皇太子の御忍び
舞踏会を抜けだした、一行はお忍びで町の酒場に出る事に、、、
大巌氏勲章を授与した俺は、授与式後の舞踏会をシュスとリューイと三人で脱出に成功した。
黒曜天宮最高階バルコニーに三人で立つ。
俺は本気で「助かったよ、リューイ、マジで殺されるところだったぜ。」腹をさすりながら言う。
(あんな事するからじゃないですか?)
舞踏会の公衆の面前でシュスは自分の小さな口を俺の口に押し付けてきたのだ、、、、
(俺は被害者のはずだ、、、っと思う、、、)
シュシィス・スセイン氷結の女王は俺の体にピタリと寄り添う。(くっつきすぎじゃねぇ?)
身長195センチの細身で赤髪のランガードと身長180センチの見目麗しい小顔で銀髪のシュシィス・スセイン氷結の女王が立ち並ぶ姿は絵画のような、この世の者でもない優美で秀麗な美しさを放っていた。
「美女と野獣のようだね」いきなり後ろから声をかけられる。
思った通り、リスティアード皇太子殿下だ。
(リューイの超神速に着いてこれるのはこの人位しかいねぇしな)
「大将、こんな所まで追っかけてきてまだ殴り足りねぇのか?」
「はは、違うよあれは祝福したんだよ」
(殺されるとこだったぞ、、、)
王子がニコニコしながら「ねぇ、ランガードこれから町の酒場に行こうよ」爆弾発言!
「そんな事、レィリアに知られたら俺は間違いなく殺されるから駄目だ。」
リューイは(この間は、蹴られて二回転吹っ飛びましたからね、、、)
「ばれなきゃいいんだよ。」と譲らない王子。
「それに、今回の戦争経過、聞きたくない?」
(それは聞きたい、、、)
そこでシュスが爆弾投げ混む
「我夫の主君と人間関係を良好な物としておくのは妻の務めでございます。」
(いや、まだ結婚してねぇし、、、ほんとにするのか?)
王子は満面の笑みで「そうだよ、シュシィス・スセイン氷結の女王とも信頼関係を気付かないといけないよ」
女王が「どうぞ、シュスとお呼び下さい。皇太子殿下」
王子が2メートルの長身で微笑み「ありがとう、シュス。それでは私的な時は僕の事をリアードと呼んで下さい。」
「光栄でございます。リアード様。」シュスは目を伏目がちにお辞儀をする。
「それじゃ、30分後に黒曜天宮 北裏門に着替えて集合ね。」ウキウキしながら皇太子は言う。
(変なこと教えちまったかな?)
ー黒曜天宮 北門裏口ー
4人全員、平服で俺とリューイは剣を腰に差しシュスは真っすぐ伸びた銀髪を後ろでひとつに束ね、薄い布のふわりとした服を腰でサッシュベルトの様な物で巻き、スタイルの良さを際立たせていた。
リスティアード皇太子殿下はラフな布地の上着を軽く羽織って細く黒いズボンを穿き、剣は帯びていない。
どんな格好をしても様になる王子様である。
4人は門衛に見つかる前に、消えていた。
帝都アーセサスの中央通りを歩く、リアードと俺とリューイとシュス。
(みんな、振り返るぞ、、、大丈夫か?)
「何処に行くんだい大将?」
「うん、以前に馬車から見えた、酒場に行ってみたくてね」
その酒場は中央通りの端に近く、小綺麗で洒落た感じだが、あまり目立たない一軒、通りから横道に入った場所にあった。《Alain亭》と看板が出ていた。
(リューイ店内を確認しろ)真魂交神で命じる。
途端に消え去るリューイ准将。
暫くすると
店の扉を開けて「大丈夫です」とリューイが出てくる。
店内はうす暗く、個室風に仕切られた店内だった。
俺は一番奥の席に王子とシュスを案内して、王子が自然に上座に座り、俺とシュスが横並びに座り、リューイが一人で座った。
リューイが席を立ち注文に行く。
「何か、わくわくするよね」王子の目がきらきら光って、興奮してるよ、、、
シュスが「アースウェイグ帝国は黒曜天宮と言い、アーセサスの街並みもとても栄えていて活気があり、清潔ですね」
リアードが「内は尚武のお国柄ではあるけど、大陸南部に位置し、農作物も豊富だし漁港もあるので貿易や漁業も盛んなんだ。」
麦酒を運んできた、男性店員がシュスに見とれている。
リアードが麦酒のグラスを持って
「ランガードの勲章受勲じゃなくて婚約に乾杯しよう」
「「「か・ん・ぱ・い、、、」」」
(こんなとこでもその話、、、)
急に顔が真面目になってリアードは淡々と話し始める。
「事の発端は、リギアで禁断の人間改造をしていると密偵から報告があってね。」
「調べていくうちにリギアは死人を古代魔法で甦らせる技術を完成したというんだ、そしてその死人の軍隊がアースウェイグの国境に4万集結していてね」
「そんな折、シュスの村で魔鉄、発掘の噂が流れてきてランガードに行ってもらったんだけど、こんな事になるとはね」
俺が口をはさむ「どの時点で大将は戦争をすると決めたんだ?」
リアードは怖いくらい鋭い目をして
「死者を甦らす、古代魔法があると聞いた時だよ!人間が人間を造るなんて事は禁忌に触れる、あってはならない事だ。」
「・・・・・・・」
「始めにリギアの民の様子を探らせた、もしかしたら民も死人なのかと思ってね、でも違った。禁忌を犯していたのは共和国の上層部と研究開発していた機関だと判明した。民はごく普通の人間だった。」
「リギアの上層部は無限に作り出せる兵士を持って、愚かにも我帝国を侵略しようと兵を国境線に集結させた。」
「その時点で、アルセイスの黒龍騎士団はリギアに全騎士を潜入させ、銀鷲騎士団には人体製造研究所の近くまで、平民の姿で潜伏させた。」
「その後、4個騎士団に出動命令を出し、夜に行軍させて敵に気づかれぬ内に国境周辺に配備できた。」
「敵の国境線には二個方面軍6万を進軍させた。合計九万五千の帝国軍が敵が動き出す前に出動し準備を整えた。」
「しかし、いくら敵が禁句を犯しているからと言っても、こちらから戦争を仕掛ける事は出来ない。周辺諸国が帝国を脅威と判断し各国同盟を組んで攻め込まれては面倒だからね」
(面倒とは、、、やられる気はサラサラないって事か、、、)
「そこに、敵は氷雫連山にも二万の軍を揃え、氷結の村を襲うと知りランガードと【火の民】に行ってもらい、その支援に銀鷲騎士団から一個千騎士団を増援に向かわせたんだけど、いろいろあったみたいだね、そこら辺は、、、」
「ああ、もういろいろありすぎて一晩じゃ語りつくせねぇよ」俺はグラスに残った麦酒を一気に飲み干し、空いたグラスをリューイに渡す。
すかさずリューイがグラスを取りおかわりを注文しに行く。
シュスがしおらしく「そのいろいろの部分は私共にも責任があります、、、」うつむいて小声で言う。
料理とおかわりの麦酒が人数分来る。
配膳している男の店員がまたシュスに見とれている。
店員がいなくなるまで誰も何も喋らなかった。
王子が「でも、そのいろいろあったおかげで、全てこちらの思惑通りに進み、わずかな時間で片付いたって事だね」
俺が「もし、俺が負けていたらどうしたんだ?」
びっくりした顔をして「君が負ける事は、まったく考えていなかったよ。」
「いつも何とかしてしまう人だからね君は昔から、、、」
シュスも俯き酒が入ったせいか頬を赤らめ「あなたの戦いぶり采配は、軍神の如く熱く激しく正確でした。」
大将とリューイが無言で俺を睨む。
(だから俺のせいじゃねぇって、、、)
王子が仕切り直して真面目な顔で「戦争も会議も始まる前に大体決着はついているもんだよ。」
(会議と戦争を一緒にしないでくれよぅ~)
俺が「そういう話は事前に教えてくれよ。」
「君は【自分の正義】に従って戦った方が、想定外の良い結果になるから黙っていたんだよ」ニコニコしながら話す金髪のイケメン皇太子。
(確かにかなりの想定外ではある、、、)
「わかったよ」俺は脛に身を持つ者なので、これ以上揶揄われない様真面目な話をした。
「リギア国は今後どうなるんだ?10万もの軍隊を動かしたんだ、金も相当掛かっているだろう?」
皇太子は小声で周りに結界を張り話し出す。「リギア国は帝国主導の元、民主統治国家に生まれ変わる。」
「前王家と幕僚、側近、国の運営にかかわっていた重要人物はすべて排斥した。」
「リギア国民には期限付きで税収を無くし、水、食料、物資の補給をアースウェイグ帝国皇帝陛下の名に置いて行っている。」
「戦闘で壊れた公共や民間、国民の建物、道、家全て無償で修復修理している。」
「当分はアグシス国務長官が統治する事になるだろうけど、いずれはリギア国から優秀な人材を登用して民主議会を作り民主制に移行する。軍隊は持たない帝国の友邦国としてね」
俺が「随分と大盤振る舞いじゃねぇか、金はどうすんだよ」
王子はにやけた様に「ランガードの真似をさせてもらったよ。前王家及び貴族、庄家の金持ち達から巻き上げた。国民からは一銭も取ってないからね」
「それにリギア民主統治国の治安維持はアースウェイグ帝国が行う。その費用を今後徴収していく。」
「大儲けとまでは行かないけど充分、採算は合うよ、何よりも古代魔術云々の怪しげなものを排除できたのは何より良かった。リギアの国民にとってもアースウェイグ帝国にとってもね」
シュスがおぞましさを思い出したように「あの、黒蟻軍団の狂気は古代魔術により死者を甦らせたものだったのですか、、、」思わず両手で自分の体を抱く銀麗の美女だった。
リスティアード皇太子が思い出したように
「お金と言えば、ランガード君はこれから凄い金持ちになるんだよ!」
「興味ねぇな。」俺はにべもなく返事する。
「そういうと思ったんだ、僕が権力に執着しないのと同じで、君もお金には執着しないもんね」
「でもね、聞いて欲しいんだ。君は今やアースウェイグ帝国の重要人物の一人なんだよ」
「何だよそりゃ」
「【火の民】の族長、不死鳥騎士団の団長、氷結の女王の夫、魔鉄の仕入れ元、どれか一つをとっても大変な事なのに君は全部持っているのだからね」
「アースウェイグ帝国にとっては竜騎馬も魔鉄も君も無くてはならない存在だという事さ」
「特に魔鉄は君の言い値で、帝国は購入するしかないからね、不死鳥騎士団の予算不足なんてすぐ解消するよ」
「シュスはきっとそこまで考えて、あの場で君を夫にする事と魔鉄を全て君に売る事を発表したんだと思うよ、どうなのかなシュス?」
シュスはお酒が入ってほんのりと赤い顔をしながら
「それは、秘密です、、、」
「とても、頭が良く、器量も度胸も兼ね備えた、君にはぴったりの奥方だ。」
「光栄です。リアード様」シュスは微笑み目を閉じお辞儀する。




