氷結激戦
氷結の村での激戦も最終局面に向かっていくが、そこで意外な出来事が、、、
陽が昇る。
いつもと変わらず、陽は登る。
氷結の村に取り、突然襲いかかってきた不気味な軍団。
リギア古代魔術共和国正規軍と最後の激戦が始まる。
氷結の戦士はほぼ半数の1千名が昨日の戦闘で戦いには参加できない。
【火の民】紅蓮の戦士270名。
敵リギア古代魔術共和国軍約6千名+古代魔術によって命を吹き込まれた人形兵士達。
相当不利な状況から、大分敵軍を磨り潰し数を減らしたが、それでも倍以上の兵力である。圧倒的不利は変わらない。
ランガードは砦の端に立ち氷壁の向こう側、リギアの軍を睨みつけている。
後ろからゼス隊長が声を掛ける。
「ランガード殿、お話があります。」
「なんだ」ぶっきらぼうにランガードは答える。
言いにくそうにゼス隊長は言葉を紡ぐ
「女王様の事ですが、シュシィス様の使う双剣は代々女王家に継がれてきた神具です。」
「威力はご存知かと思いますが、あの剣は使う者の力を非常に消耗させます、、、先代女王も力を使いすぎて氷の塵となりお亡くなりになられました。」
「この様な事言える状況でないのは良く分かってますが、どうかシュシィス様をお守り下さい。」
「そうか、、、」静かに答える。
忽然と初瀬・燕が現われる。
「敵が動きます。」
「どっちだ?」
「正規軍です。」
「【火の民】戦闘可能な、紅蓮の戦士達を全員集めろ」
「すでに準備整いましてございます。」
俺は後ろを振り返り、「ゼス隊長、氷結の戦士で遠距離攻撃が得意なものを集めろ!」
「はっ!」
体が大きい割には俊敏に駆け出す。氷結戦士隊長。
「初瀬!飛べる者が氷結の戦士を抱いて敵頭上より氷結の嵐をぶちかませてやれ。敵の出鼻をくじき、陣形を取らせるな!」
「遠距離攻撃組は砦の防衛に就け!!」
俺は右手を握りジッと念じる。
(来い!牙炎!)
(・・・・・・)
いつもの返事は無い、、、
「くそっ!!」思わず、吐き捨てるランガード。
「私も参ります!」
シュシィス・スセイン氷結の女王は凛とした声と態度で腰に双剣を鞘にさして剣帯で左右に吊るしていた。
この様な戦場でも、女王の美しさに陰りは全く見られない。誇り高く清々しい清涼感さえ、感じられた。
俺は女王に向き直り「女王はあの黒虫共が出てきたら、やっつけてくれ、正規軍は俺達で何とかする。」
ランガードの迫力に押されて「わかりました」としおらしく可憐に答える。
ランガードは普段はふざけた事も言うが、いざ戦闘になると他を寄せ付けない迫力が全身から噴き出す。
命を失う、あっけなさと喪失感を幼い頃から嫌と言うほど見てきたせいだろう、、、、
「敵が氷壁より出てきました。正規軍です。」
初瀬・燕が緊張した声で報告する。
「真正面から戦うんじゃねぇぞ、少しずつ敵軍を磨り潰して減らせ。氷結の戦士の方は準備できたか?」
ゼスが少し息を切らし「揃いました。」と興奮して言ってくる。
「よし、攻撃開始!」
「「「「焼き払え!!」」」」」
【火の民】が氷結の戦士を抱きかかえて
ジュ、ジュ、ジュと地面の氷を溶かし掻き消える。
【火の民】と氷結の戦士コンビ。
リギア古代魔術共和国正規軍はぞろぞろと崩れた氷壁の間から出て来て陣形を組もうとしてる正にその時。
突如
上空より、氷結の嵐がリギア正規軍を襲う。
何の準備もしていなかった、リギア軍はバタバタと氷の矢に貫かれ大量の血を流し絶命する。
敵の姿は、、、
見えない、、、
降り注ぐ氷の矢衾。
敵兵千名も倒した頃から、やっとリギア軍は盾を上方に翳し、氷結の矢を防ぎ始めた。
ランガードがシュシィス・スセイン氷結の女王に向かって叫ぶ「後の指揮は頼むぞ!」瞬間、炎の玉となり掻き消える。
「ご武運を、、、」心の中でそっと呟く、氷結の女王であった。
ランガードは敵軍、東側氷壁の奥の空中に炎の玉となって表れた。
直ぐに空中で人の形になり、使い慣れた大剣を引き抜き真甦を練り上げ吹き込む。
赤い炎が太陽を背にして大きく丸く、リギア軍を後背より襲う。
連発で炎が地上にぶつかり飛び散る。
まるで、太陽が降ってきたような錯覚さえ覚える。
自軍の真後ろから登っていく太陽。
陽を背に振ってくる大きな炎の攻撃をかわす事も受ける事も叶わず。
リギア軍は燃え崩れ、パニックに陥っていた。
ランガードはあえて、炎の温度を上げず、広く大きく燃やし尽くしたのだ。
人型焼夷弾が氷の焼け野原に降り立つ。ランガードの降り立つ地面の回りに炎が獰猛に揺れ動き騒ぎ立てる。
「燃やしてやるからかかってこい!」
鉄火の如く、周りを睨みつけ吐き出す言葉は、猛獣の咆哮の様な威力があった。
ランガードの回りにいたリギアの騎士は怖気づいて、1歩、2歩と下がり始める。
そこに特大炎の焼夷弾を放つ。燃え盛り、逃げまどうリギア騎士。
そこへ追撃で4、5発どでかい炎焼夷弾を放つ。
見方をなぎ倒して、氷壁の向こう側に逃げていくリギア軍。
ランガードは(今はここまでだな、、、初瀬引け!)念じる。
ランガードはリューイの他に、紅蓮の5柱とも真魂交神しているので念じただけで心の声が伝わる。
ランガードも来た時と同じように、炎の塊となり掻き消える。
氷結の砦の中では皆、昨日から続く戦闘の疲れも見せず。
死者を一人も出すことなく、敵を撃退した【火の民】達が称えられていた。
体の大きさで言うと、此度の【火の民】は神速、遠距離攻撃中心の陣なので、小柄な者が多く【氷結の戦士】の方がひと回り大きい。ランガードを除いては
【火の民】神速部隊に抱えられた、氷結の戦士は所々焼け焦げていたが、気にする者は一人もいなかった。
神速を初めて経験した、氷結の戦士が興奮冷めやらぬ様に騒ぎ立てる。
【火の民】の戦士と握手する者、抱き合って喜びを表す者、背中をバンバン叩き勝利を祝す者、、、
俺は敢えて、次の敵との戦いは壮絶になるだろう事を話さずにいた。
今はこの士気の高さが必要だ。
女王が駆け寄り、頬を少し火照らしながら
「お見事です。ランガード殿」
こういうシュシィス・スセインは凄く別嬪で素敵に微笑ましく感じる。
俺は女王だけに聞こえるように小声で話す。
「今回は勝てたが、次は奴等全戦力を投入してくるぞ。」
「俺達は殺しすぎた。奴らは降伏や撤退はしないだろう」
「今のうちに、元気な民は下山させた方が良いのではないか?」
女王「・・・・・」
俺が「悔しい気持ちはわかるが、最後の一兵迄も戦い死ぬことを選ぶか?」
女王「勝てませんか?」
俺は「勝てないとは言ってない。【火の民】は生き残るだろう。だが、奴等の何とも言えん不気味さが俺の中で警鐘を鳴らす。」
(封印が解ければ、勝てるとは今は言わなかった、、、不確実な期待を持たせたくなかったから、、、)
女王の凛とした目鼻立ちが整った小さな顔を飾る真っすぐ伸びた銀髪が風で揺れる。
「氷結の村は100年以上にわたり、この地に根付いて参りました。今更、違う土地に行くなど考えられません。」
「勝ちましょう!この戦。」
(人の話、聞いてます?)
俺の両手を握り、「ランガード殿、お力をお貸しください。必ず勝ちましょう!」
(前向きというか、肯定的と言うか、積極的と言うか、、、)
ちょっと、俺も手を握られ照れてしまい、思わず目を逸らしてしまう。
所変わり、超神速で相変わらず飛び回るリューイ准将。
(本気で見つからないよ、おばあさん、、、異界に高位魔法で隠れているとしたら、、、見つけるのは難しいですね、、、)
「!!」
「あれは?」
超神速で近づいてみる、、、
ー氷結の村ー
初瀬・燕が叫ぶ。
「黒虫が出て来ました!!」
俺は女王を見て「頼めるか?」と聞くと同時に「無論」と答えが返ってきた。
「【火の民】遠距離攻撃部隊はシュシィス女王を守り黒虫共を叩き潰せ!!」
「「「焼き払え!!」」」
砦より出撃していく女王とゼス隊長率いる氷結の戦士と【火の民】遠距離攻撃部隊、見送るランガード武神将。
蟻の群れの様に白銀を黒色に染めていく、禁断の古代魔術によって、命を吹き込まれた人形たち。
自らの意志もなく、痛覚も無く、ただただ異様に目をぎらつかせ、襲いかかってくる。
女王たちの迎撃が始まる。
天と地から矢継ぎ早に襲いかかる無数の氷結の矢。
防御と言う事を知らない、人形兵器は仲間の死体を踏みつけ、乗り越え襲って来る。
「!!」ランガードが後方を見て驚く。
リギア古代魔術共和国正規軍が人形共を盾にして進軍してくる、盾を上に翳し、蟻共と一緒になだれ込んでくる。
「やばい!!【火の民】神速部隊、黒蟻共の後方に正規軍が出てきた。けん制しろ!」
一気に飛ぶランガードが珍しく、額から汗を流している。
(牙炎!あんなクソ婆に封印されておとなしくしてんじゃねぇぞ!!)
俺は強く、体の中に向かって念じる。
(ブル、、、ブル、、、)
牙炎の気配は感じないが、必死に蠢くのを感じる。
(もう少しだ、気合入れやがれ!!)
(ブル、、、ブル、、、)
シュシィス・スセイン女王は右手に持つ鈍く銀色に輝く短めの剣を振り、無数の氷結の矢を地面より吐き出す。
そして、左手に持つ氷のように透き通り細かな細工が施してある剣を上から下に振り下ろす。
無数の氷結の矢が天空より落ちてきて黒蟻共を串刺しにする。
黒い人形兵士は、仲間の顔を履み砕き、腹に足を突き刺し、よろよろしながらもただ、ぎらついた目で襲い掛かってくる。
女王は肩で息をしながら、双剣を上に横に振り続ける。
顔色が蒼白になりふらつきながら、剣を振るう。
ついに、女王の剣が止まった。剣を地面に突き刺し、倒れるのを防ぐ、シュシィス・スセイン女王は死人のような顔色で全身で息をしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、次から次へと人形風情が!」
攻撃の止まった、女王をすぐさまゼス隊長が助けに入る。
【火の民】遠距離攻撃部隊は女王の左右に並び必死に火炎攻撃を繰り返し、人形を焼き払っていた。
炎も怖がらず、自ら炎に飛び込む虫の如く人造兵士はすぐ間近まで、迫ってきた。
BOW!!
轟炎が辺り一帯を灰に変える。
ランガードが叫ぶ「【火の民】神速部隊、女王と氷結の戦士を連れて砦迄撤退!」
「遠距離部隊は、時間を稼げ!」
初瀬・燕から真魂交神で
「敵正規軍が黒蟻の中に紛れています!気を付けて下さい。」
女王を守っていた、ゼスがいきなり、右手に矢を受ける。
「ぐっ!!」
黒人形共の間から、リギア正規軍が矢を放ってきた。
黒い集団の中から、大剣を振りかざし立ち上がる兵士達!
正規軍を相手にすれば人形共に埋め尽くされる。
人形共を相手にすれば正規軍から攻撃を受ける。
人造人間とリギア正規軍の混成攻撃にたまらず、後退する【火の民】遠距離攻撃部隊、氷結の戦士は次から次に黒い波にのまれていく。
最悪の展開だ。
ランガードの赤い髪が青き炎で燃え上がる。
全身からも青白い高熱の炎が噴き出し、周辺を灰にする。
体中から出る威圧感が心の無いはずの人形も含め、敵軍を怯ませる。
爛爛と白く輝く双方の目!
ランガードが一歩前に出ると、その周辺の敵兵は二歩下がる。
人造人間で、魂の無い人形があり得ないはずなのに怯えている、、、
「ぶちかませ!牙炎!」大声で叫ぶ!
心の中で何かが弾ける。バリン!
丁度その時、ランガードの隣にリューイ准将が現われる。
「あのおばあさんは見つかりませんでしたが、友軍を連れてきました。」
どどどどどどどどー
竜騎馬隊の行軍だ!
旗印は、、、銀色の地に黒い鷲をかたどった【銀鷲騎士団】であった。
竜騎馬の勢いは凄まじく、敵軍の人形、正規軍共々踏み砕き口から炎を出し焼き払う。
シュシィス・スセイン女王は最後の力を振り絞り全員に声を掛ける。
「援軍が来た今こそ、好機です。全軍総攻撃!!」
俺は炎を消し、そっとシュシィス・スセイン女王を抱きしめる。
「もう大丈夫だ。後は俺達に任せろ」
女王はそれでも素直に聞き入れず「攻撃を、、、」叫ぼうとした口がランガードの口で塞がれていた。
(ぞ、族長、、、)驚きのリューイ
そっと、口を話し「後は任せろ、氷結の戦士は全軍砦まで後退だ」
女王「・・・・・・・・・」
「リューイ、女王とこの辺にいる氷結の戦士を砦内に運べ!」
「はいっ、皆さん手を繋いで下さい。行きますよ」
何の痕跡も残さずに消え去る。
俺は右手を見てぐっと拳を握る。
「よしっ!!」




