氷結の女王初めての黒曜天宮
リスティアード皇太子殿下と氷結女王初めての会談は想像もつかない事に、、、
トンカン トンカン
シュシィス・スセイン女王をアースウェイグ帝国帝都アーセサスまで運ぶのに空飛ぶ輿を製作中である。
二本の柱の真ん中に4人ほどは入れる箱があり、【火の民】神速部隊片側10人、合計20人で移動する神速で飛ぶ、乗り物である。
カンコン カンコン
2時間後
「族長、準備できました。」リューイが頭にねじり鉢巻きして現われる。
俺は「神速部隊の人選は済んでいるか?」
「はいっ」返答が早くて、ハキハキしているのがこいつの良い所だ。
「女王、そっちはどうだ?」俺は後ろを振り返り、女王に声を掛ける。
女王は頬を赤らめ
「シュスとお呼び下さいませ」
(あ、地雷踏んだなこりゃ、、、)
リューイが薄く開けた横目で俺を見ながら
「族長も一緒にシュス様とご一緒されるんですよね」
(来たよ~)
俺は両手を組み、上に思い切り伸びる。太陽が眩しい、白銀の一色の世界でも太陽はいつも昇り沈む。
当たり前の事だが、戦闘の後には特に気持ちの良いものである。
今日も太陽を見る事が出来たと感謝するのだ。
「さぁ、帰るぜ黒曜天宮によ!」
輿にはシュスと俺とゼス隊長、女王の近習が世話役として乗り込んだ。
【火の民】20人の抱える輿に乗り、神速を体験するのは女王にとっても初めての事なので、少し興奮気味に見える。
(それがまた、可愛いんだな、、、)と俺は密かに思う。
リューイが皆に声を掛ける
「始めはゆっくり、徐々に速度を上げます。皆速度を合わせて下さい。」
「初瀬が先頭で速度を調節して下さい。僕は一番後ろに着きます。皆、食料も持ちましたね」
エイブ・フォリアン千竜騎士長が見送りに来てる。
「皆様、お気をつけて、氷結の村は私が責任もってお守りしますのでご安心ください。」
女王が窓から顔を出し、首部を垂れ「よろしくお願い申し上げます。」と言い、エイブと輿の中から手を出し握手を交わす。
「出発します。」リューイが叫ぶ。
その瞬間、焦げ臭い臭いを残して、飛び去る。
帝国の騎士達には見えただろうが、普通の人間には忽然と姿が消えたように見えた事だろう。
約半日の旅である。
通常馬なら2週間はかかり竜騎馬でも10日は掛かる距離をたった6時間で移動してしまうのだから、【火の民】の強みである。
風の真甦や天の真甦を持つ者も訓練によっては同等かそれ以上の移動速度を持つ事が出来る。
だが、組織として神速を実践活用しているのは【火の民】以外にはいない。
輿の中ではシュスがはしゃぎまくっていた。
「すごい、すごい、景色があっという間に流れていきます。」窓から見える様子を見て興奮している。
ゼスも興奮気味に「この様な事が実際可能なのですね」
女王の近習はあまりの速度の恐ろしさに目をつぶったまま全身に力を入れて緊張している。
俺は自慢げに「これでも大分速度を落としているんだぜ」
「本気で飛んだら、こんな物じゃねぇよ、特にリューイが本気で飛んだら俺でも見切れねぇよ」
女王は俺の横に座っているのだが、体をくっつけ
「リューイ様はランガードにとってどのような方なのですか?」
(くっつぎすぎだろ)
「リューイは親友であり、俺の一番の理解者で優秀な副官だ」胸を張って答える(本人の前じゃぜってぇ言えねぇからな)
「そうですか、、、【火の民】の皆さんは何処にお住まいなのですか?」シュスが美しい顔を伏目がちに聞いてくるが、どんな時も美しい女性であった。
「炎元郷って所に住んでんだが、場所はアースウェイグ帝国では国家機密になっている」
「国家機密?」シュスが人差し指を自分の顎につけて考える仕草がかわいい
「エイブが乗ってたろう、竜騎馬。あいつの唯一の生産場所なんだよ」
シュスの目がパッと輝き「あの勇猛な動物ですね」(ころころ変わる表情がまた、かわいいなぁ)
「ああ、炎元郷には氏族を合わせると5万人もの【火の民】が暮らしている。もともと戦闘部族だから皆、滅茶苦茶強い!」自分の事の様に自慢するランガードを見てにっこり微笑みかけるシュシィス・スセイン女王
(ほほえみもかわいい、、、)
「俺はこれでもアースウェイグ帝国の今度新設される、不死鳥騎士団の団長もやっているんだ。」
「団員が多くて金がたんなくてよ、これから走り回らなくちゃなんねぇんだよ」
シュス「・・・・・」
そんな様子を横で見ていた、ゼス・フェマン隊長は(私達は間違いなくお邪魔ですな、、、、)
半日の旅程はシュシィス・スセイン女王と俺にとってはあっという間のひとときだった。
ゼスは只一人、浮かぬ顔でいた。
(こなきゃよかった、、、)
黒曜天宮正門中央広場に空飛ぶ輿は焦げ臭さと共に着陸した。
輿から出るとレィリア・アストネージュ武神将が近衛騎士を20人ほど連れて待っていた。
輿から俺達4人が出ると、レィリアはスッと近づいて来た。
俺は「よぅ、レィリ、、、、」と言いかけた所で、レィリアに無視されて俺の隣を歩き過ぎ、シュシィス・スセイン女王の前で右膝を付き
「黒曜天宮にようこそおいで下さいました。金獅子近衛騎士団団長をしております。レィリア・アストネージュです。」
女王は驚きの表情で「精霊 じょ、女王様、、、」
リューイが(あ、女王様の今の気持ちすごく良く分かるなぁ~)
「失礼いたしました。私は【氷結の村】を治める、シュシィス・スセインです。どうぞお立ち下さいませ」
右手をレィリアに差し出し握手を求める。
レィリアはゆっくり優雅に立ち上がり、自分より長身の氷結の女王と握手する。
金と銀の女神が降臨したような美しさである。
思わず「ほうぅ」っと吐息が漏れるゼス隊長であった。
レィリアが厳しい顔をして
「リギア古代魔術共和国より使者が来ております。どうぞこのままおいでいただけますか?」
凛と顎を上げ「わかりました」と答え歩き出す。シュシィス・スセイン氷結の女王。
俺は後に続く(早いな、、、)
黒曜天宮【謁見の間】に案内された。
玉座に座るは第87代アースウェイグ帝国皇帝ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグ陛下であられる。
いつもの様に右側にリスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ皇太子殿下。
左側にアルフィス・アソルト・アグシス国務長官が並び立つ。
玉座の後方と謁見の間の回りにはいつも以上の近衛騎士が並んでいた。(なんかいつもより物々しいな、、、それにアルセイスがいねぇな、、、武神将もいつもより少ないような、、、)
俺達の左横にリギア古代魔術共和国の使者は2人で左膝をついていた。
使者は声高らかに誰の許しを請うでもなく語り始めた。
「氷雫連山の氷結の村なる場所は古代より我、リギア古代魔術共和国の領土であーる!」
「我、領土を侵略し我軍に甚大な被害を出した、貴国に損害賠償請求を求めるであーる!!」
しぃーん、、、、
リギアの使者が返答を待っていても誰も口を開かぬ。「・・・・・」
リスティアード皇太子が一歩前に出て
「陛下、お耳汚しでございます。ここは私にお任せいただけませぬか?」
アグシス国務長官も「それがよろしいかと存じます陛下」
皇帝陛下「わかった、うぬらに任せようと言って立ち上がる」サッと近衛騎士が50人ほど周りを囲み、退席する皇帝陛下。
使者は慌てて「ま、待たれよ、、、逃げるのであーるか」
リスティアード皇太子が初めて聞くような大声で怒鳴る。
『黙れ下郎!』
ビシッ ビシィ ビシィ
謁見の間のガラスに無数にひびが入る。
シュシィス・スセイン氷結の女王は(し、四海聖竜王様、、、の逆鱗に触れた、、、)
圧倒する迫力と衝撃に、思わず座り込んでしまうリギア国の使者、、、
リスティアード皇太子が氷結の女王に向き直り先程とは打って変わり、優しく語らい始める。
「誇り高き、氷結の女王よ、リギア古代魔術共和国の使者はこの様に申しておるが、どう思われますかな?」
氷結の女王は顔をあげ凛とした張りのある声で
「我らが氷結の村は100年以上にわたり、自治統治をしてまいりました。どこの国の領土でもありません!!」
リギア国の使者が「な、何を言っているのであーる?氷結の村なるは古代より我国の領土であーると古文書にもかいてあーる」
アグシス国務長官が表情を変えずに
「貴国リギア古代魔術共和国は建国たしか92年でありましたな」
「100年以上続く氷結の村が帰国の領土であるとの主張は説得力に欠けますな」
リギア国の使者は更に言いつのる。
「証拠もそろっており、貴国の我軍に対する行動は侵略行動ととらえてもよろしいのかであーる」
「だまらっしゃい!」氷結の女王が初めて感情的に大きな声を出した。
「あなた方、リギア国は何の先ぶれもなく突然、2万の軍勢でいきなり、我村を襲撃してきました。それを防いだのは勇敢なるアースウェイグ帝国の【火の民】300名余りでした。」
「あなたは私達の村を自分の領土だと先ほどから言っていますが、わずか300名の戦力で救っていただいた、アースウェイグ帝国は私共に何の見返りも請求も未だしてきません。」
「自分達の正義が本物なら言葉ではなく行動で示しなさい!!」
パチ パチ パチ パチ パチ
リスティアード皇太子が拍手している。
「リギアの使者よ、貴国に対する防衛行動を侵略ととらえるならば、貴方はどうするのだ?」
リギアの使者は汗をかきながら
「せ、せ、戦争であーる」
皇太子は静かに
「我、アースウェイグ帝国とリギア古代魔術共和国で戦争するという事ですかな?」
汗をだらだら出しながら
「せ、せ、宣戦布告するであーる」
リスティアード皇太子は後方の垂れ幕に隠れてる人物達に振り向き声を掛けた。
「各国、駐在大使の皆様今のお話聞かれましたかな?」
後方の垂れ幕より10人ばかりの豪華な服を着た者達が現われる。
アースウェイグ帝国に駐在する各国大使のお歴々である。
友好国パヴロ聖王国大使が声を張り上げ
「我らが証人となろう、此度の戦はリギア古代魔術共和国から起こした戦であると」
リスティアード皇太子は「各国代表には祖国に連絡していただきたい。此度の戦争はアースウェイグ帝国の侵略戦争ではなく身に掛かる火の粉を払う戦いであると!」
「アースウェイグ帝国は他国に対し無法に攻め入る事は無いとお伝えください。」
パヴロ聖王国大使は「わかりました。必ず伝えましょう。」
他の国の大使も同じ事を約束して、謁見の間を後にした。
俺は思う(おいおいこれって、俺はめられたんじゃねぇ、、、)




