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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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バングル典雅文明王国の使節団

俺はひと月ぶりに、不死鳥騎士団城の団長執務室でリューイと机を並べて書類整理に追われていた。


リューイが「団長決裁待ちの書類が沢山ありますからね、頑張ってやっつけて下さいね」ニッコリ笑いながら書類の束を抱えて持ってくる。


俺はしぶ~い顔して「そんなもん、お前がやりゃいいじゃねぇか。」


リューイは「規則を守らせる立場の人間の発言とは思えませんね」と言い返してくる。


俺が言い返そうとしていると


コンコン


来客を告げる、扉をたたく音が二人の会話を(さえぎ)った。


リューイが扉を開けて「いらっしゃい、男爵」と笑顔で迎える。


扉の向こう側に立っていたのは、ツヴァイス・カーゼナル男爵だった。


俺が大きな声で「おお、よく来たな入れよ。」


ツヴァイスは遠慮がちに

「いえ、お忙しそうなので、顔見せに立ち寄っただけです。」


机の上に載っている書類の束を見て言ったのだろう、、、


「そうか、今日から登庁か!いよいよ本格的に動き出すんだな領主適用試験課。」俺が書類の束の合間から顔を出して微笑み語り掛ける。


男爵は「はい、先日アグシス国務長官とお話しさせていた内容だと、いずれは領主に限らず、上級文官試験なども行っていくとの事です。」


「そうか、お前もアースウェイグ帝国の(かなめ)となる人間になったんだな」


書類の束が乗った机をひと回りして身長195センチ細身赤髪の武神将らしくない俺が、黒色の(えり)の着いた上下の正装を着た、ツヴァイス・カーゼナル男爵に近づき胸を(こぶし)で軽く叩いて力いっぱい抱き寄せる。


「ランガードさん、いたい、いたいですよ~」


リューイが笑いながら「遅刻すると、長官に怒られますから、その辺にしてあげて下さいよランガードさん(・・)


俺はツヴァイス・カーゼナル男爵のお尻を叩いて「行って来い!!」と励ます。


ツヴァイスは俺とリューイに会釈して、職場に向かっていく。


リューイが感慨深げに「人って変われるもんなんですね。」


俺はニヤッと笑い「教師が良いからな」


「教師が生死を彷徨(さまよ)うような指導はまずいでしょ。」リューイが言い返す。いつものやり取りだ。


コンコン


本日、二人目のお客様だ。


銀色の瞳に身長180センチと女性にしては背が高い銀鈴の美女シュシィス・スセイン氷結の女王だ。


リューイが礼節を持って丁寧に扉を支えて、招き入れる。

小さな顔を腰まで伸びた、真っすぐの銀髪を揺らして、会釈しながら執務室に入って来る、ランガードの美しき婚約者。


「お弁当を作りましたので、お持ちしました。リューイさんの分もありますから一緒に頂きませんか?」


「よろこんで、ご相伴させていただきます。」


「よし、じゃ昼飯にするか」俺がウンザリする書類から逃げだして、客間の椅子にシュスと共に横並びに座る。


リューイが向かいに一人で座る。


コンコン


そこに本日、三人目の来客である。


リューイがすぐさま扉を開けると、リスティアード皇太子殿下がレィリア・アストネージュ金獅子近衛騎士団団長と共に立っていた。


リューイがびっくりして

「御用がありましたら、こちらから伺いましたのに、、、」


皇太子はウィンクしながら「そんな、大した用事じゃないから気を使わなくて大丈夫だよ。」優雅に音もなく歩く皇太子と共にレィリアが「お邪魔するわね」と綺麗な高い声でリューイの前を通り過ぎる。


客間に入って来た、リアードとレィリアにシュスは立ち上がり、挨拶(あいさつ)をかわす。俺は座ったまま「なんか用か?」と愛妻弁当を食べながら聞いた。


レィリアが呆れ顔(あきれかお)で「あなたは、立場が変わっても婚約しても何も変わらないのですね」


「言っておきますが、()めてる訳ではありませんよ、その逆ですからね」


リアードが「そのお弁当、美味しそうだねちょっと頂戴よ。」手を伸ばしてくる王子に俺は「大将はもっとうまいもん食えばいいだろ!王子様なんだからよ」と言って、弁当を抱え込む。


「リアード様、お口汚しでございますが、よろしければ私のをどうぞ召し上がり下さい。」シュスがそっと、自分のお弁当を差し出す。


「悪いね、それじゃありがたくいただくよ」喜び食べるリアード「うん、美味しいね。この味付けはアーセサスより薄くて上品でいいねぇ~」


俺は弁当を食いながら「そんで、何の用だよ大将?」


リアードは口に一杯お弁当を頬張(ほおば)りながら「うん、それはねぇ~」


レィリアが横目で冷たく見つめながら「リアード、はしたないですよ。」


「ごめん、ごめん、バングル典雅文明王国って知ってる?」


俺はちょっと考え込み「一度行ったことがあるな、大陸中央にあって、大陸街道がいくつも通ってるとこだろ」


「なんか気位だけ高くて中身のねぇ連中が多くて、俺には合わなかったがな」


大陸街道は東西南北に伸びた、整備された大きな道で商業や貿易の主要な道になっていた。

その大陸街道が交わるのがバングル典雅文明国首都バーゼルだ。大陸中の商業と文化の中心と言われ貿易で発展した国である。


よって、大陸中の最先端な(みやび)風潮(ふうちょう)をいち早く取り入れた最大の文化国家である。


建国はアースウェイグ帝国と並び、最も古い歴史を持つ。


リアードは微笑みちょっと、お弁当を食べる手を止めて俺を見つめる「そのバングル典雅文明国の第一王子がね、【宮廷歌人】ベルファム・ソーンと言う人物を連れて、明日黒曜天宮に使節団として来られるんだよ。」


俺は怪訝(けげん)な顔をして弁当を食べながら

「は~ん、なんの為に来るんだよ」


リアードは困った顔をして

「【宮廷歌人】ベルファム・ソーンと言う人物が、今大陸中で話題になるほど人気があってね、そのお披露目じゃないかな?」


「なんだそりゃ、その何とかって歌人を自慢しにわざわざ黒曜天宮にくるのか?」俺は愛妻弁当を口いっぱい頬張(ほおば)りながら喋る。


レィリアが冷たい視線を浴びせる。


リアードも弁当を食べながら「それでね、武神将と准将は全員出席してほしいんだ。」


「アースウェイグ帝国は尚武(しょうぶ)のお国柄だから雅な流行(みやびなりゅうこう)なんて持ち合わせていないからさぁ、せめて(ほこ)りだけは示そうという事でよろしくね」


「それとシュスも列席してもらっても良いかな?」


シュスが可愛らしい小さな口を開き「私でよろしければ喜んで出席させていただきます。」


「ありがとう。」弁当を全て平らげて、「ご馳走様、それじゃ明日の晩にね」と言い、リアードは席を立ちあがる。


それに合わせて、シュスも立ち上がり扉まで見送る。


俺は座ったまま「大将も忙しいんだな、それじゃな」と言う。


最後まで冷たい視線のレィリア・アストネージュ金獅子近衛騎士団団長だった。


昼食を取った後は、山積みの書類と命懸けの格闘を始める、ランガード武神将と優秀に補佐するリューイ准将であった。


シュスは二人にお茶を入れ、部屋を後にする。

自分がいても、職務の邪魔になるだけだと判断したのだろう誇り高く、背もすらりと高く、配慮もできる、美しき氷の女王は優美(ゆうび)に歩き去る。






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