなり爆発と共に黒い塊が飛び出て来た、、、
で、でかい、、、
高さ8メートルは優に超える黒い鉄でできた、怪物が壁をぶち破って襲いかかってきた。
ウルグスが言っていた、ヴァルゴ太古兵器興業国軍の試作機ゴレム0Ⅴだ。
2足歩行の人型巨大兵器。
胸部の黒い鉄の鎧が、開く!
ドシュ!ドシュ!ドシュ!
無数の爆音と共に鉄の弾頭爆弾が発射される。
アルセイス武神将に向けて
黒龍騎士団団長は剣を前に出し、土の真甦を具現化して防御するが、砲撃の数が多すぎる。
砲撃をまともに受けて、後方に吹き飛ぶ、アルセイス。
「くっ!」
巨大な黒鉄の鎧は背中部分と両手両足の鎧を全て、開放し弾道爆弾を無数全方位に向けて発射する。
DON DON DON DON DON
物凄い火力である。全方位に発射されたため、視界が爆炎と煙でなくなる。
視界が利かない爆煙の中で、続けざま巨大な鉄の塊兵器ゴレム0Ⅴは3メートルはある、巨大な鉄の太い棒を取り出し振り回す。
ランガード目指して、、、
視界が全くない中、カンだけでランガードは深紅の魔鉄剣を引き抜き、巨大な棒を真正面から受ける。
ガシッ!
『!!』
ッと同時に、勢いよく弾け飛ぶ。
中庭を囲む壁を突き破り土煙と共に、吹っ飛び中庭から姿を消す。
ドンガシャアアーン!
レィリア武神将が直様リスティアード皇太子の前に立ちはだかり、守護する。
爆炎のなにも見えない煙の中から、鉄塊の拳が煙を巻き上げ唸りを上げ、打ち込まれる。
BOON!!
リスティアード皇太子めがけて、、、
ガシン!
鉄の拳を細い両刃の剣が、見事に受ける。
レィリアが上級精霊【怪力のベフリーツ】を使役し、巨大な黒鉄兵器の拳を細い剣で見事に受ける。
ガシン!!
一歩も引かずに、「くっ!馬鹿力しか能の無いくず鉄野郎が!」レィリアが吐き捨てる。
ゴレム0Ⅴはヒトの熱を感知して、攻撃を仕掛けてくる為、視界が無いのは何の支障もない、、、
もぅもぅと爆炎はまだ収まらない。
これでは、リスティアードの天の真甦の力が使えない。
敵の姿が見えず、仲間を巻き添えにしてしまうからだ。
鉄兵器の拳と力比べをしている、レィリアの美しい額に汗が流れ落ちる。
ついに片膝を地面につく、美しき近衛騎士団団長、、、
「くそっ」
いきなり怒声が飛ぶ
「こんの野郎!大雑把な攻撃ばっかしやがって!!」
爆炎と共に鉄兵器より高く飛ぶランガード武神将!
っと、同時に地面を這うように爆炎の煙の中、雷光が走る
「せぃっ!」シャン!!
アルセイス武神将が神速の早業で、黒鉄兵器の片足を切り飛ばす。
グラリ、、、巨大な鉄兵器ゴレム0Ⅴはバランスを崩して傾く
同時に頭上からランガードが燃える深紅の剣を上段に構え、ぶっ飛んでくる。
「ウラァ!」吠える!!
轟々と燃える魔鉄の深紅の大剣。
巨大な黒い鉄の鎧兵器を頭部から縦割りに焼き切る。
ズガガガガーン!!
8メートルの巨体が縦に半分に割られ左右に頽れる。
ズズン!!
俺は地面に着地して「フン」と熱い息を吐き出す。
「雑なんだよ、全部がよ」俺が言う。
「人の事は言えないわよ、あなたも同じ分類だから」
レィリアがシレッと言う。
「助けてもらって、そりゃねぇんじゃねぇのか?」
俺が深紅の魔鉄大剣を鞘に収めながら横目で見る。
「助けなんかいらなかったわよ、それこそ余計なおせっかいね」レィリアは華麗に見事な直毛の金髪を優雅にかき揚げながら言うさまが、優雅と余裕を感じさせる。
リスティアードが口をはさむ
「ほらほら、今は早く聖王女を助けに行くんだよ」
アルセイスが更に一言
「サルと会話するからこじれる。」
精鋭部隊25名の内、約4名を抜いた21名全員が今の戦闘に唖然としていた。
リューイでさえ、あの重量と煙と火力にほとんど何もできなかった、、、
リスティアード皇太子でさえ、力を発動できずにいた、、、
それを3人の武神将は、準備体操でもするかのようにぶっ倒してしまった。
リューイは思った
(充分化け物の部類ですよ、、、みなさん、、、)
聖王宮正門でも、激しい戦闘が行われていた。
ヴァルゴ太古兵器興業国軍の先方部隊2万余りが、パヴロ聖王国 聖王宮に到着したのだ。
ランガードが聖剣誉武号牙炎で焼き払った、焼け野原にヴァルゴ軍は展開した。
アースウェイグ帝国軍聖王宮正門守備隊責任者のガウス准将は防衛戦を命じた。
兵力にさほど、差がない事と真甦を感じなかったためだが、、、
ヴァルゴ軍は惜しげもなく大量の火薬と爆薬をばら撒き、帝国軍を苦戦させていた。
正門中央を守るのは、帝国軍主力の黒龍騎士団本陣。
右翼と左翼に不死鳥騎士団が別れ守備に就いていた。
右翼は【火の民】重量爆撃部隊。
左翼はフーカ・セロ、リン、ラウミ、シュカ、ホセ格千竜騎士長の部隊が守備する。
ヴァルゴ国軍は偶然なのかわからないが、一番手薄の帝国軍左翼に攻撃を大量に集中してきた。
フーカ・セロが必死に指揮を取り、陣形を崩させないが、、、、
かなり厳しい状況だった。
不死鳥騎士団が強いのは、ランガード武神将とリューイ准将の存在感と安心感であるところが大きい。
しかし、今両名とも不在である。
後を託されたのは、2年前まで普通の臣民だった新たな若き帝国騎士達、、、
大量のヴァルゴ国軍の無限とも思われる攻撃の連続。
フーカ・セロは聖王宮正門にいる、黒龍騎士団まで撤退を指示した。
しかし、ヴァルゴ軍の攻撃は止む事がなく、引くに引けない。不死鳥騎士団帝国騎士は、真甦を発動して防御に専念せざるを得なかった、、、
リン千竜騎士長の部隊も猛攻撃に曝されていた。
副官の火玄・暁百竜騎士長が叫ぶ。
「隊長、一時撤退を!ここは我らが死守します。」
リン千竜騎士長は頭を振り
「できません、それでは火玄さん達がやられてしまう、、」
金色に輝きだす、リンの体を見て火玄副官がリンの騎乗する竜騎馬のお尻を剣の平で叩く
「行って下さい。隊長の力はこんな所で使ってはなりません!!」
リン騎乗の竜騎馬は火玄の意を酌み、走り出す。
リンは慌てて「竜威丸止まりなさい!!」命ずるが、竜威丸は止まらない。
「火玄副長~!!」叫ぶリン。
ヴァルゴ国軍の砲撃爆撃は更に加熱差を増して、襲いかかる。
ドカン!! ドカン!!
爆炎の中に、火玄副長の姿が見えなくなる。
黒龍騎士団本陣
本陣左翼側に陣を張っていた、リュギィ・コネル千竜騎士長が隣で防衛に就いている親友のブリッシュ・アンツ千竜騎士長に声を掛ける。
「不死鳥騎士団の左翼が押されている!彼女の部隊だ」
ブリッシュ・アンツは即断する。
「リュギィ、行け!ここは俺が死守する。」
「頼むぞ!全隊俺に続け!不死鳥騎士団を援護する。」
リュギィの部隊は全速で移動を開始する。
本陣のガウス准将が、真魂交神でリュギィ千竜騎士長に交信する
(何処に行く。移動の命令は出してないぞ)
リュギィからすぐ返信が来る
(不死鳥騎士団がこのままではやられます、救援に向かいます)
ガウス准将は(今、本陣を手薄にするわけにはいかん!戻れリュギィ千竜騎士長)
返信は無かった、、、
ガウス准将が「馬鹿ったれが、ランガード武神将閣下の影響で皆、熱にあてられすぎだ!」
「本陣の陣形を左翼を下げ、斜形陣に変更。不死鳥騎士団右翼にも伝達、急げ」
陣形を変え、リュギィの抜けた穴を団全体で援護する陣形だ。
リュギィ千竜騎士長の部隊は怒涛の勢いで左翼の不死鳥騎士団の援護に回る。
リン千竜騎士長が20騎程の護衛に守られこちらにかけてくる。
リュギィはリンの無事を確認でき、少しホッとした。
リンは泣き叫びながら大声で叫んでいる
「火玄副長が、私を逃がすために残って、、、助けて下さい!」
リュギィ千竜騎士長は大声で答える
「承知した。リンさんは本陣に向かって下さい。」
リンは涙を後方に置き去りにしながら、叫び返す
「どうか、お願いします!」
リュギィ千竜騎士長は部隊を疾走させながら、命令を出す。
「全部隊、面頬降ろせ、抜剣し盾を上げろ!突っ込むぞ!!」
「敵軍を面で押し返せ!!」
爆炎と轟煙で充満する、戦場で火玄は部隊を小さくまとめて、【火の民】による火炎攻撃と土竜隊による防御に専念していたが、敵の大火力の前に押され気味で、崩壊寸前だった。
火玄が額から血を流し叫ぶ「援軍が来るまで持ちこたえろ!」
「機械のガラクタに負けるな!」
敵の爆撃砲撃がついに、火玄の部隊の中心に命中して爆散する。
吹き飛ばされる、大勢の騎士達、、、
「ぐわっ!!」
火玄も堪らず、爆風で吹き飛ばされる。
「くっ、ここまでか、、、」
ヴァルゴ太古兵器興業国軍の砲撃兵器が迫る。
ごごごごごー
血が目に入り、目をつぶる火玄副長の横を漆黒の一団が駆け抜けていく。
ドドドドドー
火玄が「黒龍騎士団、、、」
漆黒の騎士団はヴァルゴ国軍の砲撃を盾ではじき、黒刀で砲撃大型兵器を一刀両断する。
横陣一列になり、面で敵軍を押し戻す。
強い。
帝国騎士最強を誇るのは伊達ではない。
竜騎馬は銃弾くらいでは倒れない。剣や槍では竜騎馬の表面を覆う鱗を貫通する事など尚更不可能である。
その竜騎馬に漆黒の鎧を纏い、リュギィ千竜騎士長の部隊はヴァルゴ国軍を押し戻す。
砲撃弾を盾で弾き、黒龍騎士団全員が持つ黒刀で、鉄の鎧を切り裂く。
面で押し戻す。押し戻す。押し戻す。
ヴァルゴ国軍も堪らず、軍を撤退させ始める。
聖王宮正門前の広場より、ヴァルゴ国軍を押し戻すとリュギィ・コネル千竜騎士長は自分の隊を不死鳥騎士団救援救護に向かわせた。
リュギィは血だらけになりながらも、自らの足で立ち上がる指揮官らしき人物の所へ竜騎馬を寄せる。
火玄・暁副長である。
「ご無事ですかな?」リュギィが話しかける。
火玄は流血激しくどす黒く染まった顔でにやりと笑って見せた。
「救援感謝いたします。」
「本陣に一時戻りましょう」と優しく話しかけるリュギィ
本陣では
リン千竜騎士長が火玄の血だらけの顔を見るなり、再び泣き出して火玄に抱き着いてきた。
「火玄さん~ご無事でよかった。」
「ほんとによかった」
火玄は泣きじゃくるリンの頭をそっと傷だらけの手で優しくなでて
「隊長が、泣いては駄目ですよ」
優しく優しく自分の娘に言うように話す。
メイラ達治癒部隊が走ってやってくる。
「どいて下さい。重傷者から治癒します。」
「場所を開けて!!」
黒龍騎士団本陣
ガウス准将が渋い顔でリュギィ・コネル千竜騎士長とブリッシュ・アンツ千竜騎士長を睨む。
「両名とも、軍規違反だぞ」
リュギィが一歩前に出て
「私が軍規を破りました。ブリッシュ・アンツは関係ありません」
ガウス准将は渋い顔をさらに渋くして
「卿の言い訳にしては、無様だな」
「リュギィ千竜騎士隊の抜けた穴をブリッシュ千竜騎士隊が見事な連携で穴を埋めたのを俺が見ていなかったとでも思うのか?」
ブリッシュ千竜騎士長も一歩前に出て
「私も同罪です。」
ガウス准将はこれ以上ないくらいのしっぶ~い顔をして
「団長の決定を待つまで現状のまま、迎撃に専念せよ」
っと、ガウスは普通の顔に戻り
「おまえらなぁ、気持ちはわからんでもないが、状況を弁えろよ」
「今更、言わなくてもわかるよな」
「「はっ!!申し訳ありません。」」
2名ピッタリ息が合って謝罪する。
ガウスは「はぁ~」と吐息を漏らす。
ガウスより開放された、リュギィとブリッシュの所にリンは駆け寄り
「私達を助けたせいで、罰を受けるのですか?」
リュギィは優しく微笑み
「大丈夫ですよ、帝国騎士は仲間を絶対見捨てません。」
リンはまた、泣き出してしまった。
今日は泣きっぱなしのリン千竜騎士長である。




