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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
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3-44 進展4

 ラックの成人の儀も終わり秋の上月1週目も途中。

例年同様お隣さんA家の手伝いに来ている。


「それで来年からもう少し広げることになったんだ」


今年もヨークと駄弁りながら作業だ。

お隣さんA家はどうやら来年から畑を広げるようだ。今年は菜種のおかげで周辺の畑をどうこうでいなかったからな。


「なるほどね。この1年で随分魔闘技も達者になったみたいだしいいじゃん」

「そりゃあるとないのとじゃ終わるまでにかかる時間が違うからな。必死にもなるさ」


ヨーク達も頑張っているようだ。

うちのリュートやフェリもそこそこ魔闘技がマシになった。ただ、魔力量的にはまだまだ発展途上の段階だ。



 更に日が経ち、粒取りの手伝いをしていたある日の事。

今日も手伝いが終わり家に帰ると、


「ウィル、手紙が来てるわよ」


母から手紙を受け取った。

ニック達か?と差出人名を見ると、クロディーア。つまり店主さんからの手紙だった。


部屋に戻り手紙の内容を読み始めた。

店主さんの手紙はニック達としている手紙と随分言い回しが違うため読むのに四苦八苦したが、要約すると、どうやら秋の間に来れないか。来れるならその日時は。という内容の手紙だった。


「おかしい」


秋には出来立てホヤホヤの紙を毎年卸しに行ってるので、今更手紙を送られてくる理由が分からん。

しかも日時を聞くとは・・・・・・・怪しい。


露骨に怪しいが・・・・・・ふむ。



後日返事を書いた手紙を送った。




 秋の上月38日店主さんの家の前にやって来た。


扉をノックすると、


「はーい」


扉から店主さんが顔を出した。


「こんにちはー」

「こ、こんにちは」

「それで今日はどんな用なの?手紙を送って来るなんてすごく珍しい事だと思ったんだけど」

「それなんだけど」


とそう言って店主さんが扉を大きく開くと、


「久しいの」


部屋の中にはあの老人が居た。


「はぁ、どうも。それで店主さん今日はどんな用なの?」


老人に挨拶を返すと、再び店主さんの方を向いて尋ねた。


「ええっと今日用があるのは私じゃなくてヴェ、ヴェルトリーさ、さんなの」

「なっ!ナンダッテ――」


「白々しいの、儂がおった時点で気付いてたろうに」

「いやだなぁ、2人に親交がある可能性だってあるでしょう」

「お主にはこれから儂と共にある場所に来てもらいたい」


えらく直球だな。


「断る、と言えば」

「断ってもよいが、お主はあとでひどく後悔するじゃろうな」


実にいやらしい言い方だ。一体この老人は何がしたんだ。


「うーん、じゃあ行きましょうか店主さん」

「えっ、何で私」

「やだなぁ、仲介した責任位は取って貰わないと」


にこにこ


「ひぃ、分かりました。分かりましたよー」


「お主らの関係もよく分からんのぅ」



 1度店主さんが本屋に寄り、店員の子に外出を告げ外に出た。これで帰って来なければ老人のせいだという証拠作りか?やるな、俺も顔を出しておこうかな?


「あの老人は如何ほどの人物なのだろうか」


俺は小声で呟いた。

そう言うのもあの老人は駐車場の鶏車に乗り込んだからだ。

鶏車とは走鳥類が引く馬車?だ。人が乗る車の中では人力車よりよほど上等な部類で俺は乗った事はない。この老人は間違いなく富裕層の者だ。

本を買っている時点である程度そう言う層であるのは分かっていたが、改めて見せつけられた気分だ。大きさも2頭立ての4人掛け相当の代物だ。


「どうした、早く来い」


と、とりアレルギーでして。なんて言い訳もアレルギー?なんて通じる訳も無く、店主さん共々乗り込んだ。ちなみにとりアレルギーは持っていない。

既に老人と御者と共に待っていた多分護衛の者が1人座っていた。護衛はある程度の層の者には大概居るからそこまで珍しくもない。


「行ってくれ」


老人が御者に命令を飛ばしたが、予め言っといたのか行先が全く分からん。小癪な。



 鶏車が発車し揺られ始めると行先を聞くことにした。


「それでボク達を何処へ連れて行ってくれるんですか?」

「良い所じゃよ」


ヒィィな展開か。


「店主さんを差し出しますので、見逃してください」

「お主だからこそ意味があるんだがのぅ。それにまた誤解しとらんか」

「2人とも私を物みたいに扱わないでください!」


さてどうしようか。鶏車の全体が囲われたタイプではないので進む方向は容易に分かる。

でも、・・・揺れるなぁ。ホント揺れるなぁ。マジで揺れるなぁ。アスファルトで整備された道にサスペンションの効いた車両が懐かしい。



 鶏車はまず北上し、その後舵を東にとった。

そうすると、第2層との外壁が近づいてきた。


おいおい、まさか目的地は第2層か。


そして門を潜り、第2層に入った。

検問は老人の顔パスだった。人生初の第2層入りだ。門から見える景色は見た事あるがこうして入るとまた違った顔を見せてくれる。


そして層門にほど近い、ある施設の門を通り抜けた。その通り抜けた門にはこう書いてあった。


『ラダニアン学園』


どういう事だこいつは、っと店主さんの方を向いたところで情報は入らないだろうな。


学園の門を抜け、敷地内に幾つか建っている棟の1つの前で止まった。門正面にあった大きな棟ではないので、本棟ではないみたいだ。


老人に続いて降り立ちその建物に入った。

もう脳内警鐘が鳴り響いているが後悔の内容が怖いため行かざるおえない。逝くか行くか悩ましい。


建物内に入ると受付があったが、受付の人が目礼をしただけでその前を横切った。ここも顔パスか。

何とかと何とかは高い所が好きと言われるが俺達は受付を過ぎそのまま1階を歩いている。


「広いですね」

「ここは研究や実験用の建物じゃ。そこそこの広さは確保されておる」


そう言って止まった扉はこの廊下にいくつもある何も変哲のない扉だ。

何の部屋かを表すプレートも無く、何の部屋か全くわからん。


・・・・マジでご○憩か。ヤヴァい。


「………………」

「早く来い」


開けられた扉から見える部屋内は、・・・椅子と机しか見えない。

急かされるまま店主さんと共に部屋に入ると、部屋内が完全に見えた。


「殺風景なへやぁ」

「うん」


店主さんに続けて頷いたが、本当に椅子と机が1つずつある以外何もない部屋だ。ああ、もちろんホコリとかは多少あるよ。空気もあるし、次元が潰れている訳でもないなんて事もない部屋だった。


「さて、お主をここに呼んだ訳を話そうか」

「・・・・・・」

「まず儂じゃが何者か分かるかえ」

「オルタント学園元副学長」

「知っとったか・・・・・・・なるほど」


俺が店主さんの方を向いたため、老人が納得した。


そう、ここまで引っ張ったが、実は老人の正体を既に仕入れていた。




回想中~



店主さんの家の扉をノックすると、


「はーい」


扉から顔を出した店主さんの動きが止まった。


「こんにちはー」


「えっ・・・な、なんで・・約束は明後日(・・・)のはず」


うん、今日36日は予定の2日前(・・・)

あの手紙があまりにも怪しかったので店主さんの口を割らせに来たのだ。

多分あの手紙は店主さんが自主的に書いた物ではなく、黒幕がいると睨んでいる。

可能性としてはあの老人が高い。

さぁ吐いてもらおうか店主よ。


「今日ボクが来た理由。・・・分かるよね」


にこにこ









グスン







~回想終わり



な展開があったのだ。

手紙はやはり老人が書かせた物で、第2層に取引相手も多い店主さんはこの半月でその老人の情報を仕入れていたのだ。


老人の出自はこの都市の貴族家出身で、この都市の一教師から幾つか役職を歴任した後、この国で一番権威ある学校であるオルタント学園の副学長まで上り詰めた者だ。ちなみにオルタント学園の学長は慣習的に王族が務めるので副学長は実質最高位だ。そして今日来たこのラダニアン学園は老人にとっての古巣に当たる。


いやぁ聞いたときは心臓が止まるかと思ったよ。てっきりどこぞの学校のお偉方だと思っていたが、そのどこぞが最上とはな。

だから店主さん、今日は声や腕が震えて挙動不審だったな。いや、それは俺がにこにこ見ていたからか?


この老人は爵位こそないそうだが、影響力で言えばその辺の貴族を上回るこの国の重鎮だ。副学長自体は既に引退してしばらく経っているそうだが、その影響力はまだまだ健在のようだ。


「つきましては、閣下にはボクめをここへご一緒させていただいた理由をお聞きしたいのですが」

「ほう、儂の正体を知っておいてその度胸、たいしたものじゃ」

「将来は俳優という道もありそうですね」

「演技と申すか。ただ閣下はよせ、儂は既に一線を引いた身じゃ。今は余生をこの生まれ育った場所で過ごす隠居にすぎぬ」

「はぁ、ではこれからはご隠居様とお呼びしましょうか」

「それくらいが丁度よいかの」

「それでご隠居様、理由の続きを」

「そうじゃな。ではお主を連れてきた理由じゃが、元々この学園は儂が教鞭をとっていての、お願いしたら快くこの部屋を貰ったんじゃが、手が足りなくてのぅお主を助手として雇いたい」

「お断りします」


意味がわかんねぇよ。それに後悔するって意味もだ。さらに快くを使ってる時点で快く無いのは明白だ。


「ほほぅ、よいのかのぅそんな事を言って」


いやらしい顔だ。絶対にこっちが不利になる状況に陥らせる気だ。

伊達に権力があるみたいだから、ここは帰っても帰らなくても不味い事態となるだろう。厄介この上ない。


「では、まず「よろしくお願いします」・・・なんじゃえらく諦めるのが早いの」


まず、ってなんだよ。こえぇよ!

一体いくつ俺の弱みを握ってやがるんだこの老いぼれは。弱みの内容は気になると言えば気になるが声に出されたらオラやっちまう、死んじまうかもしれん。



こうして俺は老いぼれの下に就いての助手となった。




本話をもちまして次章に移ります。ここまでお読みいただきありがとうございました。

次章も読んで頂けたら幸いです。


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