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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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苛烈なり新兵諸君

リギア戦役も落ち着き、ランガード率いる不死鳥騎士団は一歩一歩確実に強くなっていた。

リギア国戦役より6か月が過ぎた。

リギア国内の情勢も安定してきており、町の修復新行政への移行も順調に行われていた。


アースウェイグ帝国軍は民から信頼され、迎え入れられた。


帝国軍が一般庶民に対し、略奪や暴行強奪などを一切しなかった事と税金が一年間無料になり、水と食料、物資の供給も各地域で無料で配給され、壊れた家や公共の建造物は無償で修繕した、その成果は大きかったと言わずにはいられまい。


特に幼子を持つ家族や老齢の者には手厚く、奉仕された。

働ける女性を多く雇用し、賃金を払い自国民の困ってる人達を助けさせたのだ。


一石二鳥にも三鳥にもなった。

リギア民主統治国を預かる、アグシス国務長官の手腕と言えた。


お金の原資は前王家、貴族、庄家の金持ちなどの財産を全て徴収し、それに当ててるのだからアースウェイグ帝国は全く痛まない。


逆に前王家が庶民の支持をそれだけ受けていなかったという事の表れだ。


ー黒曜天宮 ではー


氷結の女王、誇り高くランガード武神将の婚約者である。シュシィス・スセインは氷結の村にアースウェイグ帝国軍の砦を築き、自らはアーセサスに居住する為に一時、帰郷していた。



灼熱の不死鳥(フェニックス)騎士団の居城も大体出来上がった。外構や練兵場、調理室、内装の一部を工事している程度になってきた。


新兵諸君も仮の傭兵棟練兵場で、毎日の激しい訓練に耐え、一人の脱落者もなく帝国騎士目指して、(はげ)んでいた。


今の彼らの地位は【騎士見習い】だ。一日も早く【帝国騎士】になる為、朝から夜遅くまで真甦の鍛錬に(いそ)しむ新兵諸君である。


ランガード武神将がリューイ准将を伴い練兵場に姿を見せる。


全員が一斉にランガードを見て訓練を辞めてお辞儀をする。


「いいから続けろ!!」俺が叫ぶ。


ランガードは黙って、訓練を見ていて大声で叫ぶ。

「フーカ・セロ、ラウミ、シュス、リン。こっちに来い!!」


直ぐに呼ばれた4人は走って集まってきた。

一列に並び整列する。

顔も黒く焼け、体中あざだらけだが、(たくま)しくなったものだと感心するリューイ副団首だ、そう彼らは最終試験で最後まで棄権(きけん)しなかったフーカ組のメンバーだ。


体の大きいホセだけ、呼ばれなかったが、、、、


「お前らは今日から別メニューだ、俺かリューイが教えるから、脱落すんじゃねぇぞ!!」


「「「「はいっ!!」」」」


4人(そろ)って元気よく返事をする。


「まずはこれだ」二本の短い木刀をそれぞれに渡す。

「リューイ手本を見せろ」


「はい」すぐさまリューイは二本の木刀を縦に(つな)げ持ち、真甦を練り込む。


リューイの体から赤い霧のような物が出るて、木刀に流れていく。


すると、二本の木刀は一本の木刀になっていた。


そう、過去にヴォルグス砦でビル・ヘイム卿に教わった、真甦の練り上げ方【上級編】だ。


俺は手のひらより、魔を滅する青い炎の剣を出し、リューイに切りかかる。


見事に木刀でランガードの魔を滅する剣を受ける。


「これを1週間以内にやるんだ!!」


「「「「はいっ!!」」」」


「始めろ!リンは別メニューだ、着いて来い」

「はいっ!!」負けん気の強く、陽気で前向きの調理上手なリンは元気よく返事をしてランガードの後に続く。


黒曜天宮抜けて、ずっと歩く。何も言わず、続くリン。

ランガードが初めて口をきく「ここだ」指を差す場所は、、、


黒龍騎士団の居城。

俺は黙ってずかずか中に入っていく。


門衛は俺に対し、右手の肘を折り左胸にあて、敬礼する。


俺は返礼もせず、どんどん中に入っていく。


練兵場に出るとアルセイス武神将とガウス・ヴォーフェミア准将が中央で並んで立っていた。


リンは即座に右膝を付き、騎士の礼を取る。


アルセイスがリンを見て「その娘か?」と聞いてくる。


俺は黙って(うなず)く。


俺は後ろを振り向き声を掛ける「リン、お前の今日の訓練はアルセイス団長が付けてくれる。気合入れてやれ!」


リンがかなり緊張して「はいっ!!よろしくお願いいたします。」と気合入れて答える。


アルセイス・アスティア・アグシス武神将は聖剣主(せいけんますたー)で帝国騎士団最強を誇る、黒龍騎士団団長で現在の【剣聖】である。緊張しない方がおかしいというものだ。


アルセイスが静かに話し始める。

「リン、真甦とは元になる原素を練り上げ具現化しているものだ。地水火風が一般的だ。能力は個人差が大きく、お前の団長は規格外の代表だ。」


「真甦には他に【天】と【魔】があり、保有者は極めて少ない。リン、おまえはその【天の真甦】の数少ない保有者だ。」


アルセイスがガウス副団首に向かって(あご)を振る。


ガウスは直ぐに木刀を取り出し右手に高々と持つ。


アルセイスは淡々と静かにはなす。

「リン、あの木刀だけを消してみろ(・・・・・)。」


リンは緊張した面持ちで、両手を胸で組み合わせ祈る様に目を閉じ、真甦を練り上げる。


一分、二分、、、、、


集中し続ける、リン。


五分。


リンの体が光りだす。

両眼を開けた。その双眼は金色に光り輝いていた。


体の光がどんどん強くなっていく。


(まばゆ)いばかりに輝いた次の瞬間!


光がリンから放射される!


ガウスが持つ木刀を一瞬で消滅させる。


初めて、リンが天の真甦を発動させた時は、発動後に気を失ってしまったが、日頃修練の成果で今は気を失わず、しっかり立っていた。

少し肩で息を切りながら


アルセイスが「どうだ?ガウス」


ガウス准将が「正直、私でなかったら右肩から持って行かれていましたな。」


アルセイスがリンに向き直り「見事だ、明日から黒龍騎士団に入団させてやる。」


ランガード「おいおいそうじゃねぇだろう!」

「内には天の真甦なんて持ってる奴がいねぇから稽古(けいこ)つけてくれって頼んだ、だけじゃねぇか!」


アルセイスが「それで稽古をつけた結果、黒龍騎士団に入団が決まっただけだ。」


ランガードが顔を真っ赤にして「馬鹿言ってんじゃねぇよ!!人のもん勝手に取るなよ!」


アルセイスが相変わらず静かに「本人に決めさせてはどうだ?」


俺はすげぇ不安になった。(天下の黒龍騎士団とぽっと出の不死鳥騎士団じゃ格が違うってもんだ)


アルセイスがリンを見て「どうだ?おまえはどちらを希望するのだ?」


リンは「わ、私はランガード団長やリューイ副団長が好きです。」


アルセイスはふっと笑い「振られてしまったか、、、」


リンは恐縮して「す、すいません。」両手を太もも脇にピタッとつけて九〇度以上お辞儀をした。


アルセイスは全くどんな時も変わらず静かに「それでは、約束通り、今日一日天の真甦の訓練をしてやる。死ぬ気で頑張れ!」


リンは大声で「はいっ!!」と返事をする。


俺はここにいても何もできないので、リンに「頑張れよ」と言い、傭兵棟に帰る。


傭兵棟に着くと何やら言い争いが聞こえる、、、


リューイとホセだ。


俺は壁に隠れて、様子を(うか)がう事にした。


ホセがリューイに文句を言ってるようだ。

「なぜ、僕だけ呼ばれないんですか?」


リューイは感情を込めずに「軍人は命令に従うものだ、話す必要を認めない。」


ホセが引かずに「フーカ組で呼ばれなかったのは僕だけですよ。理由をお聞きしても良いのではありませんか?」


リューイが感情を込めずに「そんな事をいちいち説明していて8千の軍隊を動かすのは不可能だ、秩序を乱すな」


「納得できません。」ホセは引かない。体もリューイより大きいし年齢もそれほど変わらない。


そこに俺が姿を見せる。

「ホセ、なぜ自分の名が呼ばれなかったか知りたいのか?」


ホセは俺を見て右手を折り左胸に当て、略式の上官に対する敬礼を取った。

「そうであります。」


俺は普通に「リューイ准将と戦って勝てる自信があるか?」


「やってみないとわからないと思います。」ホセは胸を張り答える。


俺は優しく「それだよ、お前の名が呼ばれなかった理由は」


「リューイは優しいから、そこまでお前を追い込みたくなかったんだろうが、俺はお前が戦場で死ぬのが嫌なんではっきりと言う」


「帝国騎士の戦いは【真甦の戦い】なんだよ。一瞬で相手が自分より強い真甦を持つか何の真甦を持つか見極める事が出来ないと死ぬことになる。」


「リューイ准将は今のお前の100倍強い、それもわからないで、何を言っているんだ?」


「お前は基礎は完成形に近い、後はその応用が大事だ。」


「フーカ達は基礎もまるで出来ていないが、真甦量が半端なく多い。戦場で死なねように強く育てるために別メニューにした。それだけだ。」


ホセは「僕は真甦量で彼らに負けていると、、、」


ランガードは冷たく言い放った「そうだ!死にたくなかったら、辞めてもいいんだぞ。」


「・・・・・・・」


「やめません!!僕は真甦量ではなく使い方と知恵で強くなるようにします!!」


俺はホセの前まで行き、、、抱きしめた。

「絶対、死ぬんじゃねぇぞ!!」ホセの耳元でささやく。


ホセは目を輝かせて「はいっ!もっともっと強くなるよう頑張ります!!」


俺は自分の子供を見るように「よしっ!いけ!そしてもっと強くなれ!」


ホセはしっかり者で、今まで順風満帆(じゅんぷうまんぱん)で人生を過ごしてきた。


真甦を持つ者は少なからず、『なぜ、自分だけ?』と言ったことで悩むのが普通だ。


しかし彼の故郷は農村で、水の真甦を重宝がられ、(あが)めたてられてここまで来ている。初めて、人生に立ちはだかる壁に向き合い乗り越えようとしている。


「わかりました!リューイ副団長、勝手な事を言い失礼いたしました。」


リューイはにこりと笑い

「頑張って下さい。」と優しく微笑む。


今度は俺を見て

「先天的に人を引き付けるのが上手ですね、考えて物は言ってませんよね」


俺は「ああ、何も考えてねぇよ。」


「ただ、死なせたくないだけだ。」

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